第七話「入学試験Ⅱ」
大講堂に移動した僕たちはそれぞれ自分の受験番号が貼られた席につき試験の開始を待っていた。回りを見ると緊張をしている人もいれば自分に自信があるのか周りと話をしている人などそれぞれが試験の開始を待っていた。その時、壇上にこの学校の先生であろう人が上がり話し始めた。
「入学試験に来られた受験生諸君、お待たせしました。これより入学試験を始める。初めにこの試験の流れと合格した後のことについて簡単に説明をします。まずみんなには、この会場で簡単な筆記試験を受けてもらう。この試験は合否にあまり関係はしないから安心してください。しかし、無回答は不合格とする。これはあくまで適性試験のような物です。筆記試験は三十分、筆記試験が終わったのち案内板に示したようにそれぞれの会場にて実技試験を行います。その試験の内容を見て選ばれた数名は選ばれた者同士で一騎打ち形式の実戦試験を受けていただきます。その試験が終わったのち、先ほどの案内板に合格者の名前を貼りだします。合格した者は一週間後入学式を行い、正式にこの王立魔術学園に入学という形になります。これで説明は終わりますが、何か質問がある方は?」
淡々と壇上に上がった先生が説明をし終えると僕たちに問いかけた。
「はい」
「はい、そこの君」
手を上げ質問をする生徒が指名をされ立ち上がる。
「実戦試験と言われていましてが、本物の実剣等を用いて行うということですか?」
「いえ、実戦試験ではありますが武器は木刀など木でできたものを使用します。しかし、魔術の相手への直接的な攻撃は認めます」
質問をした人の質問に対し先生らしき人が答える。
「ほかに質問のある方はいますかな…いないようなので早速筆記試験を開始しようと思います。今から皆様に問題用紙と回答用紙を配ります。配り終えたら試験を開始します」
壇上にいる人がほかに質問者がいないことを確認すると周りに待機していたほかの先生らしき人たちが僕たち一人一人に問題用紙と回答用紙を配り始めた。少しすると配り終えたのか配っていた人が元の位置に戻っていった。
「配り終えたみたいなのでこれより筆記試験を開始します」
壇上の人により筆記試験が始まった。僕もその合図を聞くと問題用紙を開いて問題を解いていく。壇上の人が説明した通り、問題は適正を見るような問題ばかりだった。僕は黙々と問題に答える。
「そこまで、皆さん回答用紙を机の上に伏せてください。伏せましたら皆さんは案内板に示してあった会場に向かってください」
説明を聞き回答用紙を机に伏せた僕は周りの人たち同様立ち上がり会場に向かった。会場に着くと十五人程度の人が集まっていた。そこでの試験官が僕たちに声をかける。
「これより実技試験を開始します、名前を呼ばれたものは前に出てあちらにある人形に魔術を放ってください」
試験官が手で示す方向を見るとそこには木でできた人形が置かれていた。そして一人ずつ名前が呼ばれていく。
―初めてエイトたち以外の人の魔術が見れる!
僕はエイトたちの魔術しか見てこなかったため自分たちと同年代の人たちの魔術を見れることをとても楽しみにしていた。
「術式展開!」
名前を呼ばれた人が前に出て人形に向かって魔術を放つ。
「ウイングスラッシュ!!」
そう言うとその人の右手に術式が浮かび上がる!
が、その術式はやけに小さく色も少し色あせていた。そして人形に向け風の刃が向かっていくが少しだけ人形にキズを付けただけですぐに魔術は消えた。それを見たほかの受験生は少し驚きの声を上げる。
―え、ええ?どういうこと??
僕は魔術の規模に動揺を隠せずにいた。次に出てくる人もその次の人も、僕と同じ氷を使う人ですら小さな氷を人形に飛ばすだけだった。
―ど、どうなってるの?
動揺していた僕に試験官が声をかける。
「次、ユウ」
「は、はい!」
動揺していた僕は名前を呼ばれ焦るように前に出た。周りから少し声が聞こえてくる。
「あいつ、この実技試験が始まってからずっと動揺してたよな」
「きっと周りのレベルが高すぎて焦ってたんだぜ」
周りから僕を馬鹿にするような声が聞こえる。
―高いからじゃなくて、低くて動揺してたんだけどなあ
「どうかしましたか?」
僕が周りの声に心の中で答えていると試験官が声をかけてきた。
「いえ、何でもありません」
試験官の言葉に落ち着いて答える。
―あれくらいの人形だし、あれでいいか
心の中でどんな魔術を使うか決めると僕は顔の少し前に右手を持ってくる。
「術式展開」
そう言うと、右手の上にほかの人より大きくきれいな青い色をした術式が浮かび上がる。それを見た周りの受験生や試験官から驚きの声が上がる。
「アイシクルランス」
技の名前を言うと術式の上に氷が発生しその氷が槍のような形をする。そして僕はその槍を投げるように人形に打ち出す。氷の槍が人形に向け放たれ直撃するとすごい音とともに砂埃が巻きあがった。僕の魔術を受けた人形は跡形もなくなっていた。
「これでいいですか?」
僕が魔術を打ち終わり後ろを見ると僕の魔術を見て驚いた様子の受験生と試験官がいた。
「は、はい。大丈夫です。ありがとうございます」
僕の問いかけに焦ったように指揮官が答える。その後、替えの人形が用意され実技試験は進んでいき最後の一人が魔術を使い終わると実技試験は終了した。すると指揮官のもとにある男性が声をかけ何かを説明していた。その説明を聞き終わると指揮官が話始める。
「これで実技試験は終了です。皆さんお疲れさまでした。案内板に合格者が発表されるまでしばらくお待ちください。それと、ユウ君あなたはこの後闘技場にて実戦試験を受けていただきますので、闘技場に行ってください。場所はこの会場を出ると地図がありますのでそれを見て確認してください」
「あっはい、わかりました」
実技試験が終了したことを聞いた後僕だけ実戦試験を受けるよう説明をされ僕は返事をし、闘技場に向かう。会場を離れる時にまた周りから声が聞こえたが聞こえない振りをして会場を後にした。