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新星  作者: 煌煌
第二話 予言者
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予言者

「そもそも、なぜ連合内の公用語が英語から日本語に変わったか。説明できる者は?」


 錬一は席を立つと机の前に位置取る。普段より主張を増した重力の中で、彼の問い掛けに答えようと舞だけが手を上げた。


「日本から提供されたスタンダードフレームのデータ。その中の言語が日本語であり、他の言葉に置き換えることは不可能であった。と聞かされました」


 彼女の答えは正解。錬一が嬉しげな顔を見せると、周囲の空気は少し軽くなる。


「だが、それは表向きの話だ」




 シンセイ内のデータは人の言葉に置換する場合。日本語でしか翻訳できないよう作られてある。操縦時に用いるのも同様。だから、パイロットを始め、全ての連合軍人は日本語に慣れる必要があった。

 荒唐無稽に思える錬一の説明。けれど今、彼に疑いの眼差しを向ける者はいない。


「沖縄基地に配備されたシンライ。最初期のシンイ。全てはシンセイから始まったのだ」




 シンセイの機体データそのものを、錬一は今日(こんにち)まで世に出しはしなかった。シンライの姿が似ているのは、人の手で人を護りたいと願う、開発者としての彼の努力の証。彼女を渡された時の約束も胸にあったのだろうが。




「この家に来たからには、選ばれた諸君には知る必要がある。この先どうすべきか、彼女に答えを貰うとしよう」


 話し終えた錬一が指すのは出口の扉。博士が開いた道へ、颯爽とした足取りで進む彼。真珠の手招きで、全員が立ち上がり続く。

 皆が進むのは、真珠たちが通った道。地下の格納庫へと続く道である。


「今からは少し冷えるわ。切り替えてね」


 弥生と繋いだ手を放し、真珠が指で叩いたのは心臓。全員が頷いたことを確認すると、元の場所へと手を戻した。




「確かに少し冷えるな。みんな大丈夫か?」


 冷たい地の底でも、部下に気遣いの言葉を掛けたゲイルへと、女性らは首を縦に振る。僅かに暖まった空気と共に、一行は輸送機の元へ到着。降りた時に真珠が動かしていないため、シンセイは中で片膝を突いたまま。

 すると錬一は純白の機体に手を置いた。




(生存者の中に、軍人とは別の者がいます。彼らはこの家に招いて良かったのですか?)


 機体に響く落ち着いた男性の声。彼の想いを感じ取ったシンセイが、金色の光を放つ。凍てつく風が周囲を駆け巡り、不浄なモノを消し去っていく。

 輝きは他の人にも視えているようで、真珠と博士以外は目を丸くしている。


「あの子が嬉しそうに笑えている。それは、私たちにとっても幸せなことだ」


 錬一に向けられた、透き通っていて安心感のある女性の声。聞き終えた彼が手を離す。すると、元の色を取り戻していく白の騎士。




「スッゴイねぇ! ピッカピカだったねぇ」


 真珠を見る時のような煌めきを紫に灯し、弥生は白の騎士に吠えた。彼女の横では光悦も興奮を隠し切れぬ様子。


「親父さんがやったのか? 金色に光らせる超能力か何かか?」


 彼の問いを錬一は否定。だが、先程までの威圧感はもうない。年齢にはそぐわない、弾ける笑顔を若者へと向けた。


「改めて、我が家へようこそ」




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