第六話「入学試験Ⅰ」
エイトのお父さんの家に仕えている執事のおじさんに馬車を出してもらい僕たちはその馬車に乗り込んだ僕たちは試験会場に向かっていた。
「コハル、大丈夫?」
昨日の夜緊張で眠れず目の下にクマを作っていたコハルが心配な僕はコハルに問いかける。
「大丈夫だよ。さっきアカネにヒールしてもらったから」
「へー、アカネのヒールって体調面にも効くんだな」
コハルの返事にエイトが合わせるように言う。
「試してみるもんだよね!」
アカネが笑いながら答える。すると馬車を運転していた執事のおじさんが声をかけてくる。
「皆様、間もなく会場に到着しますので、ご準備を」
それを聞いて僕たちは自分の荷物を手に取る。
「着きました」
その言うと執事のおじさんが馬車を止める。僕たちはその言葉を聞くと外を見る。そこには立派な校舎はもちろん大きなグラウンドや体育館、それ以外にも色々な建物が立ち並んでいた。
「ここが、王立魔術学園」
驚きを隠せない僕がそう言う。
「皆様、今いるここが正門になります。正門から少しまっすぐ行くと案内板がございます。そちらを確認したのち大講堂に向かわれる形となりますので、頑張ってください」
「はい。ありがとうございます」
僕たちがそう答えるとみんなそれぞれの荷物を持ち馬車を降りる。
「それじゃあ、執事のおじさんありがとう」
「試験が終わり合否が発表される頃にお迎えに上がります。皆様、ご武運を」
そう答え僕たちに一礼すると執事のおじさんは馬車を動かす。
「よし、それじゃあ行こうか!」
「うん!」
エイトの発言に僕たちが答えると執事のおじさんに言われたように案内板に向かった。案内板にはだれがどこの会場で試験を受けるのかが書かれていた。
「俺はB会場だな」
「僕はD会場だね、アカネとコハルはどう?」
エイト言葉を聞きつつ僕は自分の会場を聞きつつアカネとコハルに問いかける。
「私はA会場」
アカネが答えるとそれに続くようにコハルが答える。
「私はC会場みたい。でも、筆記試験は大講堂で一斉に行われるみたいだね」
「それにしても、結構入学試験受ける人いるんだな、それも俺たちより年上の人も」
エイトが周りを見ながら発言する。
「魔術の才能が開花するのに年齢が早い人もいれば遅い人のいるってエイトのお父さんが言っていたからね。でも、こんなにたくさんいるんだね」
エイトの発言に答えつつも人の多さに僕も驚いた。
「おい!邪魔なんだよ、どけ!」
僕たちは後ろの方から大きい声が聞こえ後ろを振り向くとそこには周りを威圧して無理やり道を開けさせ歩いてくる数人組がいた。真ん中を歩いている男は周りより身長が高く少し体つきががっしりしていた。その周りに少し身長が低く細身の男、いわゆる取り巻きが周りに威圧をしながら道を開けさせていた。
「おい!お前ら何見てんだよ!邪魔だ!」
僕たちの近くに移動して来ると取り巻きの一人が僕たちに強い口調で話しかけてきた。
「大きい声で騒いでるやつのことを見て何が悪いんだよ、周りに迷惑かけてるお前らが悪いだろ」
エイトが取り巻きの発言に対し少し強い口調で答える。
「ああ?お前痛い目にあいてえのかよ!」
エイトの答えを聞きより威圧的な声で答える。
「はっ、やれるもんならやってみろよ」
少し笑いつつもエイトも威圧的に答える。
「ちょっとエイト、ここで喧嘩なんかしたらまずいよ」
僕は周りを見つつエイトをなだめる。
「お前ら、何をしているんだ?」
僕たちは声をかけてきた方を見る。そこには黄色い髪を左右に分け黄色い瞳をした青年が同じくらいの年齢の護衛らしき人を引き連れた人がいた。
「ねえ、あれってアルト殿下じゃない?」
「国王の息子さんの?」
その人物を見ると周りの騒然とした。
「お前たち、周りに迷惑をかけるな、おとなしく会場に向かえ」
その青年の発言に取り巻きたちは焦るように立ち去って行った。真ん中にいた人物は僕たちをにらみつけると立ち去って行った。
「さすがはセンリの息子とその友達だな、物おじする気配すら見せなかったな」
その青年が今度は僕たちに声をかけてきた。
「俺たちの方が強いのは確実だし魔獣に比べると怖くもないしな。てか、なんで父さんの名前を知ってるんだ?」
エイトが青年の言葉に答えつつエイトも質問をする。
「ああ、センリは何も話していないんだな、俺はアルト。現国王、アルスの息子だ。そして、この二人は一応俺の護衛として一緒に試験を受けるカイとクライスだ」
「どうも」
「よろしくお願いします」
アルトが答えた後紹介された二人も僕たちに挨拶をする。
「えっ、国王様の息子ってことは王子様ってことですか?」
アルトの発言を聞き僕が気になったことを聞く。
「ああ、そういうことになるな」
「え、ええええええええええ」
僕たちは驚き少し後ずさる。
「はははは、いい反応だな」
アルトは僕たちの反応を見て声を上げて笑った。
「王子様とは知らず飛んだご無礼を、失礼しました」
コハルがそう言うと僕たちは深々と頭を下げる。
「気にするな、それに敬語もいらない。俺はこの立場だから友達と呼べる存在がほぼいなくてな、センリの息子とその友達だし俺と友達になってほしい」
「俺たちでいいなら、ぜひよろしくお願いします」
アルトの話を聞きエイトが答える。
「ありがとう、ならまずその堅苦しい感じは無しな?それと名前も呼び捨てでいい、入学すれば同級生になるわけだしな」
「あ、わかった」
アルトの発言に対しアカネが固くなっていることに気づき答える。
「アルト様、そろそろ行かないと試験に間に合わないかと」
アルトの護衛の一人のカイが声をかける。
「おっそうだな、行こうか」
「そうだね」
アルトの言葉に僕は答え、皆と一緒に大講堂に向かった。