第四話「王都」
僕たちはエイトのお父さんが用意した馬車に乗り王都を目指していた。
「王都までもう少しだからな!」
馬車の運転をしているエイトのお父さんが馬車の中にいる僕たちに向けて話しかける。
「王都ってどんなところなんだろう」
王都に行ったことのない僕たちの中でもアカネが一番興奮をしておりワクワクを抑えられずにいた。
「アカネ、俺たちは王立魔術学園に入学するために試験を受けに来たんだぞ、これから俺たちの夢への第一歩なんだからな?」
「わかってるよ、みんなで合格するんだから!」
エイトの言葉に少しふくれながらアカネが答える。
「楽しみなのは僕も一緒だよ!王都もそうだけど入学試験にどんな人がいるのかも楽しみだなあ、コハルはどう思う?」
ワクワクしていた僕もアカネに乗っかるように答える。
「私も楽しみだよ」
少し笑顔を浮かべたコハルが答える。
(コハル、あの戦い以降なんかあまり元気がないんだよな。大丈夫かな)
最近のコハルの様子が気になりながらも四人で楽しく話をしていた時、馬車の運転をしていたエイトのお父さんが声をかける。
「おい!王都が見えてきたぞ!」
「え!」
その発言を聞きみんなで馬車の荷車のカーテンを広げ王都の見える方角を見る。そこには塀に囲われていたが塀の後ろには塀より大きな建物がたくさんあり、中でも王都の中心部にあるこの国の王が住んでいる王城はほかの建物に比べると遥かに大きい。
「凄いな、これが王都か」
大きくとてもきれいな王都を見た僕たちはあまりのきれいさに言葉を失っていた。
僕たちは王都に見とれているとエイトのお父さんが声をかける。
「あの門を通ったら王都に入るからな!」
エイトのお父さんがそう言うと馬車の前方に大きな門が見えてきた。少しずつ門に近づくにつれ門の前に立っている二人の衛兵が見えてきた。門の入り口に着くと衛兵が声をかけてきた。
「止まれ!何をしに王都に来た」
衛兵が少し声をはりエイトのお父さんに向かって問いかける。
「お疲れさん。俺だよ!今日は息子とその友達たちが魔術学園の入学するために試験を受けに来たんだよ」
「き、騎士長様!これは失礼しました。」
馬車の運転手が騎士長であるエイトのお父さんだと気づいた衛兵がエイトのお父さんに対し敬礼する。衛兵の敬礼に対しエイトのお父さんも敬礼をする。その様子を見ていた僕たちは憧れのまなざしを向ける。
「こちらが息子さんとそのお友達ですか」
「そう、こいつが俺の息子のエイト、こっちがユウでアカネとコハルだ」
衛兵の問いかけに対しエイトのお父さんがエイトを紹介した後に僕たち一人一人を紹介した。
「この子たちはめちゃくちゃ優秀だからな!みんなランクA、いや、Sで入学できるんじゃないかな!」
エイトのお父さんの言ったランクという言葉に僕たちは聞き覚えがなく疑問な表情を浮かべた。僕たちを気にせず衛兵が答える。
「それは、これからが楽しみですね!あっ時間をかけてしまい申し訳ありません。どうぞ、お通りください。入学試験頑張ってください!」
そう言うと衛兵は門を開ける。
「おう!ありがとよ」
そう答えたエイトのお父さんは馬車を進め王都に入る。敬礼をしている衛兵を見て僕たちは軽く会釈をして答える。
王都に入った馬車は城下町をゆっくりと進んでいく。
「なあ父さん、さっき衛兵の人と話してたランクって何なんだ?」
僕たちがさっき疑問に思ったことに対してエイトがお父さんに質問する。
「ああ、そういえば話してなかったな。まあ、入学すりゃあわかる」
エイトの質問に対しお父さんは濁したように答え、つなげるように話す。
「入学試験は明日、今日は俺の家でゆっくりして疲れを取って明日の試験に臨むといい」
そう答えながら馬車を進める。辺りは夕暮れになり少しずつ暗くなり始めていた。城下町を少し抜けるとたくさんの家が立ち並ぶ通りに出た。その先にある貴族でも暮らしているのではないかと思うくらい大きな家の前でエイトのお父さんが馬車を止める。
「着いたぞ、ここが俺の家だ」
「え、ここが父さんの家なの?」
とても大きな家を見た僕たちはあまりの豪華さに再び言葉を失う。
そんな僕たちをよそ見にエイトのお父さんは玄関に向かい戸を開ける。するとそこには執事やメイド、料理人が列になった状態で主であるエイトのお父さんと僕たちに対し
「おかえりなさいませ。騎士様。そしてご子息とご友人様」
それを見た僕たちは開いた口がふさがらない様子で家の中に入る。
「おう!今日から数日息子たちは寮に入るまではここに泊まるからよろしく頼むな」
「はい。かしこまりました。」
エイトのお父さんの言葉に対し年を重ね白いひげの生えた執事が答え続けて僕たちに話しかける。
「本日は長旅でお疲れになられたでしょう。今日はゆっくりお休みください。お部屋にお連れしましょう。どうぞこちらへ。」
執事のおじさんが話しかけた後右手を家の中へ誘導するように動かす。
「あっはい、お願いします」
エイトが答えると僕たちは困惑したまま執事の誘導に従い家の二階に上がった。各々自分の部屋に着き持っていた荷物を置いた。すると執事が
「これから少し休まれた後ご夕食をご用意いたしますので準備が整い次第お迎えに上がります」
そう言うと執事は階段の方に向かい一階へと降りて行った。
「お言葉に甘えて僕たちも少しゆっくりしようか」
「そうね、いろいろありすぎてちょっと疲れたもんね」
僕がそう切り出すとコハルも少し休みたいと切り出した。
「そうだね、ご飯まで少し休も」
アカネがそう答えると僕たちはそれぞれの部屋に入った。僕は荷物の中から服を取り出しきれいな服に着替えると僕はベッドに横になった。
(はあ、なんか驚愕なことばっかだったなあ、明日はいよいよ入学試験って考えると緊張するなあ)
コンコンッ
「ユウ様、夕ご飯の準備ができました」
執事の人が部屋のドアをノックした後ご飯ができたことを伝えに来た。僕は考え事をしているうちに眠ってしまっており執事の人の声で目が覚めた。部屋の中は真っ暗で窓の外を見ると窓の外も暗くなりすっかり夜になっていた。
「ユウ様、何かございましたか?」
返事のない僕に対し執事が問いかける。
「あっすいません、すぐ行きます」
僕はベッドから飛び起き部屋のドアを開け執事と共に食堂に向かった。そこには豪華な料理がテーブルの上に並んでおりそれぞれのご飯の前にエイトのお父さんのをはじめエイトたちもそれぞれ椅子に腰かけていた。
「よおユウ、遅かったな」
僕を見るとエイトが僕に声をかける。
「ちょっと寝ちゃってたんだ。ハハハ」
僕は少し笑いながら答え、自分の食事のある席に座った。今日疑問に思ったことについてエイトのお父さんが色々話してくれるのかなと考える僕たちであった。