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新星  作者: 煌煌
第十五話 神化
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異変

 再び目にした北海道の大地。実際は龍神家の庭だが、真珠たちと逃走中の敵による戦いで、至る所に亀裂が走っている。屋敷に甚大な被害がないのは不幸中の幸いだろうか。

 神が起こしたものは鎮めたが、弥生たちが作り出した現象までは処理できない。自然の形を変えたものだとしても、既に人々の記憶に刻まれたものなのだから。


「四人とも、探査区域までは相当な距離ですし、近くまでシンライで飛びませんか?」


 ゲイルの提案に反対する理由はない。真珠ならば走っても問題ないとしても、今は弥生もいる。敵の伸びている地点も知っているのだから、彼女を疲れさせるのは無意味。


「あぁ。レーダーには気を配っていてくれ。あとは三人とも、可能な範囲で目視を頼む」




 壊された自然は不自然を生み、誰も違和感を止めることはできない様子。本来なら夕陽に照らされた美しい景観も、薙ぎ倒された木や地を這うヒビを染め上げるのみ。


「本当の景色もいつかは見てみたいものだ」


 ただの呟き。パールに向けた訳でもなく、誰に聞かせるものでもない。


「勝ったあとには復興もされます。だから、その時を楽しみにしていてください」


 いつになるか分からない目標。僕が皆と共にいられる訳のない時間。確かな返事をするには、魅力的なものだった。だから、力なく頷くのみ。例え隣にはいられないとしても。




 もうすぐ二人が待つ地点。シンライを降り徒歩で向かう。ゲイルは腰にマウントさせていた小銃を持つ。先の状況を知らない四人は警戒を強めた様子。僕も念は入れておく。

 乾いた大地を踏み締めるように進む。一歩ずつ周囲を見渡し、物陰にも注意。

 まだ距離はある。言えたなら必要ない動作なのだけれど、世界のためには大切なこと。




 突如、風の中に刺激臭。運ばれて来たのではなく、明確な意思を持つ。


「敵が近くにいる。物音に注意を」


 鼻を刺す臭いは周囲に溶け込んで、出所を隠す。接近するでも遠ざかるでもなく、僕らの様子を窺っているらしい。動きがなくともレーダーには捉えられるハズなのだけれど。

 まさかワザと臭いを擦り付けて逃げたか。などと過った瞬間。


「隙だらけだぞシンセイの!」


 声がしたのは足下。硬い地面があるだけ。なのに震える空気と弥生の体。


「シンライに向けて飛べ」


 僕の声に従い、獅子崎兄妹は後方へ跳躍。肝心の真珠は、身動きさえしない。

 彼女の前にある亀裂が入った地面。物音を立てることもなく盛り上がると、隙間からは鋭い爪が突き出した。依然として真珠に動く様子はない。

 怯えたり、足が竦むようなタイプではないハズだが。


「龍神大佐。下がれ!」


 地面から覗く五本の指。手。徐々に露わになる敵の姿。人の目には一瞬の出来事なのであろうが、神覚を使わずとも僕にはゆっくりと映る。身動きをしない真珠も。

 敵が攻撃する前に叩くべきか? なぜ真珠は動かない。流れる光景に思考が鈍る。


「まさか動けもしないとはなァ」


 飛び出たのは豹を思わせる風貌をした女。声からすると、ディアナのパイロット。


「ビビってるんなら好都合さ。生身の必殺技であの世に送ってやる。双鋭(ダブルエッ)


 やたらに長い滞空時間。戦闘中に無意味な技名の披露。真珠を狙うこと以外にも、倒す理由ができた。


「バカにするなぁっ!」


 怒りが全面に表れ、彼女らしからぬ冷静さを欠いた声は、敵の背後から注ぐ。

 もう一人も起きているのは明らか。当然のように同じ穴から顔を出した狼男。彼は空を見上げたが、飛ぶことは叶わない。僕だって何もしない訳にはいかないのだから。


「ぐェ」


 間の抜けた音が天と地から漏れた。




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