3ー13 お誘い
「よろしければご参加下さーい」
フリルのついたエプロンをきた女性の店員がそう活気付けるために声を上げた。
店が並ぶ場所は街の広場の一角。可愛らしい三角のカラフルな旗で飾られた風景は、昨日とは雰囲気が違うとオネットは言った。どうらや昨日と今日で行われているイベントの主催店が違うらしく。
昨日は食欲をそそる肉の香りがしたが今日は全体的に華やかで、甘い香りがすると言う。
「昨日くればよかったー」と言うアルメの嘆きはが響いたのは想像通りだろう。
昼まで寝た、リベルテを覗いた一同は。リベルテの指示で借りていた本のいくつかを返却するために再び図書館に足を運ぶ流れたなった。
リベルテは部屋から出る気が無かったので、適当に買ってくれば良いと言ったが彼女らは聞く耳持たず。図々しくリベルテを太陽のしたに連れ出し、食事をしようと三人係で引っ張り出され大変不機嫌だ。
(お店に食べに行くんじゃ無かったっけ)
さらに機嫌を損ねる風景を木影に設置させられたベンチから見ていたリベルテはため息を吐いた。
「申し訳わけありません。女性限定のイベントになりますので」
さらに機嫌を悪化させる要因が聞こえリベルテはそちらを向く。
白髪の男がアルメ達が参加している。女性限定のスイーツ食べ放題イベントに参加しようとしているのか。会場を凝視し歩みを進めて店員に止められていた。
リベルテは無言で指を刺し。彼に向かって拘束魔術を使用した。
背後にから伸びた鎖で体を拘束された男はズルズルと引きずられリベルテの足元まで転がった。
「待ってろって言われていたでしょう」
伝わっているかわからない言葉でも言わずにはいられない。
アルメは言えばわかると言うが、そんな簡単なことではないといつ気づくのやら。こと食事に関しては尚更であると、アルメよりリベルテの方が先に理解してしまっているのは何とも残念な話だ。
足元で男が身じろぎをすると魔術陣越しに拘束魔術の半透明な鎖が揺れるのが見える。
待ち時間とは退屈で。これなら本をついでに借りれば良かったとリベルテは思った。
周囲の多くも少なくもないまばらな喧騒も相待ってかどうしてか思考に耽る事もできずに、瞼が落ちそうになってしまう。
「おーいリベルテ?」
「リベルテさん?」
聞き馴染んだ声で名前を呼ばれ目を開ける。気が付けばオネットとアルメが目の前でリベルテを覗き込む様に姿勢で見ていた。
「お、やっぱり寝てた」
「リベルテさん、人通りの多い場所で寝るなんて、危ないですよ」
「……君に言われたくはない」
ほんの数分目を閉じていただけで危機管理能力の有無について咎められるのは心外である。
ベンチから立ち上がり今度は見下ろす側になると、片手の軽さに気づき見れば拘束していたはずの人物がおらず。魔術も解かれてしまったことに気づく。
「彼……その手に持ってる物何?」
注意人物がどこに行ったのか聞こうとした時アルメ達の手に見慣れない物が握られており。思わず尋ねてしまった。
「参加品だって。貰った」
目の前に掲げて見せられたそれは、派手な黄色やピンク色をしており、何かの動物を模っているのがわかる毛糸でできた代物。
「近づけないで」
「何だそのキミ悪い物を見た様な反応は……まぁセンスは悪いとは思うけどな」
「お店のマスコットを模したぬいぐるみですって、意外と触り心地良いですよ」
二つの奇妙な人形を目の前に掲げられてリベルテは余計な事を聞いたと後悔した。
「もう十分見たよ、彼が見当たらないけどこ行ったかわかる?」
手で軽く押し退けて話を逸らす、もとい本来尋ねたかった事を聞くとアルメが人形を持った手をリベルテの後ろに向けて指を刺した。
「そこにいる」
自身の後ろを指差されてギョッとしてリベルテは後ろを振り向くと白髪の男がベンチに齧り付いていた。
「…止めさせてよ」
何故、彼の奇行を止めないのか。リベルテは呆れながら彼の肩を掴み体ベンチから離した。
「待たせたな、飯行こうか」
先ほどスイーツの食べ放題に参加していたとは思えない発言に、リベルテだけでなくオネットも驚いた発言をしていた。
「まだ、食べるの……」
「あの、流石にお腹いっぱいで……」
「えー塩っぱい物が食べたいんだけど」
人形をムニムニと握りながらアルメが言うとリベルテは彼の背を軽く押してアルメに預けた。
「じゃ、食べてくれば良いよ僕は宿に戻るから……」
「そう……あれ、リベルテ朝飯いらないの?」
それもそうかと軽く返事をするアルメだったがリベルテがまだ朝食、今の時間では昼食に入る食事をとっていない事に気づき、先に歩きだした背中に尋ねるとリベルテは軽く振り向き「いらない」そうそっけなく言った。
アルメ達は無言で見送っていたが、オネットが何かを思いついた様にアルメに声をかけた。
「アルメさん、私もお腹っぱいなので先に戻っていますね」
「そう、塩っぱいの食べたく無い?」
「えぇ…また後で」
そう言うと和かに手を振りながらオネットはリベルテの背をおった。
「……何食べようか?」
若干の寂しさを感じたが、アルメは気お取り直し隣の男に声をかけた。
*
「リベルテさん」
気疲れを感じながら宿に向かっていたリベルテの背にオネットの声がかかる。
少し面倒くさいと思ったが振り見れば、嫌に笑顔な少女の顔が思いのほか近くにあった。
「何?君も戻るの?」
「えぇ、お腹いっぱいなので」
「そう」、と軽くへんじをして無言で歩くが、オネットはいつもの調子で声をかけた。
「…昨日は途中で寝落ちてしまってすいません。ベットまで運んでくださったんですね」
「別に…君もう少し危機感持った方が良いよ、一応貴族の子女何だし…」
「そうですね、忘れていました」
国の中枢貴族が普通忘れるか、とリベルテは思ったが。慣れた様子で市民街を歩くオネットを横目に見れば気にするのも馬鹿らしくなってくる。
「そう言えば、図書館で本を返却した時に司書の方からお聞きしたのですが、この町には高齢の魔術師が魔術書専門の書店を開いているのだとか…」
「ふーん」
魔術書は大体網羅しているリベルテ、馴染みあるが上に早々心躍る事はない。聞き流し答えるとオネットが視界に入る様に目の前に来たため立ち止った。
「リベルテさん、一緒に来ていただけませんか?……一人では不安で」
「……一人で行けるでしょ」
後半以下にも不安そうな表情を作りそう尋ねたオネットにリベルテは顔を引き攣らせて、そっけなくなく答えたが、オネットは引き下がる様子はない。
「一応貴族の子女なので」
そう一応公爵家の令嬢なのだ……
その御身に何かあってはリベルテが何かしら困る事態になる。使い走りにした異所返しか遠回しにそう言ったオネット。
リベルテは仕方なしにその誘いに乗る事にした。




