継承
皓々たる世界には少女の影のみ。シンセイさえ必要なく、目の前にある真珠。
才能とは己の力で創り出すもの。更に強いものが継承。親や仲間たちなど、彼女を想う他者がいたからこそ辿り着けた極致。だが、自分を捨てて立ち向かった真珠だからこそ。
だから、嘘を教えるのは嫌なのだ。今回は言い訳もない。僕のワガママ。
「最高の技術を用いたパワードスーツの効果ということにしておこう。嘘ではないしな」
窮地を救うのは、いつも僕の女神。パールの知恵をありがたく借りておくとしよう。
「仲間を置いてどこかには行けないさ。まだやるべきことはたくさんあるんだから」
僕の返答で世界の色が変わる。神覚を通すことで見えるのは紅。輝きを抑える力強さ。そして、温かさも感じられる彼女の心の光。
誰にも知られないのが残念なほど激しく、生まれたばかりだからこその儚さも持つ。
「その言葉に嘘はないんですね。ついさっきまでは感じ取れなかったのに」
時の限りを取り払った、二人だけの空間。何にも縛られることはない。
「だったら困らせるような質問はしません」
ゆったりと間を置き、続けた真珠。今も、僕が遮るのを待っているかのよう。
「だから、一緒に帰りましょう。皆の所へ」
伸ばされた手を取る。時の歩みを許すと、周囲は白く弾けた。
彼女の導くまま龍神家の地下基地へ転移。再び動き出した人々による出迎え。メイドらに混ざって光悦や舞たちの姿。近くにいないのはゲイルと博士、そして龍神夫妻。
総出とも思える活気から離れた地点にも、数人の気配がある。おそらくは敵のエースを見張っているのだろう。でなければ、真珠の帰還を彼らが見逃す道理がない。
「弥生も使ってたけど、生身でなんかできやしないんだと。やっぱ特別なんだな、お前」
光悦は照れくさそうに後頭部に手を回す。なのに、真珠へと真っ直ぐに向かう視線。
対する彼女は、心も体も逸らすことなく、真っ向から受け取った。
「ありがとう。あの子がいるからこそ、辿り着けたんだけどね。それにみんなも」
真珠自身、正しく変化を捉えている様子。さすがに血筋までは知らないのだとしても。
「獅子崎くん。捕らえた敵兵は無事かい?」
上方から聞こえる轟音に構わず、仲間たちは勝利ムード。水を差すのも気が引けるが、急ぐ理由がある。警戒を怠れない訳は、二人の身体に宿る秘密だけではない。
相手は曲がり形にも神。本来ならば、姿を現さずとも人の命を摘み取ることは可能。
「はい。今はゲイル中佐と中将たちが様子を見てます。まだ気は失ってましたけど」
人の温もりを感じる方向を指す光悦。特に表情に変化はなく、嬉しげなまま。
感謝を述べた僕は基地の奥へ歩を進めた。当然のように真珠が続き、他の人たちも彼女を先頭に列をなす。姿がないのは、舞と紫音を含めた通信担当のみ。
今から聞くことになる内容は、大切ながら酷なものだろう。厄介な指示に奔走する彼女たちは、果たして幸か不幸か。神のみぞ知るといったところ。
いや、僕と彼女も知りはしないのだけど。
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