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新星  作者: 煌煌
第十四話 合一
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合一

「弥生ちゃん! おかえりなさい!」


 今日一番の輝きを見せた真珠。兄妹の元へたどり着くと、二人に抱きついた。今の彼女には他のことなど念頭にないだろう。安堵が全面に出た空気。僅かに残る緊張も解れる。




 帰還を祝う言葉。弥生の感謝。何度も見たはずの温かみ。真珠が間に入ったからだろうか、光悦からはぎこちなさが取れ、いつもと変わらないような時が流れた。


「お姉ちゃんも兄ちゃんも、体のこととか、聞かないんだね」


 真珠が合流して五分ほど。ずっと嬉しげに彼女と兄の目を見て話していた弥生が、視線を外す。気遣われるのが嫌だとか、年相応の我儘を言うつもりではない様子。


「二人とも何があったかは気になるよね?」


 弥生から漂うものも、光悦たちの心が放つものと同質の匂い。すっかり大人びた少女の問いに、彼女の両隣で縦に振られる首。もう一度、重なる視線。




「マルスの前のパイロットは、一回の出撃で渇れたんだって。何かを代償に願いを叶えるマシン。それが天使たち。私の場合は若さを糧に、真珠お姉ちゃんみたいなりたいって」


 真珠の目を見てゆっくり話す弥生。急激な成長の理由は判った。天使と呼ばれる悪魔の動力源も。だとすると、今後もマルスを戦力に数える訳にはいかないが。


「嬉しいというより、照れるわね。だけど、超能力みたいな戦闘能力も、弥生ちゃんから取り出したエネルギーをもとにしてるの?」


 僕が聞きたい内容。代弁するかのような、真珠の問い掛け。柔らかな声色で、弥生の顔が曇ることはない。むしろ以前と変わらない態度に、少女は嬉しげ。


「ううん! 前の人はできなかったらしいんだけど、私は相性が良いんだって。だから、動かすのに特別なことは必要ないの。四体はそのために何か調整したらしいんだけど」


 両手を豊満な胸の前で握ると、小さく上下させながら嬉々とした表情で話す弥生。


「弥生ちゃんは特別だったのね」


 真珠の返事は、おそらくは少女が掛けられたいと思っていたもの。大きく頷く弥生。




「でも私が無事なのは。タハダのお姉ちゃんが助けてくれたからだと思う」


 思いがけない人物の登場に、真珠と光悦は驚きを隠せない。顔を上げた弥生は、タハダの末路を思っているのか、年不相応に複雑な笑み。まるで見た目と同じ、大人の女性。


「今日。出発の前にね。怖い感じがする装置をマルスに取り付けられそうになったの」


 基地に置かれたコンテナボックスに腰掛け話す三人。弥生の視線は、最初のように二人へ交互に向けられていたが、マルスを捉えると動きを止めた。そして、物憂げな溜め息。


「タハダのお姉ちゃんがその装置を持って、自分のに乗せてたの。犠牲になるのは、自分一人だけで十分だって言って」


 弥生は、自分が取るべき表情が分からないといった様子。次々と変わるものの中には、少女に似つかわしいものはない。真珠も言葉が見付からないようだ。




「全部が全部、悪い人じゃなかったんだな。タハダさんがやったことは、みんなが知っているんだ。今さら良い面もありましたって、伝えるのも違う。だから、せめて俺たちだけでも、例え少しだったとしたって、あの人のことを解っておこうぜ」


 一つ一つを噛みしめるように伝えたのは、光悦。考え、選び抜かれたのであろう言葉。妹よりも成熟して見え、真珠にも劣らぬ思い遣り。二人が信頼し、頷く理由だ。


「タハダさんの分まで、頑張らなきゃな」


 穏やかな空気が漂う。大切な一人が戻り、間に合ったとは言えなくとも、一つの蟠りが解けた。今の彼女らが先へと進むには充分。立ち止まる時間など、許されないのだから。




 三人より向こうから甘い香りが届く。自身の美貌により僅かでも耐性を持ち、恋敵には負けてなどいられないと、不屈の精神で立ち上がったであろう物陰にいる女性。今更ではあるかもしれないが、親友が心までは失っていなかったと知り、何を思うのだろう。



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