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くいかえし  作者: Kot
スイトピーの様な
47/101

2−21 出発


「じゃあ、行きますか」

ようやく総会本部の出入り口まで来ることができたアルメ達。晴れ晴れしい出発の時だと言うのに後方二人の空気は重い。最後までゴネにゴネたリベルテはリーブルとオネットによって。渋々オネットの同行を受け入れた。


「なんだよ暗いな、仕事なんだからシャッキとしろよ」


「ストレスだ」

リベルテの容赦無い一言にオネットは額に青筋を浮かべた。


「本当に幼い人ですね。いい加減街を出ないと、せっかく考えた日程計画が台無しになるのでは」

チクチクとした針の様な声色でオネットは言う。リベルテにキラキラした視線を向けていた彼女はもうどこにもおらず、すっかりリベルテの事を嫌いになってしまった様で。アルメも今後が不安になった。


「喧嘩するなよな」


一昨日リベルテがアルメにそう言った言葉を今度はアルメがリベルテに言った。


「僕に気を張って欲しく無いんじゃなかったの?」


アルメの喧嘩発言は聞こえなかったフリをしてリベルテは見送りに来ているリーブルに声ををかけた。


「ふむ…気を張っている様には見え無いが」


「すっかり疲弊しているのがわからない?」


「随分と素で馴染んでいる様に思う」


「どう言う意味」


「お前って太々しいのが常だもんっ痛!」


アルメが今までのリベルテの総合イメージを言うとリベルテがデコピンほどの威力の風魔術をアルメのおでこに当てた。


「本当に子供の様。お世話しがいがありますね」

今度はオネットがそう言うとリベルテはすかさずオネットを睨み。オネットは視線をリベルテから逸らした。


「ほら。馴染んでいる」


「どこが?」


「若者はこれくらい反発し合える中の方がいい、君が喧嘩をできる相手は早々いないだろう」


リベルテは意味がわからなかった。エグレゴアにいた時も何人もの魔術師と反発し蹴落とし合ってきたのだ。当時の自分をなるべく排除したいのに。うまく隠せず内心のイライラは増した。


「さぁ、まいりましょう。やらなければならないことは沢山ありますから」

「ちょっ触らないで」

背を押されることを嫌がったリベルテにオネットは「はいはい」と流し総会本部を出る様にリベルテを促した。


アルメも面白ろいと思いその光景を目で追うと。自分も出発するためオネット達の後に進もうとしたが。リーブルがアルメを引き止めた。


「アルメ君」


「何、ですか」


リーブルに引き留められるとわ思わなかったアルメは少し噛んでしまいった。

リーブルがわずかに笑いそのまま微笑みを浮かべた。


「君が言った言葉は、僕も理解できるんだ」


「?」


「だから。魔女カーシェの遺体とあの鎧は総会本部外の墓地に埋葬した」


初は何を言われたかわからなかったアルメは、カーシェの名を聞き自身があの日リーブルに言った言葉を思い出した。


ここは、人によっては窮屈……


それは、自分のこと。それはオネットのこと。それはただここから出たいと言ったカーシェの事。


結果的にカーシェは人を食べずにこの世を去った。魔女が皆人を食べるわけでは無いと知っているアルメは。カーシェを追い込んでしまった事をするべきではなかったのではと考えてしまっていたのだ。


盗みを働く理由、人の血を抜く理解、それは、人を殺さず自分の願いを叶える手段だったのでは無いだろうか。けれど本体の鎧の在処がバレてしまい。カーシェはアルメとオネットを殺そうとした。


「あの……カーシェさんは……変な言い方ですけど、人を食べない良い魔女だったんでしょうか?」


少し驚いた顔をしていたリーブルは少し思案しアルメに答えた。

 

「私はね、魔女に良いも悪いも無いと思っているんだよ。今人々から潜む魔女も、成長すれば人を襲う」


 「……」


「そう言う存在だと思っているんだ」


いつか人を襲う。確かに総会本部から出たカーシェが次は人を食べる事を望まないとは限らない。


「……私が言うのあれですけど、ありがとうございます。カーシェさんを出してくれて……」


襲われたアルメが礼を言うのもおかしな話。けれど、未だに使用人の時のカーシェを忘れていないアルメは、死んでしまった後でも、カーシェが総会本部から出る事ができた事に安堵したのだ。


深くお辞儀をして。出入り口の柱に背を預けてこちらを見るリベルテ達の元に向かう。


リーブルはアルメ達の背を微笑ましく思いながら見送った。


「七日か……」


ふと呟いやいた言葉。どこか疑問じみた声色はけれども聞く物がいなければ、答える物はいない。


「さて、次のお客様を迎える準備を始めないとな」


少しの思案にくれた後。リーブルは放物線を描く総会本部の柱に背を向けた。


魔術師総会総帥、リーブル・アシヌスは忙しい。

日々、自身の勤めを果たす眼帯の男に休日はないのだ。


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