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新星  作者: 煌煌
第十五話 神化
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信頼

「敵エース捜索中の各員は速やかに基地へと帰還してください。繰り返します」


 先ほどの決意通り。できることを誰よりも早く始めたのは舞。次にゲイルが動く。

 蒼い瞳で舞を捉えながらシンライに近寄る彼。艶やかな黒髪が振り向くと、言葉もなく重ねた視線のみが思いを運ぶ。何を伝えたかまでは分からない。

 しかし、二人が帯びる熱は確かに増した。




「少将さん。俺はまだ分かるけど、弥生まで連れてくのは違うんじゃねぇか?」


 コックピットへ昇ろうとしているゲイルを見ていると、僕の真横で響いた光悦の怒声。視線を移すと、彼の後ろには先を越されたと言わんばかりの顔をした真珠。


「残念ながら、弥生くんもすでに当事者だ。状況や人の思惑によるものだとしても、ね。だからこそ、真実を知る権利も必要もある。あとは僕らが守りながら、前に進めばいい」


 落ち着いて光悦と目を合わせ伝えた。だとしても、彼の心を癒すのは僕ではない。


「兄ちゃん私なら大丈夫だよ。怒ってくれるのは嬉しいけど、本当のことが知りたいよ」


 少女の言葉には、彼女自身が求める真実がある。場を繕う優しさでは出し得ぬ説得力。光悦の怒りを鎮めるには充分だったらしく、深い呼吸の後、口は真一文字に結ばれた。




 決して完全な理解を得られたとは言えないものの、捜索メンバーを含む全ての人員が、自分の役目を果たせる配置へと就いている。想定よりも早く動けるのは良いのだが、現状の深刻さを誰もが把握しているということ。失敗するつもりはないが、誤ると命取り。

 ゲイルが乗り込んだシンライを手招く。


鳥黐(とりもち)を装備してくれ。あとは近接武器を」


 指示通り彼が手にしたのは、小銃から餅のように粘着性の高い物質を放つ装備。捕獲用のため威力はないに等しく、今回には打ってつけ。近接用の長剣も携えた彼。


「では行こうか」


 見送る全員が敬礼。目は口ほどに物を言うとはよく言ったもの。不満を覗かせる者まではいなくとも、現時点で信用してくれているのは、龍神夫婦と博士くらいだろう。


「手並みを見せていただきます。仲間の信頼を勝ち取るためには、一番の方法ですから」


 小走りで僕の横へと躍り出た真珠。姿勢を低くし、上目遣い。誰から学んだのかは不明なのだが、少なくとも相手を間違えている。と、同時に他の男ではなくて良かった。

 耐性がなければ即死レベルだろうから。


「あぁ。モチロンだよ。けど、キミにも期待してるからね。背中は頼む」




 連合が本格的に活動を開始する以前には、指揮官は戦地から離れた安全な司令室にいることが多かった。もしくは、勝利を確信した場合のみ、愉悦に浸ろうと足を運ぶ者など。

 しかし、ミストは反対に前線に拘り続け、兵たちを鼓舞し導き、他の将校らが放つ嫌味にも屈しなかったのである。だからこそ彼は若い士官にも憧れられる存在となれた。

 だが、最大の報酬は地位や名誉ではない。自分自身の命。上海の悪夢から外れた理由。




 僕はミストの方針に賛成している。指揮を執るのなら、仲間の痛みを知らなければ。

 彼の思想は、道理にかなうもの。そして、今の僕にとっては、根っこの部分を貫き通すために大切なこと。パールと交わした誓いを守るという、ただ一つの目的を。




 天井の扉が開く。隙間から漏れ入る光に、薄くオレンジに染まる岩壁。屋敷に繋がる物とは別の、地上直通エレベーターでの移動。シンライも乗り込めるほどに大きな機械が、新たな仲間の信頼を得るための出発点。




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