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くいかえし  作者: Kot
スイトピーの様な
34/101

2ー8 噂話

「噂?」

腫れぼったい目と鼻声状態のローリエから話を聴きアルメは思わずそう返した。


「ぞう、あどね、色々聞こえだんだけど、動く鎧がいるんだって」

 

「鎧?」


「あど、最近もどがなぐなるんだって」


「盗難って事?」


「そうだと思う、えーっとあどぉむじが多い?」


「虫?」


「はだが赤くなっだっで」


「虫刺されがひどいの?」


「うん、」


アルメは頭を掻いた、ローリエ言う噂に共通点が見当たらないからだ。


「その噂がラシオンさんから聞いた噂?」

ヂーンと再び鼻をかんだローリエは鼻詰まりの少し解消された声で言葉を返した。

「ううん、情報を聴く様に頼までた時に教えて貰ったのはぢがうもっとメルヘンなーー」


「ローリエ?」


ローリエは自身のこめかみを人差し指で押さえる、その仕草は何かを思い出す仕草そのもので、まさか大切な情報を忘れているのかとアルメは呆れた。


「来でる…キデルココまで……」


「……」


「あっそうそう」

やっと思い出しパッと花やいだ顔をしたローリエは、キリリとした顔立ちを作りエアーで眼鏡を持ち上げる仕草をしながら言った。


「「黄土色の髪を持つ魔術師が願いを叶えてくれる」とか「軒下に自身の血のついたハンカチを投げ入れると妖精が喜んで願いを叶えてくれる」とか」


「メルヘンだ……でその共通点て何?願い云々?」


「うん、後、魔術と血の関連性は高いとか……」


「エアー眼鏡でよくそこまで思い出せたな、次ラシオンさんにあったら言っとく」


「うん、嫌!ダメ!」


急に正気に戻り自身の犯した罪に気づいたローリエは、慌てて周りを確認した。いないとわかっていても、気になるようなら、はなからしなければ良いのにと思ったアルメだが、普段は冷淡で若くして貫禄のあるラシオンが「願いが叶う」などややメルヘンな言葉を口にしたのだ、直接その言葉を発する姿を見せられたローリエは口元が歪むのを耐えたのは想像に難くない。


「だってぇ、なんかフフッ」


「おーい」


思い出したのか笑出したローリエ、懲りない奴だと思うが先ほどまで号泣していた姿は何処にもない様で安堵した。


「ローリエ、それで何がわからないんだ」


「フフッそう、それでね一番の課題が噂の発生元なんだ、けど私がここで聞いた内容と、ギルドで聴いた内容全然違うから、……ギルドで教えて貰った噂、こっち来てから全然聞かなくて……」


「うーん噂かぁ、普通に考えたら時間が経って誰も興味を示さなくなったんだろうけど、と言うか鎧が動くとかそっちの方が気になるだろ」


「そうだよね……」


「いや、落ち込むんじゃなくてその鎧の噂の元を探ればいいだろ」

察しの悪いローリエはポカンとした顔浮かべるのでアルメはしゃがんでいた体制からローリエの手を取り立ち上がった。


「そんな魔術が関わってそうな噂、調べてないでどうするんだ?」


「そっかー噂を流しているのが魔女なら目的に応じて別の噂を流すかも」


「急に察しが良くなったな私はそこまで考えていなかったよ」


なんだかんだいって取り敢えず行動するアルメ、少しでも友人の助けになればと話を聞いたが、思ったよりも先の行動まで見えた様で安堵した。


「取り敢えず、鎧が何処で動いているの見たかとか、もう実際に聴いて、見てみた方がいいな、誰が言っていたとかもわかるんだろ?」


「えっ実際に見るの、魔女が近くにいたら怪しまれない?」


「オカルト好きって事にすればいい、私達は新入りだし、そうゆう子だって思われるだけだろ後、卒業パーティーまでに魔女の有無をハッキリさせたいんだろ」


別に魔術師が沢山集まるのだから危険な事はないだろうにと思うが、総会本部内に魔女が侵入した事は大問題らしく少しでも噂の元にある物、そしてそれが事実ならば早期に魔女を狩らなければならない。


「そうなんだよね、後一週間もない」

「えっそうなの」

一週間以内に動く鎧を見る事ができるのか、今度はアルメが不安になり悶々とした気持ちを抱えながら次の仕事場に向かった。


そうして仕事終わり、使用人寮の共有浴場にてローリエとアルメは何度か話をした先輩に動く鎧の話題を出した。


「あーそれねー最近良く耳にするわねー」

仕事終わり疲れた体を休める先輩は間延びした声で話に乗ってくれた。

「先輩は興味あります?」

「んー学園の生徒さんが実験しているだけじゃない?」


(そうゆうふうに捉えられるのか)


そう、総会本部内には魔術の学園があるのだ、長くここで働く使用人なら実際過去にも学園生徒のそういった実験風景を目にしたかも知れず、たまにある日常の風景だと噂を気にしている使用人はいない場合がある。


「気になったんですけど、過去にも学園生徒関連で動く鎧の噂って流れました?」

ローリエは先輩のたわわな胸に視線をやりながらそう尋ねた。

「んー?オカルト話の大元が学生だったかーって事、あったわよ」


「そうなんですね、その時ってどうやってわかったんですか?」


「えーと魔術士団が動いたのよ、場所が学園内なら先生の仕事らしいけど、本邸勤務の使用人寮付近で起きたからねー」


「へーどんな内容だったんですか?」


「フフッごめん、えっとー足の、長い、フフ、男が深夜に現れるって噂が出て、実際見た子も何人もいてね、もうフフ怖いのなんのって」


「怖いんですか?」


笑いながら話す姿は当時恐怖を感じていたとは微塵も感じさせない、それほどまでにその噂の顛末が想像を超える物だったのだろう。


「そうねー長いって言ってもほんとに長いらしくってね〜その足を長くしていた男の人、学園の生徒さんらしくって、なんでも使用人の中に一目惚れした子がいて〜その子を見るためにー」


「足を長くしたと」


総会本部は施設ごとにニメートルごとに高い塀で区切ってある、この塀は魔術的攻撃を阻害する役割があり、魔術士団や学園の戦闘訓練で他の施設に危害を及ぼさないためだ。


「もう、それ聴いた時はおかしっくてー」

「そうですね、じゃ今度の動く鎧も学生さんでしょうか、何処ら辺で見かけったって聞きました?」


「うーん、何処だっけー確かお針子さんが制服届けた時に見ったって」


「と言う事は学園内ですかね」

アルメはあからさまにがっかりした声を出した。


「それじゃー見にいけませんね、制服を届けるに検品係の人だし」


「残念ねー、頼んだら一緒に連れってくれるかもね」


「そこまでして、見たいとは思いませんけど、それに学園ならますます生徒さんの魔術でしょう」


「それがねーその鎧本邸から盗難された物じゃないかって」


「盗難?」


「そうそう、今大変な時でしょ、士団員さんもほとんどいないから相談できないだけどほんとに良く物が無くなるの」


「それって大変じゃ」


「ええ、執事長には相談ずみだから、なくなっても慌てず、何が紛失したか記入する事を忘れずにってそう言われたわ、優先順位があるのでしょうけど怖いわよねー」


「私知りませんでした。何が取られるんです?」


「鎧もそうだけど、離れに保管してあった物が一体とあとは食器類」


「食器?」


「フォークとかスプーンとか小さい物だけど、今は鉄製で安物がちまちまなくなるらしくって、まぁ売れない物でも無いしねー、これが銀やら金やらになるともう大目玉!怖いわー」


「私もキッチンに入った時は来おつけます」


「ああ、今は管理を料理長本人がなさっているの、あなた達は触る機会は当分無いだろうから、安心して」


「大変でですね料理長」


「そうよー卒業パーティーの立食の下準備もあるし、ますます禿げちゃうわ」


ここでコック帽の下の秘密を聞くとは思わなかったが、散らばった噂話の繋がりが見えてきた。



ローリエが集めた噂話、どうやら動く鎧以外にも盗難の話も繋がっていた様だ、いや元々一つの物から「動く鎧の噂」と「多発する盗難騒動の噂」で別れたのだろう。アルメはそうあたりを付けた。


その後は話もそれ仕事の話に街の話などアルメとローリエは随分な長風呂をしてしまった。


「からだ真っ赤」


「長湯しすぎたな、後で水貰いに行こう」

すでに共有浴場の利用者は少ない時間、話を聴いた先輩は驚く事にまだ長湯している、どうやらお風呂が大好きらしく、毎日ニ時間は余裕で入っているらしい。


「でも色んな話が聞けたねーフフ」

「お前はずっと何処見てるんだよ」

「いや!だって浮いてるんだもん」

「脂肪は軽いから浮くんだよ!」


お風呂好きの先輩は何度か同じ時間に仕事場が被る事があったので、比較的話しかけやすかったのだが、話出す前からローリエはすでに釘付けであり、そこからずっと釘付けであった。


「風呂入るだけですっごい恥ずかしい思いした」


「へぇ?アルメの見てないよ」

「知ってるよ」


「アルメはあれだもんね、上着の膨らみは胸当てだもんね、作り物」

「作ってないし!冒険者としての最低限の装備ですが!」


「お疲れ様〜」


脱衣所で騒ぐ二人におっとりとした声がかかり、アルメとローリエは揃ってそちらを向いた。


「カーシェさん、あれ?今からお風呂ですか?」


「そうなの〜遅くなちゃった」


うふふと笑いながら脱衣所に入ってきたカーシェ、笑っていたがヨタヨタとした足取りにアルメは心配になり声をかけたが、彼女は大丈夫といいすぐに服を脱いで大浴場へ入ってしまった。


「大丈夫かなー」


「ローリエ、明日はちゃんと仕事しよう」


「う、うん」

「噂集めはもう十分だ、次はその鎧を実際に見に行こう」

「どうやって?場所は学園でしょ?」

「行くなら深夜だろうけど、でもお針子の人が見たのが昼間だからな、一緒にいけないか聞いて見るか」

「あのさ、気づいたんだけど、今卒業生以外はほとんど学園にいないらしいから、学園からくる仕事、多分もうほとんど無いかも」


「ああ、そういえば人数増やしたから今日終わらせたので棚がスッキリしてたな、持って行っていないといいけど」


「ねぇ、オネットは?」

「は、どうやって会うんだよ」

「来てくれるんでしょ」

「そう言ってたけど、来れるかどうか」

「来そうだったけど、来たらそっちの真偽は頼めば良いよ、私は取り敢えず今までのをラシオンさんに報告してみる、そしたら意外と向こうが調べてくれるかも」


「ローリエって急に頭が働くよな、主にサボりの方に」

「サボって無いよ、出来ない事はしないの!」

「あー自分の事わかってて偉い偉い」


「褒めるなら、もっと褒めてよ!」


そしてアホになるローリエと共にアルメはまた邸内での一日を終るのだった。

読んでくださりありがとうございます。

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