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新星  作者: 煌煌
第二話 予言者
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開発者

 ヘリから降りた四人の前には、地下基地の格納庫。屋敷があった方向へと進む真珠に、兄妹も続く。地面をくり貫いて作ったような施設内は岩肌が剥き出しであるものの、途方もなく広い。明るく照らされた温かみのない設備の中。弥生が真珠の右手を掴む。




 当然、迷うことなく目的地に着いた一行。壁面に備え付けられた近代的なエレベーターの呼び出しボタンを押した真珠。右手の先へ視線を落とし、優しく微笑む。


「お家の中は暖かいからね」


 少女が嬉しげに返事をした後ろでは、二人の男が体を震わせていた。


「おっさん。勝手に乗り込んで悪かった」


 紫の瞳だけを揺れる白髭に向けた少年。目に映る老人の固さに変化はなく、彼らの間に冷気だけが走る。視線を戻そうとした時。


「ワシも悪かった。仕事をしただけだと理解してもらえたら助かる」


 少年からは小さな返事。温かな空気に溶け込み、老人に届いたかは分からない。だが、博士の揺れる髭は定位置より上に収まった。




 屋敷内は深い緋色の壁で彩られ、外の寒さを忘れさせる。自室に荷物を置いた連合軍の五人。今は応接室にて待たされていた。

 鮮やかな宝石で飾られた椅子は彼らの重みに合わせて沈み、心地よい時間をもたらす。


「天国みたいですねぇ」


 蕩けた顔でうわ言を放った舞。見つめる先には、真剣な面持ちで扉を警戒するゲイルの姿。彼女の天国とは一体。




 勢いよく開かれた扉。女性陣もゲイル同様の表情を作る。しかし、彼らが見たのは真珠たち。待ち人とはまた異なる存在だった。


「大佐のお父上との面通しだと聞いているのですが、いつ頃来られるのでしょう?」


 ゲイルの問いかけに真珠は目線を動かす。止まった先は部屋の奥。大きな机の前にある椅子。すると同時に人の気配。


「出入り口って、その扉だけですよね?」


 舞の小声にゲイルと真珠が頷く。警戒したままだったハズの彼は驚き、部屋の入り口に立つ真珠は呆れ顔。全員の反応を余所に、件の人物は口を開く。


「別に驚かそうというワケではないのだけどね。ちょっとした手品だよ」


 心地よい低音の響き。回転式の椅子が動くと、足の上に猫を乗せた人物が姿を現す。




「ようこそ我が家へ」


 黒髪は短く整えられ、日本人離れした彫りの深い顔。大人の色気を纏う男性は、登場と共に全員の意識を掌握した模様。娘以外は。


予言者様(せんせい)。皆さん驚かれています」


 呆れ顔を崩さない真珠から刺すような声。なのに気にも留めない様子の彼。落ち着きのある音色と言葉選びに隠されてはいるが、初対面の七人は潰されそうな様相。タハダの額には尋常ではない量の汗が流れる。


「改めまして、俺が龍神錬一(りゅうじんれんいち)。真珠の父で、連合では少将だよ」


 龍神家の人々は遠い昔より不思議な力を用いて日本を守ってきた。しかし時代の表舞台に立ったのは錬一が初めて。




 今より十八年前。人工知能や遠隔での操縦が念頭に置かれた、連合の人型機動兵器開発は失敗続きであった。解決策の見出だせない彼らに、錬一はシンセイのコックピット周りのデータを提供。ボディ自体に問題はなく、パイロットが乗るだけで状況は一転。戦闘も難なくこなす最強の兵士が誕生したのだ。




 偉業を成した錬一。だが、ある事情により誰からも知られることなく終わる。彼のもう一つの、いや、唯一無二の使命のために。




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