15.騎士団じゃん
王都に向かう辻馬車は夜の時間体は無い、暗闇の中、街の外を走るのは死ぬ事と同じだ。
しかし、その馬車は違った、当たりは暗くなりつつあるのにも構わず、街を出発しようとしている。
アルメは怪し雰囲気をかぎ取り、隙を伺う、四、五人が馬車の外でたむろしており、全員黒のローブを羽織っている、リベルテを見ていたからか、ほとんどが魔術師、である事に気づいた。
行ける!
意を決して馬車に近づく、フードを深く被り、髪の隙間からは灰色の鬘を覗かせた。
「すっしゅみません、この馬車は王都に向かいましゅか?」
全力で数舌を悪くし、腰を曲げ、体をローブで覆う、大きな荷物がより大きく見え、側から見たら老婆に見えるだろう。
「なんだあんた、この馬車は辻馬車じゃないよ」
しっしと彼等は手で払う身振りをする。
「お、お願いしゅましゅ、王都に住む孫にすぐにでも、薬を届けにいかにゃならんのでしゅッ!」
迫真の演技である、孫は愚か、子すらいないが、アルメは演技を続ける。
「わしゅは、薬師でしゅ。お金ならいっくらでも出しましゅ!」
財布の中身を開いて見せる、ジャラジャラと音をさせるが、彼等は見向きもせず。
「薬師?、悪いが戦えない物を連れて行くわけにはいかない、あんたも長年生きているなら、夜の壁外がどれがけ危険か知っているだろ、諦めろ」そう言い、老婆に忠告した。
あれ、いい奴らだった?
「待て、」
検討が外れたかと思ったが、奥からガタイの良い大男が出て来る、身なりは簡素で馬車の周りにいる男達とは違う雰囲気で魔術師ではないと、勘づく。
大男は財布の中を覗き込む、あらかじめ金貨が隙間からは見えやすい様に配置している。
チラリと視線が此方に向いたので、目を合わせないように、下を向く
「お願いしましゅ、孫のもとえ、王都まで乗せて下しゃい!」
「いいぞ、」
「しかしダッ、旦那!」
言い返す男の口調が気になったが、アルメは馬車に乗れる事に、心の中でガッツポーズをした。
「いいじゃねえか、金もたんまり持っているみたいだし、荷物が少し増えたくらいで、変わりゃしねよ」
大男はズンズンとアルメから離れて、馬車に乗り込む。扉を閉める前に、
「一応中央の馬車に乗せとけ、お客様だからな、」
「だっ旦那!もう!」
男達はやれやれとアルメを案内する、三台ある馬車、思ったより大所帯に驚いたが、より安全に王都に迎えることを幸運に思うことにした。
アルメが馬車に乗り込むとすぐに、馬車は動き始めた、1台目は座席があるタイプらしく少し豪華だが、ニ台目、三台目は、荷馬車で、アルメの他に三人の男と、幾つかの木箱が乗せられていた。
男達は当然アルメを見る、物色すると言うよりは、怪しむような目で。
王都に迎えるのだ、違和感を殺して、全力で体を縮め、突き刺さる視線に耐える。
揺れる馬車、重い沈黙、どちらも慣れない生活を送っていたので、魔獣の侵撃の度に馬車が止まるほど深呼吸をした。恐怖は無い、彼等は恐ろしく、統率が取れているからだ。
「行くぞ!」
「追い込め!」
「追撃する!」
などと、良く通った声と連帯プレイー、仕舞いには。
「団長!流石です!」
などと聞こえる。
騎士団じゃん、
男達の歓声の中にアルメのため息は当然かき消された。
無傷で馬車に乗り込み、その後も進み出す馬車の中で男達は、アルメを見張る、その切り替えの早さに驚き、彼等が騎士団の中でもかなり実力のある集団である事に気づく。
四度の魔獣の襲撃に遭うも馬車は休む事なく進み、朝日が射す頃に、王都の外壁が見えて来た。
丘の上にある都は全体的に高くそびえ建つ。一番高い位置に、厳かな王宮、この国のシンボルの旗、その深い紺色が、朝日で輝いている。
もう、着いたのか、驚くほど早いな
「ここでいいだろう、」
王都の外壁から少し離れた、場所に下された。
「旦那、」
「夜は豊作だったな!、大量に素材が手に入ったぞ!」
何か言いたそうな部下の背を叩きながら、大男は、大笑いをする。ふと此方にやってきたため。
「お、お金」
アルメはローブで出来るだけ手を隠しながら財布を差し出す。
「ふん、運がいいな、今は気分がいい、その金は“孫”のために使ってやりな」
大男は、ガハハと笑い、アルメをバシバシと叩く、本人は軽くのつもりだろうが、それなりの衝撃が来た、そして背を向ける去り際に、「じゃあな、若い婆さん」 などと言はれれば苦笑いしかできなかった。
夜は暗くて、黒く見えたシミ一つない紺のローブ、彼等の姿にアルメは経緯を払わずにはいられないなかった
「カッケー、」
そう言い、気を取りなをしたアルメは彼等が街に入ったのを見送った後、鬘とローブを脱ぎ、王都に入った。
アルメは王都に来るのは初めてだった、主な活動範囲はタイバン付近、遠出はしても、海岸沿いの街に海鮮類を食べに行くくらいだ。
「スゲー!」
街に入った途端、その賑やかさに、目を見開いた。タイバンや今までに通った街とは別格の華やかさがある。屋根の色は様々で、街に入ってすぐある広い通りは露店がズラリと並び途切れが見えない。
「美味そー!」
串焼きの焼ける匂い、その隣には、イカがタレを塗られ炭焼きにされている。
「こんなことしている場合じゃない!」
気づけばアルメは片手に串焼き、片手にイカ焼き、脇には綿菓子の入った袋を挟み、頭にカラスのお面を付けていた。
ヤバイヤバイ、空腹と興奮で完全に目的を忘れてた!
急いで両手に持つ物を食し、エグレゴアの本部に向かう、が当然場所など知らない、ローリエは王都にあるとしか言はなかったからだ。
「すみません、」
「んー〜」
アルメは露店と露店の間にある、建物の勝手口だろうところの階段で一休みしている、老婆に話かけた。
「エグレゴアの本部の場所わかりますか?」
「んー、ん、ん〜、ん」
老婆は言葉は発しなかったが、右左右右と指差しで教えてくれた様だった。
「ありがとうございます。これ良かったら」
脇に抱えた綿菓子の入った袋を老婆に手渡す、震える手で受けとった老婆に、お辞儀をすると、手を振ってくれた。
良かった意外とフレンドリーだ、
路地を入れたら、道は沢山あるため、アルメは大きな通りを老婆のゆう通り曲がる事にした。
通りはやはりどこも華やかで露店が出ており、広場では芸を披露する者が多くいた。
「あれで稼げるのか……」
一人の男が、身動き一つせず派手な衣装を着て立っている、その隣で、小さな子供が首から、
(触らないで!)
と看板を下げ、手には木の器を持っている、何人かの観客していた者が、その器にお金を入れていた。
「色々あるんだなー、」
街を眺めながら進むと飽きず、アルメは老婆が示した最後の路地を曲がった。
「無理だな、」
路地を曲がって直ぐにわかった。いわゆる貴族街、タイバンにもあるが、アルメは絶対に近寄らない場所だ、市民街とは基本隔ってられており、柵は無いが通りの道は石の門がある、警備も配置されており、一台の馬車が、現在進行形で、荷物などを調べられていた。
「試しに行ってみるか、」絶対無理だろうと思いながら、警備隊の人に話しかける。
「あのー、」
「なんだ」
警備の人は訝しげな目を向ける。大きなリュックを背負い、小汚い旅装の人間が貴族街になんの様だと、言われずともわかる。
「エグレゴアの本部はこの先ですか?」
「そうだが、」
「この先に入れたりしますか?」
「紹介状はあるか、魔術師なら組織会員証を提示しろ」
「あ、その友人が、いるので、旅のついでに会いに行けたらなーと思いましって。ダメだったらいいんです、すみません、」
両手を顔の前で細かく振り、 頭を下げ素早く離れた。警備隊の視線がつき刺さり、逃げる様に、通りを曲がった。
「どうしよう、」一番の難関である。