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くいかえし  作者: Kot
アルメリアな感情
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4.諦めたら

場面がよく変わります。読みずらいと思いますが、ご容赦ください。

蛇の魔獣に締め付けられる夢を見てしまいその寝苦しさからアルメは目を覚ました。空はまだ白み初めた測りで、薄暗い部屋のなかでその原因を見つける。彼女の腹を枕にしている白髪の男は白い頭髪をこちらに向けて心地良さそうに眠っていた。


 

 タイバンにある安宿、銅貨3枚で泊まれる木造の建物は共同トイレ、風呂無し、ベット無しの安宿だった。


「いらしゃい、」

「部屋空いてる?」

「いつもガラガラだよ、」


 老婆が小遣い稼ぎに始めた宿屋で、通りに看板も出しておらず知る人ぞ知る非合法宿屋だ。泊まるものは皆老婆の知り合いになり銅貨三枚はお礼として老婆の懐に入る。


机に置かれた鍵は一つだけで、アルメ真顔になった。


「二部屋借りたいんだけど」

「二部屋?ああこんな壁の薄いところじゃね、」


 アルメが咳払いをして催促すると老婆は二つ目の鍵を出した。先払い銅貨六枚、アルメは三枚銅貨を出し男にそれを見せる。男は銅貨を見たあと一枚手に取ろうとした。

「違う、銅貨三枚、酒場でもお金払ったろう、」


 男は手に持っている袋をそのままアルメの手に置いた。ジャリ、と音がするそれは男が狩った魔獣で得たお金だ、アルメの分になるはずだったハンバーグも当然払わせた。


 アルメは仕方なしに男の財布から銅貨三枚を取りだし老婆に差し出した。

机の上の鍵を取るとその一つを財布と一緒に男に渡した。

「ごゆっくり」

 老婆の言葉に無言で返しアルメ達は階段を上がって部屋に向かった。





「なんで自分の部屋で寝ないんだよ」

アルメは昨晩、男が自分の部屋入るのを見たしアルメ自身も自分の部屋に入った後、部屋の鍵を閉めたのを確認した。しかし男は、当然の様にアルメ部屋におりしかもアルメのお腹を枕にしていたのである。


「お前、街中であんまり転移魔術使わない方がいいぞあんまり使える人いないし、街の中は魔術感知が……」

突然男が立ち上がりアルメの鞄を漁り出した。

「お腹すいたってか」

アルメは慣れてしまっていた。





 人々が動き始める時間、アルメはギルド横の風呂場を借りたあと酒場の厨房で小遣い稼ぎをしていた。


手際良くジャガイモの皮剥きを進めるアルメ、それは彼女がタイバンの街に来た時最初にした仕事で、何かと手持ちが寂しくなった時にする仕事だ。


「おはよー」

眠そうな声とともにローリエが厨房に顔を出した。

「おはよう」

 

「懐かしいことしてる」

 ローリエもアルメのそばに行き、ジャガイモの皮剥きを始める。



「小遣い稼ぎだよ、今回出費が多かった」

「ついて無かったね〜」

「そういえばお連れの男性は?」

「……」

「どうしたの?」

「あいつが悪い」

アルメの返答に、ローリエは気を利かせ話題を変えた。


「実は例の件なんだけど、思ったより早く終わってね、」

「随分と早いな、」

少し驚いた声を出してアルメは問い返した。ローリエの情報収集方法は彼女の故郷に伝わる古典魔術である、その方法はアルメ自体も教えてもらってないが今までは早くとも二日はかかった。

「申し訳ないけど、確定的な情報は無い、」

 ローリエは近くにあったタオルで手を拭いてポッケとから銀貨を取り出した。

 アルメが昨日支払った銀貨だ、ローリエは銀貨を親指と中指で摘みアルト顔の前まで持ってくると言った。

「お肉食べに行かない?」




「ここで待っていろ」

 そう言われギルド内にある酒場で白髪の男は動かず待っていた。


「あら、あなた昨日の」

 話しかけてきたのは昨晩男に絡んできた女冒険者だった。

「また会ったわね、一人?」

男は無言だが女冒険者は話かけ続けた。

「食べることが好きなのね〜」

 男がアルメから貰った干し肉を食べる様子を見ながらそう答えた。

「ねえ、もしよかったら、うちに食べに来ない、私、料理も得意なの」



 昼、ローリエとの時間まで時間があるアルメはギルドから十分ほど歩いた距離にある鍛冶屋に来ていた。

「この鍋の穴ふさげない?」

「これは修理するより新しいの買った方がいいな」

 鍛冶屋の店主に相談したのは黒い炎で溶けてしまった鍋のこと。アルメ自身もダメ元で聞いてみたが、案の定新しい物を買う様進められた。

「あーあ、また出費だ、重くてもいいから、大きくて安いやつちょうだい」

「なんだ、物持ちにこだわってたのにそんなに金欠か?」

「んー、これからなるかも今のうちに節制しとこうかと」

 

 男が街を出た後もついてくる可能性があるかわからないが、ローリエの様子から少なくとも街から連れて出なければならないと思い、アルメは明日の早朝で出る準備を始めていた。

「そういえば連れがいるんだってな、珍しい、やっとパーティを組んだのか」

 店主は言いながらいくつか鍋を取り出した。

 どれも店ではわりかし安価なものだ、アルメはそれを見ながら答えた。

「まあそんな感じ、もう耳にしたんだな」


 鍋の見聞を終え、アルメは底が浅く口が両腕で丸を作れるほどの大きさの鍋を選んだ。

「何だ、やたらでかいの買うな。そんなに食うのか?」

ニュアンス的に自分のことを言われているわけでは無いのだろう。アルメは「一応」と曖昧な答えをした。


「店主やってるとな色々耳にするんだよ、お前も世間話するだろ」

「そんな奴はいないな」

「ローリエがいるだろう」

「あいつは金取るから」

「お前ら本当に仲良いのか?」

 アルメから代金をを受け取りながら、店主は言った。



 

  


夕方、女冒険者は気合いを入れていた。タイバンにある仮住まいに昨晩見つけた男を招くことに成功したからだ。

 いくら話かけてもこちらに反応しない男は運ばれた料理を食べることしか頭に無い様で、二皿目に入った時は諦めを感じた。

 だがその男は、女が見てきたどんな人間より、美しいと感じた。朝になっても忘れられずにいたら昼間のギルドでまた会うことができたのだ。その上食事に誘えば家にまで着いてくる。女はこのチャンスを逃すまいと腕によりをかけた。

「お待たせ〜、」

 机いっぱいに並べられた料理を前に男は無表情で無言だが視線は料理に熱く注がれている。女はその様子を見ながら、家にある一番度数の高い酒を開けた。


 *


 焼肉は塩派か、タレ派か、素材の味を好むアルメは網に乗せた肉に塩を少し振りかけじっくり肉が焼けるのを待っている。

 ローリエは、焼けたそばから肉をタレに潜らせバゲットに挟み大きな口でかぶりつく。


「噂?」

 街で一番安い焼肉店、そこの個室でアルメたちは夕食をとっていた。

「そう、確定では無い情報なんだけど、聴きたい?」

「そりゃー、聴かしてくれるから、誘ったんだろ?」

「んー、どっちかなんだよね、聴いたことを後悔するか、聴いて覚悟が決まるか」

「多分どっちもだと思うぞ」

アルメは肉を網に乗せながら言った。

それもそうだと思いローリエは再び口を開いた。

 

「エグレゴア、数十年も前から魔術の研究を先進的に行っている機関なんだけど」

「あー、そういえば聞いたことあるな、でもなんか怖い話だった様な」

 

「エグレゴアは、魔術発展に多大な貢献をしているけどその裏で行われている実験は、非人道的、公式に発表していない魔術もたくさんあるんだとか」

 

「それが噂?まあ、そう言ったのって僻みや中傷も含まれてんだろ?」

「確かにエグレゴアの噂は全てが真実では無い、けど、」

 ローリエは一旦言葉を切り、レタスにタレのついた肉を乗せた。

 

「数年前からそれらの噂が停滞している」

「停滞?」

 

「僻みや中傷も含まれてるんだ毎年、あるいは毎月、よく無い噂を耳にしていたけどここ数年はなんでか聞かない」

 悪い噂は広まりやすいのにと言いながらローリエはレタス巻きにかぶりついた。

 

「で、エグレゴアがあの男にどう関係あるんだ?」

「……数年聞いていなかった噂を昨晩久々に耳にした、情報収集中にね」

アルメはレバーをバゲットに乗せ視線で続きを促す。

 

「エグレゴアの総帥グラン教の息子が行方不明らしい」

 アルメはピンと来なかった、魔獣が蔓延る世界、行方不明の情報はギルドにも毎日変更されている。

「アルメはエグレゴアの総帥を見たこと無いっけ」

「無いな」

「私も無い」

 アルメは半目になりローリエを見やる。

「噂では、綺麗な白髪らしいよ」

 

「年齢的な物ではなくて?」

「年齢的な物ではなくて」

 

「まさか、あいつがそうだってか、いくらなんでもこじつけの様な」

 ローリエ、無言で自分の目を指差した。

「魔術に興味無いアルメは知らないかもだけど、魔獣の目って赤いじゃん」

 うん、と言うアルメの手は止まり、網の上では肉たちが油を跳ねさせた。

「あれって適性が関係あるらしよ、」

 

「適性?」

 

「高い魔力量を持つ適性、魔獣は悪魔の使い何て言われてたけど、古代の魔術師は高い魔力を持つ確率が多いらしく、歴史書や口伝に伝わる悪魔は古代の魔術師ではないかと言われているらしよ」

 だいぶ、端折られているがアルメはなんとか読みといた。

 

「つまり、おとぎ話の悪魔は高い魔力を持った悪い魔術師で魔獣はその魔術師と同じ適性を持ったから、目が赤くなると、んであの男も魔力が高くって目が赤いと」

 少し理解したアルメは、まとめた事をローリエに言った。

「エグレゴアの総帥の瞳が赤いかはさておき、高い魔力を持っている事と思われ白髪で怪し魔術を開発していて、息子が行方不明、それと話かけても喋らない、暴食男、しかも白髪」

 

「探しているらしよ、」

 唐突にローリエは答えた、その声は少し低く静かに発せられた。

 アルメは無言になるが、その目は動揺していない男が魔獣を一撃で仕留めたのを目の前で見たのもあって何かあるとは思っていたからだ、むしろやっと前置きが終わったと悟った。


「エグレゴアが?」

 

「誰かまでは、でもギルドに捜索依頼が入っていないなら、表沙汰にならない様にしているんだろうんね、それにこのタイミングで私の耳に入ったのもおかしい」

 ローリエの情報収集方法は不明だが、本人がそうゆうのなら確かに怪し、しかしだからといって大きな問題が残っている。

 

「とりあえず、エグレゴアの本部に連絡するとか本人に帰る様に伝えるとか」

「帰るならとっくに帰ってる、転移魔術が使えるんだ」

「じゃあ本部に連絡しようか?」

「表沙汰になって無いなら、なんで知ってんだってことにならない?」

 あーとローリエは言い何かに気づいた様に言った。

 

「そういえば朝から見かけていなね。もしかして付き纏いは終わったの?」

「朝、ギルドの食堂で待つよう言ったんだよ、それから昼間に変な姉ちゃんがあいつに飯作りたいとか言ってたから。行けって言ったんだ、」

「おおー、では移り変え作戦成功?」


 ガッシャン!

と突然大きな音を立てて突然アルメ達の前に料理が落ちてきた、衝撃でいくつか飛び散り、肉の上に皿が乗るとゆう悲惨な状態になっている。

当然料理とともに現れた男は、モグモグと咀嚼しながら店の物では無い簡素な椅子に腰掛けていた。

自ら持参しておきながら、アルメたちの肉にも手をつけ始め、その光景を見ながらローリエは言った。

「諦めたら。」


読んでくださり、ありがとうございます。

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