涙は亡き者へ
涙を浮かべて屈折した視線は
私を見ることなくどこかへ行った
余りにも陽気過ぎる音楽が
涙を拭こう拭こうとはしているが
誰とも目を合わせられない瞳は
死者を見つめているようだった
帰らないことを理解できない子ども
重すぎる空気と幻のはずの煤の匂いを
子どもに耐えろとは言えなかった
私が祖父を亡くした時にはどうだっただろう
目の前の子のように泣けただろうか
酒の匂いで気持ち悪くなっただけ
居ない人の話で盛り上がるのが
どうにも気持ち悪くて仕方がなかった
大人になって理解はできても
子どものように泣けはしない