序章-2
そう思った途端、プルプルと震え出す身体。
何故かわからないけれど、冷や汗が止まらない。
よくわからない恐怖が私を襲う。
ガタガタ震える私を見て、心底嬉しそうな表情をする叔父とニベア。
本当に腐っている….
叔父たちと血縁関係にあることが心底気持ち悪い。
「大罪人よ」
少し甲高い声が特徴の声に呼ばれ、目の前に立っている叔父とニベアと目線が合うよう顔を上げる。
「おいおい、そんなに睨まないでくれよ」
睨んでもない私が悪人になるように叔父はニヤリと厭らしく笑い、民衆たちに聞こえるよう大きい声で発した。
そんなわざとらしくする叔父のパフォーマンスに嫌気がさし、視線を床に落とす。
「お姉様。
私、お姉様にプレゼントがありますの」
私の耳元で囁いたと同時に、乱雑に何かを床に投げ捨てた。
ボコっと何か重たい音が鳴り、コロコロと上手いこと私の元へ転がってきた。
それを見て、息が止まる。
「なん、で!?」
バッと叔父とニベアを見上げる目を細め、これでもかってほど睨んだ。
「どうして!!」
手足は鎖で結ばれているにも関わらず、叔父たちに向かって体を動かす。
それにより、鎖がガシャンガシャンと激しい音が民衆たちにも大きく響き渡る。
だって私の目の前に転がってきたそれは。
1ヶ月前に手紙をくれた。
【必ず迎えに行きます。】と伝えてくれた。
私がお慕いしていた、唯一の人。
ーーールカート第一王太子殿下の生首だった。
「はははっ」
「ふふっ、ふふふっ」
私のこの行動を気に入ったのか、嬉しそうに笑う叔父とニベア。
「そう!その顔だよ!やっとお前を絶望に追いやれる!」
「お姉様のその歪んだ顔がやっと見れましたわ!」
ニベアが勢いよく、ガバッと私の前髪をあげる。
痛みで顔が歪む。
「あなたのせいじゃない」
ニベアがそう言い、叔父はニベアに続き、言葉を続ける。
「お前が生きているからだ!
お前が悪い!全部、お前のせいなんだ!」
ああ….
なんてこと。
ルカート殿下、ごめんなさい。
ポタポタと目から流れる涙が止まらない。
泣いている間に叔父は死刑執行人に頷き、ギロチンに首を固定される。
ねえ、神様。
本当に私のせいなのですか。
私が生まれてきたから…
「では、大罪人アイリス・ルルエルディアの処刑を行う!」
喜んでいる民衆たちの声が煩い。
微笑んでいる叔父とニベアが憎い。
ねえ、神様
もう一度、やり直せるのなら…
もう一度、ルカート殿下お会いできるのなら…
どうか、お願いします。
私にチャンスをください。
ルカート殿下を….
彼を守るチャンスをーー。
そして。
ーー叔父とニベアに復讐できる、チャンスを。
今度こそ間違えない。
絶対にー。
「私は、あなたたちを絶対に許さない。」
そう呟いた瞬間、グシャリと音が聞こえたと同時に、私の視界が真っ暗になった。
こうして
大罪人アイリス・ルルエルディアは処刑された。