第五話「入学試験前夜」
辺りは暗くなり、僕たちは夕食を食べるためエイトのお父さんの家の食堂に集まりそれぞれ自分の分のご飯のおかれている席の椅子に座っていた。
「よし、全員そろったことだし食べようか。それじゃあみんな、手を合わせて」
エイトのお父さんが全員そろったことを確認しご飯を食べるよう促す。僕たちはエイトのお父さんの促しに従うように手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます」
エイトのお父さんが言った後に続くように僕たちも手を合わせた状態でいただきますと言うと晩御飯を食べ始める。今日の晩御飯は鶏肉と野菜のシチューと鶏肉に甘辛のたれを付けて焼いたお肉とバゲット。
「なあ、父さん。今日言ってたSだのAだのって何なんだ?」
食事の合間にエイトがお父さんに問いかける。
「そうだな、話しておこうか。王都の騎士にはその魔術の出来やレベルによってランク分けがされているんだ。SランクからDランクまで存在する。お前たちが試験を受ける魔術学園でもそのランクがそのまま適用されているんだ」
エイトのお父さんの説明を聞き僕たちは今日のエイトのお父さんと衛兵の会話を思い返した。
―「この子たちはめちゃくちゃ優秀だからな!みんなランクA、いや、Sで入学できるんじゃないかな!」
エイトのお父さんが言っていた発言を僕たちは動揺した。
「僕たちが、一番高いSランクで入学できるってことですか?今の僕たちにそこまでの実力があるとは思えないんですけど」
エイトのお父さんが説明したことに対し僕はこの国での騎士の強さがどのくらいなのかはわからないが今の自分たち、特に自分にはこの国でSランクの実力があるとは思えない僕はエイトのお父さんに自分の感じた疑問を問いかける。
「お前たちの魔術の実力は同年代やお前たちが入学する年代では頭一つ抜けていると俺は思っている。この俺が修行を付けたってこともあるが、お前達にはやっぱり才能があるし、魔術の発想力にも長けている。そんなお前達だからこそ俺は入学もできるし何よりSランクも取れると俺は思っている」
エイトのお父さんに褒めてもらえた僕たちは動揺を隠せずにいた。そんな中一つ疑問に思ったコハルがエイトのお父さんに問いかける。
「このランクって初めに付けられたランクのまま変わったりすることはないんですか?」
「いや、このランクはあくまでその時点での魔術のレベルで付けられる。その後の訓練や頑張りによってランクが上がるんだ。だが、今の実力に満足して訓練をしなかったり努力を惜しんだ奴はランクを下げられる」
コハルの質問の返答を聞いて僕たちは再び努力をし続けることを胸に誓った。
「はーい、そのランクが上がったり下がったりするのっていつ付けられるんですか?」
アカネがランクについて新たに質問をする。
「ランクは年に二回、ランク格付け試験というものが行われる。これには魔術学園の生徒はもちろん王都にいる騎士やこの国を守るため各地にいる騎士、冒険家として旅をしている人、基本的に数日に分けてほぼ全員が受けることになる」
エイトのお父さんがアカネの質問に答える。
「とりあえず、ご飯を食べて、今日は早く寝て明日に備えろ」
エイトのお父さんが質問に答えた後続けるように話した。
その後、僕たちは話をしながら晩御飯を食べ続け数分後に晩御飯を食べ終えた僕たちは全員で手を合わせる。
「ごちそうさまでした」
「よし、それじゃあ各々、自分の部屋に戻って明日の準備をして今日は早く寝るように」
そう言うとエイトのお父さんは自席より立ち上がり食堂を後にした。
「じゃあ、俺たちも部屋に戻るか」
「そうだね」
エイトの言葉にコハルが答えると僕たちも席より立ち上がり食堂を後にした。二階に上がった僕たちは自室に入る前に少し話をした。
「明日は頑張ろう!絶対全員で合格しよう!」
「おう!お前ら、緊張しすぎて夜眠れなかったりするなよ!」
僕の言葉にエイトが答えながら言葉を続けた。
「緊張で眠れなくなるとしたら、コハルくらいじゃない?」
エイトの言葉に少し笑みを浮かべコハルを見ながらアカネが答える。
「え、なんで私なの?」
コハルがなぜ自分なのかわからず頭に?を浮かべながら答える。それに続けるように僕とエイトも少し笑いながら答える。
「確かにな!ユウはこう見えて肝が据わってる感じだし、緊張するとしたらコハルだけだな」
「コハルはこう見えてとても緊張しいもんね」
「そ、そんなことないし、大丈夫だし」
僕たちの発言に少し焦りつつもすねたようにそっぽを向きながら答える。そんなコハルを見て僕たちは笑う。
「それじゃあ、そろそろ寝ようか」
「そうだな、それじゃおやすみ」
僕の発言にエイトが答えながら自室に入る動作をする。
「うん、おやすみ」
「おやすみ~」
コハルとアカネも答えながら自室のドアを開ける。
「おやすみ」
僕もそう答え自室のドアを開け、各々自室に入った。自室に入った僕は明日の準備をし、必要なものをリュックにしまうと僕は寝間着に着替え布団に入った。
翌朝、少し早くに目が覚めた僕は少し体を動かすため木刀を持ってまだ日が昇りきっておらず少し霧の出ている庭に向かった。庭に出ると体の大きい人が少し大きめの木刀を振っていた。大柄の人が僕に気づき声をかけてくる。
「おお、ユウか。早いな」
「エイトのお父さん、おはようございます。ちょっと早くに目が覚めちゃって」
エイトのお父さんの言葉に少し笑いながら答える。
「本当は少し相手をしてやりたいところだが、入学試験当日だからケガさせてもいけないからな。木刀を振るのもほどほどにしとけよ」
「はい。わかりました」
エイトのお父さんが少し笑いながらそう言うと僕もそれに答える。
「それじゃ、俺は行くな。ご飯を食べ終わったらじいが馬車で会場に連れて行ってくれるようになってるから。俺は騎士団に行かないといけないんでな!今日は頑張れよ!」
「はい!」
そう言うとエイトのお父さんは家の中に入っていった。その後僕は少し汗をかく程度木刀を振り、お風呂で汗を流して今日の服に着替えると僕は朝食を取るため食堂に向かった。
「みんな、おはよ!」
「おはよ~」
僕は席についてい話をしている三人に挨拶をした。僕の挨拶に三人も答える。
「早くに起きたみたいだけど、何してたんだ?」
エイトが僕に聞いてくる。
「ちょっと庭で木刀ををね、振ってたんだけど…って、コハル!どうしたのその顔!」
話している途中コハルの顔を見て僕は驚いた。コハルは髪などは整えているものの両目の下にすごいクマができていた。
「聞けよユウ!コハルのやつ、結局緊張してあんまり寝れなかったんだとよ」
僕の質問にエイトが笑いながら答える。
「コハル、大丈夫?」
アカネが心配そうにコハルに聞く。
「大丈夫…」
即し眠そうにしながらコハルが答える。
「「とりあえず、食べるか!ご飯食べればコハルも少しは元気になるだろ」
そう言うとエイトは手を合わせるように促しみんなで朝食を食べ、食べ終わるとそれぞれの部屋に今日の荷物を取りに行き荷物を持った僕たちは玄関で馬車の準備をして待っている執事のおじさんのもとに向かった。
「皆様、準備はよろしいですかな?」
「はい!」
執事のおじさんが僕たちに問いかけると僕たちは声を揃え答える。
「それでは、向かいましょう」
執事のおじさんがそう言うと僕たちは馬車に乗り込み家を後にするのだった。