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くいかえし〜復讐と食事と思い出の話〜  作者: 上尾こたつ
ムレスズメの様に
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フローレの記憶


人のいない寂れた中庭でフローレは土をいじる。掘るわけではもなく湿った土を両手で弄る。

自身の体に流れる魔力は植物と交互しやすく、生まれた頃から学ばずとも植物を開花させる魔術語をフローレは知っている。


しかしフローレの魔力操作は劣等と言って間違いないほど悪い。見兼ねたアルメリアがフローレに手を差し伸べなければ今頃フローレは破(・)棄(・)されていただろう。


そんなアルメリアからの指導内容には実際に植物を育てイメージを持つことも大事だと言われている。

それだけでなく植物が育つために必要な土や水に触れてその魔力の感じる事も大切だと。


そうして今日もフローレは土をいじる、ただ手を埋めてみたり。わしゃわしゃと土を手でこねたりとして見るそうしているといつのまにか自身の体に影が差している事に気づく。


それに気づいた瞬間、心臓がドクンと言う音と共に一瞬止まったのがわかった。

恐る恐る上を見上げるとそこにはゾッとするほどの赤い瞳がフローレを見下ろしていた。


「……デイロス様」


しまったと口を塞ぐ。驚き声よりでたのは彼の方の名前、フローレが呼ぶ事は愚か声すらその耳に届かせる事すら許されない名前を口にしてしまった。


先ほど止まったかと思った心臓の音がドクンドクンとフローレの両耳に響く。

冷や汗をかき血管の血が体の何処かに引いていく感覚に気持ち悪さを感じる。

 

破棄される破棄される……


「はぁー」

 

しかしその時は訪れなかった。彼の方はため息を一つ吐くと中庭に備え付けてあるベンチに座り足を組んだ、黒髪をかき上げて疲れた様子に、フローレの心音は少しずつ小さくなりやがて自身では感じれないほど落ち着いた。


長ベンチの中央に座り占領する彼の方。口を押さえて一切の衣擦れの音すら響かせない様にジッとしているフローレ。清々しい青空に似つかわしく無いほどの重い空気はこの場を占拠した。


「君のそれは意味がある事なのかい。まるで粘土遊びじゃ無いか」


「…………」


「彼女も何故この子ばかり構うのか。いやこの子ばかりじゃない他の魔力保有生にも簡単にその知性を貸し出す」


話かけられているのか、独り言なのか。ましてや話かける事を許可されているのか。わからず黙るフローレの心音が耳元で響く。


「聞いているの?君、僕から楽しみを奪うくせにそう言うところは他の魔力保有生(魔女)と同じだね」


片眉を上げて問う彼の方の見下す視線はフローレにジッと注ぐ、このまま黙っていては心象は悪くなる一方だ破棄されないためにフローレは意を決して言葉を発した。


「第六王子陛下に……」「良いからさっさと話して」


言葉を遮られてフローレは戸惑う習った事と違う。発言の許可を得てそして聞かれた質問に答えるのだ。…………質問この方は何を知りたいにだろう。どんな回答を求めているのだろう。


「……ぁ…………ぇ」


「もしもし?発音障害が起きた?どうしてアルメリアを一人締めするんだい?」


「ひ、一人締めなどは、ただ王家皆様、引いては国のため生まれた魔術をより確実に使いこなせる様にアルメリア様がご指導して下さっているだけです。お恥ずかしながら私の魔力操作は到底お役立ちできる物ではなく」


「ふっ、確かにそうだ。しかもこの戦争の真っ只中、花を一つ咲かせる程度の魔術など何の使い道も無い」


フローレが思いつく限りの言葉を並べるとデイロスは鼻で笑い。一言一句言い返す事ができない事実を言った。


フローレは次に何を言えば良いのかわから言葉を発せずに下を向いていると不意に大きな手がフローレの頭に乗せられた。

 

「今少し考えて、良い事を思いついた。君がアルメリア以外から魔術を教われば良い」

頭上から降る言葉は明るいのにその内容は喜べない。


「何を身勝手な事を言っているのですか?」

しかし湧き上がる不安はその声によって消えた。

「やあアルメリア、よくここがわかったね」

「貴方を探していたわけではありません……フローレ怖かったですねもう大丈夫ですよ」


まるで我が子をあやす様にデイロウの手からフローレを解放したアルメリアはそっと暖かい手をフローレの頭に乗せた。


「僕がいじめている様な言い方はよせ、心外だ」

「事実でしょう。それに貴方は他人に魔術を教える器では無い」

「おやおや、僕にそんな事を言えるのは君くらいだね」


緊張で歪んだ空気は正しく流れ出す。清々しい青空のした吹く風は心地よい。


「しかし、土遊びで魔術が上達するとは思えないけど、どうせなら魔術語の効率化をした方が……おや?」

フローレが土いじりをしていた花壇には。講義に使われている鉢植えも一緒においてある。それに気づいたデイロスが植木鉢を持ち上げる眺めているとそこに魔術文描かれているのを見つけた。


「フローレは言(・)葉(・)と魔力が反応しにくいんのです、そのためあらかじめ文言を発動させる媒介に描き、魔力を通ししやすくさせているんです」


「ふむ、発音無しでの魔術行使」

デイロスは興味深そうに鉢植えの底に描かれている魔術語をジッと見る。およそ三秒ほどするとその口角を上げて「流石、僕のアルメリアだ」と賛美した。


「されたのはアシヌス様ですよ」


しかしアルメリアの一言にデイロスは固まる。


「兄上が……あの兄が」

言いたい事はわかるとフローレは思った。怠惰が人の形をしたと言われる人物だしかしアルメリアの交渉の成果でその普段は半分以上は停止していると言われる脳をお使いになられ。フローレが行使できる魔術の文言を形(・)にしてくださったのだ。


「そうか……兄上が」

しばらくするとそう呟き彼の方が起こった全てを飲み込んだことがわかった。

そしてパッと表情を明るくし、いかにも良い事を思いついた言う表情を作り「アシヌスにフローレの教育を押し付けよう」と言った。


「敬称も取り繕いもなくなっていますよデイロス様」


「兄上にフローレの魔術指導をお願い申し上げよう」

言い直したデイロスにアルメリアはため息を吐いた。他人を育てる事ほど大変な事はない、アシヌスがそれを受けるとアルメリアは思え無い様で首を振る。


「あの方に、これ以上押し付けるとこの城で貴方の味方はいなくなりますよ」

「はは、味方?利害関係だよアルメリア」


デイロスは口角を上げて赤眼の瞳を細める漆黒の髪がその表情を縁取りフローレは恐ろしさを覚えた。


「……そうですか、なれば互いに平頭な利益を得る必要がありますね」

アルメリアの声が一瞬のうちに周囲を飲み込んだ冷たい空気を再び打ち消す。

「平頭?」


「先ほど、アシヌス様から苦言をいただきました。デイロス様から押し付けられた執務分こちらの執務も肩代わりしろと」


「……」


今度はアルメリアが藍色の瞳を細めてデイロスを見やるとデイロスはそっぽを向き無言で返す。


「また、執務を押し付けられましたね。本当に貴方こそ怠惰の化身では無いかと常々思い始めています」


「誰だってサボりたい事はあるだろう?」

「それが常ならば、自身の名を返上なさいませ。貴方が私にして下さった様に。役割をこなさない王子なれば王も受け入れてくださいますでしょう」


「はっ!王杯が」

「声が大きいですよ」


この国の内政は良く無い。それに外の世界とも戦争をしているのだ、血の繋がりがあるとは言え仲の良いだなんて言葉は彼の方々の第一言語には存在しない。


こちらに顔を背けた彼の方は悪態をついて少ししてアルメリアと目を合わす。


「……仕方が無い。僕の味方にこれ以上軽蔑されるわけにはいかないからね」

アルメリアの表情から何かを察したのか急にしおらしくなりそう口にした。それを聞いてアルメリアは微笑み頭を下げた。


「では、アシヌス様にお伝え致します。フローレ今日は一日一人で過ごせますか?」

「はい!」


ようやく話が終わりアルメリアの瞳がこちらを向いた事にフローレ喜んだ。

しかし、「その子も連れて行けば良い、まだ小さいし聞き分けも良いから意外と気に入りそうだ」


その言葉にフローレの体が強張った。


「フローレに補佐の仕事は務まりませんよ。確かに聞き分けは良く、欲もありませんが」


アルメリアはフローレの頭を優しく撫でて心配そうな表情を浮かべた。


「アシヌス様はあまり命令をくださりませんし。今のフローレには相手の意識を組むと言う経験がまだまだ足りません」

全くもってその通りだとフローレ思う。


「そうだね、まぁ今はいいか」

そうして、中庭での会話は終わりそれぞれが自らの役割を果たすため、この場を離れようとした時、その影は、姿を表した。


「デイロス様!」

暗い黒く、長い髪、同じ目。その女は、デイロスの元に、アルメリア、敵、恐怖


「君は確か」

…………………………………………

………………

…………

……



フローレは目を覚ました。ベンチにし撫でれ掛かる姿で眠っていたため体が痛い。

昔の夢を見ていた様で久々に見たあの人達の姿は今でも鮮明に覚えている。

 

そしてあの黒(・)い(・)影(・)


嫌な予感がする。


フローレは立ち上がりスカートに付いた土埃を軽く叩く。あたりに咲くあの人と同じ藍色の花は今は夜の暗闇に紛れて見えないが、サワサワと夜風に揺れる音が聞こえる。


村を囲うフローレの結界。普通の人は見る事ができないそれを術者であるフローレは視認できそして簡単に触れる事ができる。


通常の結界と違い一枚の壁を作る使用ではなく。何層にもそれぞれ用途で分けた結界は森に入った人を感知し、惑わし、導く。


道順を知っていればこの結界内の村に辿りつけるが。知らなけれ森を彷徨いやがて来た場所に戻される。


フローレは自身が作り出した結界の前に立ちそっと足を踏み出す。外界から遮断されたこの場所で外の状況を知るには外に出るしかない。

あの夢の黒い影を思い出し。足が震える。


何故今頃、夢に、その一端をフローレが感知したのか。


答えは外の森に足を踏み入れた瞬間わかった。


魔(・)女(・)の魔力、あの魔女魔力を感じた。


「あぁ、先生」

フローレは震える手を握り込んだ。きっとこちらには興味は示さないだろう。しかしかつてのあの場所にあの魔女は訪れる。

自分は何をすべきなのだろうか。


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