再会
人類誕生より遺伝子に刻まれているパールという絶対美。真珠の周りで翻筋斗を打って倒れている仲間たちが見たものは、彼女にも負けず劣らずといえる伝説たり得る可愛げ。
人が耐えるためには、徐々に慣らしていき数世紀は掛かる代物。つまりまだ早いのだ。
そろそろ別の場所で、もう一つ感動の再会が起こる時間。真珠との接触が僕とパールにとっての特別なら、彼らの場合は戦況や世界の行く末にまで影響するもの。
真珠の視線が仲間たちに向かい、僕を見るのは錬一のみ。今がチャンス。
錬一へ視線を送る。そして目だけで合図。彼の了解を得ると、体を動かすことに意識を向けた。力を使わずとも、今の僕はある程度なら想像通りに駆けられる。
神を討てるくらいには。
二人がいるとすれば、ジンセイとマルスが置かれた場所の中間。だが人の気配はない。ならば、人気のない地下基地の四隅。予想は外れ、冷たい岩肌があるだけ。
もう一度中間地点に戻ると、気配の探り方を変えてみる。聴覚を研ぎ澄ます。すると、僕へと真っ直ぐに近付く小刻みな足音。錬一にも彼女は抑えられなかったらしい。
「敵じゃないのは分かりました。だけど私は貴方からしか感じられないものの正体が知りたいんです。他に誰もいない今でも、話してはもらえないのでしょうか?」
凛とした響きなのに甘えた声。人間ならば誰も抗えない。いや、僕だからだろうか。
「僕は君の」
意識の全てを真珠へと注いだ瞬間。
「兄ちゃん!」
幼い心を残した、大人の女性の叫び。油断していた僕の耳には効果的な不意打ち。振り向くと、マルスのコックピットから降りる、澄んだ紫の瞳。
まだ弥生本人であると分かる声に、真珠が笑顔を見せた。脚に力を入れ、僕を飛び越え彼女の元へ向かおうとしている。いつもなら気遣うはず。緩んでいるからこその誤断。
行かせてやりたいとも思うが、少し早い。僕の体はイメージ通りに真珠の背後へ回り、彼女の動きと口を封じた。あくまでも優しくしたつもりだが、痛くなかっただろうか。
「ごめん。だけど今は二人にしてあげよう」
物陰に身を潜めると同時に、刺さるはずがない真珠からの冷たい視線を感じる。僕自身の判断ミスに悩む暇など与えず、ジンセイの真横にも気配。
「弥生! なんだよな?」
光悦の歯切れが悪い返答。感応空間で一度は確認していたものの、直接目にする衝撃は計り知れない。妹が自分よりも歳上の、大人の魅力を持つ女性に成長しているのだから。
「うん。やっぱり驚くと思った。けど、私は私だよ。兄ちゃん」
真珠の口を覆う左手に震え。何やら二人に掛けたい言葉がある様子。
「あぁ。見た目は変わっても弥生は弥生だ」
光悦の返事を聞いて、大人しくなる真珠。心配なのも分かるが、あと少し見守ろう。
基地の中で、人気がない場所にある兄妹。ゆっくりとお互いに歩み寄る。ぎこちなく、光悦が両手を広げ、慣れ親しんだ温もりへと駆ける弥生。
本当はもう少し二人にさせてあげたかったのだけれど。頃合いだろう。
「悪いけど、僕も聞かせてもらうね」
右手を放すと、真珠は振り返ることもなく二人へと走る。僕の正体以上に大事なものがあるというのは少し寂しい気がするけれど、比べるまでもないほどに嬉しい。




