19. 似ていないな
リベルテと合流したアルメ、感動など無く、只々自分の苛立ちをぶつけただけな様に思え、アルメはリベルテが休んでいる部屋を出て直ぐに動く事ができなかった、扉に背を預けて俯く、何を考える訳では無いが、アルメなりに反省をしていた。只々一言、一人では無いのだと、優しい言葉を掛けてあげれば良かったと。
数十秒後アルメは歩き始めた。騎士団が来るまで、彼を見つけるための手がかりを探しに、彼の赤い瞳が涙で濡れる所など想像できないが、それと同じく、ただただジッと待っている自分を想像できないからだ。
「おーい、どこだー……なんて、いるかどうかもわからないんだよな」
きっとこの場所(本部)では無い場所にいるのだろう、魔力切れを起こしたリベルテを放置している現状を考えると敵となる存在はもう居無いのだろう。
リベルテを捜している時とは違い、目安にしている物、壁の傷や血などの戦闘の痕跡が無いため、彼の手がかりを探すのは人苦労だ。
気配を消す様に進む、元々幼い頃から狩をして来たため夜目が効くアルメはランプをリベルテに渡し
た。ランプの持ち手が軋む音すら無くなったため、とても静かで、無音と言っていいほどだ、廊下を薄く照らす、壁に埋め込まれた灯りだけで進むには、地下は不気味だと思った。
いくつかの曲がり角を確認する、先に扉があったり、さらに別れ道があったりとまるで迷路のため、アルメがリベルテにせめて、地図でも描いて貰えば良かったと後悔した。
「これ、絶対戻れ無いじゃん」
来た道を振り返り言う。少し前の自分が以下に冷静ではなかったか。地下では方向感覚も狂い、せめてもの、壁の隅に、掛けた煉瓦で書いた印だが、曲がり道を何度も曲がったため、どの壁につけたかわからなくなってしまった。
「まぁ、リベルテが見つけてくれるだろう、騎士団も来るし」
後で怒られそうだが、考え無い様にして。ひたすら進む。鍵の開いている扉は片っ端から覗いたが。本棚だらけだけでなく何やら魔術語だらけの部屋や、魔獣の一部が液体に浸けられた物まであり。その不気味さに、扉を開けるたび、慄いた。
しかし、慣れとは恐ろしいもので、だんだん、次は何かと楽しくなってきてしまっているのも事実だ。
その扉も今まで開けてきた扉と同じで、なんの装飾もなく地味な物だった。
音がする?
静かな地下扉越しでも何かが動く音がする、ネズミか何かだと思うが、アルメはより慎重に扉を開いた。
鍵は開いてをり、中には灯りがあった、薄い灯りは壁だけでなく、天井にもありシャンデリアの様に大きなランプのが吊るされている。
中央には大きな寝台があり真っ白な布団が少しめくれた形になっておりさっきまでここに誰か眠っていた様だ、まるで眠るための部屋。
「病人でもいたのか?」
床を見ると微かに魔術語の様な物が寝台を囲む様に描かれている、擦れているそれは所々消えており、かなり前の物の様に見えた。
屈んでそれを見ていると、ふと視線を感じ、寝台の方を向く、もちろん誰も眠ってい無いが、寝台の下、大人なアルメには潜る事ができ無い程の隙間に動く物がい。
「うっわ!!!」
アルメが叫ぶと寝台下から子供が飛び出してきた、手には棍棒の様な杖を持っており、子供はアルメに向かって振り返り下ろした。
しかし威力はなく容易く受け止められる。
「子供?、何でこんな所に」
十歳未満の茶髪の子供、体は細く不健康で、想定する年齢は当てはまら無いだろう。
子供は杖をアルメの手から取り返そうと、引っ張るが力が入っておらず、そして僅か数秒で子供は疲れてしまったのか、床にヘタレ込んでしまった。
「君はどこの子?迷い込んだ訳では無いよな」
子供はアルメをジッと見るが、何も言わない、既視感を覚える光景だが、子供の睨む様な上目使いは、廊下よりも明るいとはいえ、不気味に見える。
アルメは子供から杖を奪う、力はこもっておらず手からスルリと離れた。脇に手を入れて持ち上げればその軽さに驚く。
「お前軽すぎだろ、メシ食ってるのか?」
無抵抗全てを諦めた様な姿はゴーデンの路地に稀に見た。浮浪者と孤児を想起させた。
もしかして、攫われた子供かもしれ無いな、
床に下ろしてやろうと、するが、その時背後から熱を感じアルメはすんでで避けた。僅かに肘の部分が当たったのか焼ける痛みが襲う、
「ッ!」
いつのまにかいたのかローブを被った少年がアルメに杖を向けている、ベットに火が引火するかと思ったが、火は直ぐに消え、微かな焦げ臭さ部屋を充満すした。
腕に抱えている、子供を抱き抱える様に避けたが、少年を確認した途端アルメの腕から抜けようと暴れまわる。
少年はさらにアルメを睨み、魔術を使おうと杖を光らせた。
「やめろ!」
直ぐに起き上がり、少年が魔術を撃つより早く距離を詰め、その杖を空いている手で抑える。
脇には子供を抱えて、もう片方には杖を持ち、アルメの胴は無防備だ、冷や汗が出たが、少年は杖を取り返すのに必死で、それ以上魔術を使おうとはしなかった。
周りが見えておらず、他の手立てすら考える余裕がない、そんな姿に、リベルテを重ねてしまう、自分を重ねてしまう。
「何もしない……ここには人を捜しに来ただけだ」
アルメの言葉に反応して少年は睨みながらも言う「その子を離して」と
アルメは暴れる子供をゆっくりと下ろす。子供は走り、少年に抱きついた。
杖は離すわけにはいかないが、少年は落ち着いた様だった。
「兄弟なのか?」
「……弟」
子供は肩に届くかの髪の長さで、痩せてた顔はどちらとも判別できたため、わからなかった。
しかし、魔術が使え、汚れていないローブを羽織った兄と薄い布でできた服を着る痩せた弟、
この待遇の差にアルメは疑問に思った?
「どうやってここに入ったんだ?」
「連れてきてもらったの、ご飯をくれるって」
「そうか、美味しかったか?」
兄の方は曖昧な表情をした、弟は顔を兄のローブに埋め見えない、いくつかの言葉を交わしたからか、少年は杖を持つ手に力を入れていないのが伝わってきた。
杖から手を離すと、弟を抱きしめてアルメから少し距離をとる。
「いいな、私もお腹が空いて来たから、ご飯食べようかな、」
視線を合わせるため屈んでいた体を上げて。アルメは扉に向かう。
なるべく微笑みかけるような笑みをして、彼等に振り返る。
「良かったら手伝ってくれないか?」
少年達は顔を見合わせる、眉を下げて、悲しそうな顔をしたので。
「ひっ一人じゃ、食べ切れない量を買ってしまったんだ。良かったら一緒に食べないか?お腹空いているならだけど」
しばらく考えた後兄の方がアルメに歩みよる。弟もローブを掴み兄に着いて行く。
「あっ」
扉を出て思い出す。そういえば道がわからなくなっていた事に、しかし戻るしか無いため。少年達を不安にさせない様に、壁の印を目安に戻って行く。
「大丈夫?」
格好をつけたつもりだったが少年達にバレてしまった様だ。心配そうな声に後ろを振り返ると、そこそこの距離が離れた場所からの言葉だった様で、別の疑惑も持たれてしまった事に、ショックを受ける。
「大丈夫、初めて来る場所だから、ちょっと慎重に進んでいるだけだよ」
そう言うが信用出来ない様で、二人からの訝しげな視線に肩身が狭くなる。
「ごめん、迷ったかもしれない」
アルメはしゃがんで、両手を合わせて頼む「地図とか、持って無いよね、」
案内を頼むにも、似た様な部屋が多くうまく伝える自信がない、リベルテを待つしかないかと諦めたが。
「あるよ」
そう言い兄の方がローブから何かを取り出す、綺麗な球体、水晶玉の様な物に魔力を流し混むと、中で何かが反射を繰り返し、丸い地図を写しこむ、平面的な地図良く街の広場でも見かける。魔術道具を持ちいたそれは街にある物と違い、魔力を流し込んで使う様だ。
「ありがとう、今何処かわかる?」
無言で指を刺す。刺された場所を観るだしかし同じ作りのため、わからない。アルメは壁の描いた印しち方向を合わせて、記憶を辿る様に進む。
「あっと、ちょっと待って」
いくつかの角を曲がると戦闘のあとが見えて来てアルメは少年等を角に押し戻す。
「少し待っててくれ」
その場に行く見覚えのある場所は、記憶が正しければ死体がいるはずだが。
「あれ?、道間違えたか?」
そこには死体は無かった、ただ見覚えのある痕跡でここがその場所なのわ間違い無い。
「リベルテー?」
リベルテがいるはずの扉を開けるが、中に彼はおらず、アルメのリュックすら無い。
あいつ、何処に行ったんだ?
もしかするとアルメを捜しに行ったのかもしれない。とりあえず少年のもとえ戻ろうときびつを返す。
「うっわーー!!!」
急に聞こえた叫び声少年の物だ、直ぐに向かえば、見覚えのある金髪が兄の方を拘束魔術で吊るし上げている。
弟がリベルテにポコポコ両手で殴りかかっているが、まるでいにも止めていない。
「リベルテ、魔術を使っても良かったのか?」
「おかげ様で、すっかり回復したよ」
片手にアルメのリュックを持って、堂々とした立ち姿でアルメも彼が元のリベルテに戻ったのだと悟る。
「その子達はここまで案内してくれたんだ、解放してくれ」
「やっぱり迷っていたんだ」
そう言い兄を解放する、弟が直ぐに駆け寄りリベルテを睨む。
「孤児の雑用係か」
「雑用係?」
「より扱い安い駒を作るために、身寄りの無い子供を地下で育成するんだよ。彼等は大人になって任務を受けれる様になるまで、地上に上がる事は出来ないから、外の世界を知らない分より従順になる」
その語口、かつてリベルテも使えていたと言っていたため、彼もそうだったんだろう。
「僕を襲ってきた奴らも、皆んなそう、」
リベルテは少年達に近づきその頭を豪快に撫でた。
アルメはその行動を意外に思っていると、リベルテはアルメの方を向き、
「騎士団が来たみたいだ、そこも回収したのは彼等だよ」
アルメが気になっていた事を教えてくれ、時間切れだと知る。
「地上に戻るか、手掛かりは見つからなかったよ」
「後は、騎士団に任せよう」
そう言うとリベルテは、手に平に魔法陣を浮かばせた、バチンと音をさせたそれは、まるで何かに拒絶された様だった。
「何をしたんだ?」
「彼にかけた魔術抑制陣を解こうと思ったんだけど、結界に弾かれてしまった」
「解いて大丈夫なのか?」
「彼の魔力はわかりやすいから、何処にいるか直ぐわかる、騎士団を連れて行ければ直ぐ終わるのに時間をかけるしかないか」
何も言えずアルメはリベルテから受け取ろうリュックの肩紐を持つ。
その瞬間、背景が変わる。
同じ薄暗い場所でもそこが外だと直ぐにわかる。肌で感じる風、視界には木々が見え、たじろいで、足を動かせば、ジャリっと土を踏む音がする。
リベルテも驚いた様だったそして、白髪の男も。
その人物は、白いローブを羽織り、フードで顔が見えないが、同色の瞳が見え隠れしており見開かれている。
「グラン!!」
目の前に現れた宿敵に、リベルテは再び感情を露わにする、一緒に転移してしまった。兄弟の頭から手を離し。アルメのリュックからを手を離す。
ズンズンと進むリベルテ、アルメは慌てて手首を掴み止める。
背後から腰を抱きしめられて、怖がった子供達かと思ったが、後ろを振り向けば、見覚えのある白髪と赤い瞳がアルメを見上げていた。
「おま」
「貴様が入れたのか、どうやって結界の中に」
アルメの言葉に被せる様に、男が言う、背後の彼を睨むが、彼はいつもの無表情でアルメを見上げている。
「面倒ごとばかり!」
グランが手を動かすとアルメ達の立っている地面が光出す。恐らく元から刻まれていたのだろう、拘束魔術の様だが、リベルテが使っている物と違い何かに生き物の様だった。
リベルテは黄金の防御壁を張る、アルメと彼、子供達はそれぞれ捕まり、強い力で締め上げられてしまった。上に持ち上げられて、足がぶらつく、彼のダボダボ靴は脱げ、ズボンは、たくしあげていた生地が下ろされた。
「っぐ!」
苦しく息が詰まる、リベルテはそれを見て、自信の防御壁を解き、手の平に魔法陣を浮かべる、同じ結界の中にいるなら彼に使った魔力抑制陣を解くことが出来る。
リベルテ向かい触手が襲いかかるが、その前に彼の陣が解けた。
腕から黄金の陣が消えた彼、その瞬間体が大きくなる。
もともとダボダボの服は、やっとピッタリ合った体のサイズになる。いきなり大きくなった隣人にただでさ苦しいのにより圧迫感が襲う。
「っくっ苦しい」
その言葉を聞いてか彼は魔術でを使った様でアルメ達をとらえる触手には大穴がいくつも空き触手は力無く地面倒れそれと同時に解放されたアルメは落下した。
片手で受けと止められたアルメお腹に強い衝撃が来たが、それ以外怪我は無かった。
アルメを支える片腕、その白い手を伝う様に彼顔を見る。
真っ直ぐグランを見据える瞳は赤く、親子だと聞いていたアルメは、似ていないな、と思った。