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序章-1




「大罪人、アイリス・ルルエルディア元第一大公女」



拡張器を使い、できるだけ遠くの人にも聞こえるよう私の名前が空高く響き渡る。



ボロボロに破けた服。

数週間お風呂に入っていないからか匂いのきつい身体に、ボサボサの髪。

牢屋にいたこの数週間に王妃の命令で騎士たちの暴力を振られ、擦り傷や赤く腫れ上がっている汚い顔や手足。



そして、私の目の前には数週間前まで私を慕っていた民衆たち。



民衆たちからは、憎悪、嫉妬、喜色….

いろんな視線が私を捉える。



そんな民衆の視線に得た得体の知れない恐怖を抱く。

今更、民衆たちに恐怖を抱いたって意味がないのにー。



私、アイリス・ルルエルディアは、今日で18歳を迎えた。

やっと成人になった。



そして。



「これから処刑を行う!」



ーーーこれから母国に殺されるのだ。






私の家―-ルルエルディア家は、大公一家だった。

歴代皇帝を支える、皇族の次に権力のある一家。

その為、皇族とも関りが深くお互いに仲が良かった。


私の母親、エーフィ―は平民出身だった。

綺麗な白銀の髪に、パチリとした大きい目、スラリとした体型で、真っ白い雪みたいな肌。

国一美しいと評判だった。

そんな母に父は一目惚れをしてしまったそう。


私の父親、エスロンは、ルルエルディア家の長男に生まれた。

小さい頃からルルエルディア家を継ぐことが決まっていたため、英才教育を受けていた。

そして、現皇帝とは小さい頃からの幼馴染みだったらしく、現皇帝が皇帝になる際、父もルルエルディア家を継ぎ、エスロン・ルルエルディア大公閣下となった。

漆黒の髪に、少し高い鼻に細い目、大公一家のみに受け継がれるという空色の薄いブルーの瞳を持ち合わせた父。


そんな両親を持つ、私は、母親の綺麗な白銀の髪とパッチリした目と、父親の少し高い鼻と空色のブルーの瞳を受け継いだ。

その為、私は母親と同様、国一美しいと噂になった。


当時、平民出身の母が大公一家に入るにあたり、問題事だらけだったらしいが、父が当時の大公閣下―私のおじい様を説得と母の大公夫人としての頑張りが認められ、一家として名を残すことが許された。

そんな父と母の頑張りが国中に知れ渡り、王族だけでなく、国民からもかなりの支持を得たという。


しかし、私が15歳の頃、両親が乗った馬車が横転し、そのまま帰らぬ人となってしまった。



父の次に、ルルエルディア家の後継者として選ばれたのが、父の弟―アーサー。

私の叔父にあたる人だった。

叔父は、兄である私の父を嫌っていた。そのため、兄の娘である私のことを心底嫌っていた。


しかし、おじい様が私を叔父から守ってくれていたため、特に叔父から雑な扱いをされずに済んだ。

けれど、父の死が精神的に来ており、身体を壊し、1ヶ月ほどで帰らぬ人となってしまった。


おじい様がいなくなったことをいいことに、私への扱いは雑になっていった。

今まで大公女として使っていた私の部屋は、叔父の娘であるニベアに渡され、私は、叔父から用意された日の全く当たらない地下牢にあるかなり端の部屋だった。


運ばれてくる食事もパンとスプーンと2杯分くらいのスープを1日1食だけだった。

まるで、囚人のようだった。



叔父は数週間したら餓死してくれると思ってたんだと思う。

けれど、数ヶ月たっても中々死なない私を見て、叔父は「お前は大罪人として2週間後に処刑される」と言葉を発した。



罪名は、横領罪。

両親が死んだことをいいことに国民から得たお金を自分の贅沢に使っていたからだそうで、私は何も大罪を犯していないのに、何で大罪人として処刑されなきゃいけないのか分からなかった。

ただ、叔父が私を何としてでも殺したいのだということだけは強く伝わってきた。


ここ数ヶ月、私の顔を見に来なかったので、おかしいなと思っていた。

しかし、それは大罪人として私を消し去るように動いていたのだと今となっては思う。





「大罪人、アイリス・ルルエルディア元第一大公女よ。

最後に言うことはあるか。」



叔父の右腕と言われているクリス公爵が私を睨みつけるように言う。



特に叔父や民衆に対して言うことはない。

ただ、一つだけ聞きたいことがあった。



それは――。



「ル、カ...ルカート、第一、王太子...殿下は...?」



私が唯一お慕いしていたお方。

私のために唯一真実を探そうと動いてくれていたお方。


ルカート・リミテッド第一王太子殿下。

皇帝の息子であり、この国の第一後継者でもあった。

ただ、彼はあまり国民や貴族からは慕われていなかった。

それは、彼は、婚外子だったから―。



私が地下牢に行く前日の最後の手紙で【必ず迎えに行きます。待っていてください。】と書いてあった。

だが、それ以来、殿下とは音信不通になってしまった。



ルカート殿下に何もなければ、それだけでいい。

大きな怪我もなく、生きてくれていれば、それだけでいい。



けれど、神様は残酷で――。



叔父と唇が口紅で真っ赤になっているのが特徴の娘のニベアは、ルカート殿下の名前に、口角を上げ、にやりと笑いながら、こちらに向かってカツカツと音を立てながら歩いてくる。



その笑みにゾクリと、背筋が震えた。



―――すごく嫌な予感がする。




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