超越
進化とはあくまでも人の身に起こるもの。真珠が遂げたのは、種族を飛び超える神化。
当然、今の真珠と僕に爆発程度でダメージを与えることはできない。なら奴の狙いは、戦域内にいる他の人間たち。敵のエース諸共に消し去るつもりなのだろう。
神の力を持つ者に効果はなくとも、星ごと吹き飛ばせるような威力さえなくとも、半径十キロメートルは跡形もなくなるエネルギー量。何もせず見ている訳にはいかない。
迷う暇はなく、イメージを込める。自爆で消えていいのは本人のみ。なら先程の異空間へ飛ばすのは悪手。下手すれば一発アウト。真珠が攻撃を止めた意味もない。
「なぜ爆発がゆっくりと広がっているの?」
戸惑う声に振り向く。動きを緩めた時の中にあって、シンセイから迸る闘気。紅の神覚は僕のモノと似ているが、別物だと分かる。絶対の存在であればこそ、欺けるはず。
状況を打破するための輝き。今もだけど、世界そのものを救うための希望。
「龍神大佐。今は人命の救助を最優先に」
何も説明しなければ。極限の興奮状態と、鍛え上げた身体による相乗効果。などと思うのだろう。僕が動いていることにも、一応の納得はいくはず。完全な間違いでもないし。
紅が流れ、五人を連れてシンセイは離脱。彼女の判断に僕は含まれなかったらしい。
「自爆だとしても、消えれば厄介なことにもなりかねない。ならば」
付近に他の者がいない今。込めるイメージも別のものに変えられる。爆発の中へと霧散してゆく神の息吹。彼女を形成していた時間に戻し、力を奪う。逆行と書き換え。
想像剣を振ると、白くぼやけた空間へ人間サイズの神が再臨。記憶も有しているのか、目一杯の不満顔を見せた。合点がいかないのだと伝わるが、彼女にできることは以上。
僕の身体には神覚が巡らせてある。既に火を入れた状態では、他に動けるものなど存在しない。目覚めたばかりの真珠も、龍神家で固まっていることだろう。
右上から左下へ袈裟斬り。ダメージはなく力を吸うのみ。そして先程と同じ動作。人と何も変わらない体となった神が消し炭となる前に、別世界へと押し込み、閉じる。
「勝った程度で気を抜くな」
純白の世界から響く怨嗟の声は、神だった人々によるもの。一つ二つではない轟き。
生身で大爆発から傷一つなく生還。などとなれば、誰にだってヒトではないとバレる。いっそ行方を晦ませて、影ながら手助けを。違う。彼女との約束を反故にするものか。
「ちゃんと待っててくれたんですね」
終焉を告げるような白い光の中。背中から聞こえた紅の声。下手をすれば、今の神より手強い相手。彼女に伝えられる言葉を、僕はまだ思い付いてはいない。
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