神覚
ずっと見守ってきた錬一と彩愛の夫婦二人を始めとする、龍神家の人々との邂逅。経験を積み、頼もしく見える沖縄基地の軍人ら。そして何よりも、真珠との再会。
打ち震える心を静める。僕の言葉は内容で彼らを納得させるものではない。真珠の周りから柔らかな空気が流れているのは、きっと思いの丈が伝わったからなのだろう。
なら、後は実行するのみ。
「分かりました。これから、よろしくお願いいたします。あと、ありがとうございます」
表情を緩めた真珠に、改めて視線を送る。感謝は援護に対してなのか、問答の結果か。はたまた両方というのも有り得る。何にせよひとまず仲間として受け入れられた様子。
僕の表情を見た彼女は、いっそうに至宝を輝かせた。先ほどのやり取りの前であれば、世の男を敵に回していたことだろう。仲間の讚美を浴びながら、神前よりも伝う冷や汗。
僕からも皆への感謝を述べつつ、やはり誰もまだ見たことのない光に目が行く。笑顔だなどと半端な表現は不釣り合い。もはや別物かと思わせる、母親譲りの煌めき。
神覚を通して真珠を見守ってきた僕たち。彼女の視る現実。嗅いだにおい。癒しや刺激などを運ぶ味。仲間と語らう声、困難に抗う叫びだって聴いた。そして、触れたものから得る、優しさや痛みも覚えている。だけど、真珠の心の内までは知り得ない。
今のように真珠とやり取りができるということは、僕たち二人には自然体の特別。
神覚は天才と呼ばれる者が磨くことで得意な領域を。瞬間的に一部分のみをなど、限定されるのだがヒトが使える場合もある。閃きやら気付き、火事場の馬鹿力などと呼ばれることもあるようだ。元々、僕と彼女の願いの結晶なのだから、説明はつく。
とはいえ、本来は全てが揃ってこそ。彼女と僕が神と呼ぶための、最低限だとしても。戦闘で使おうとするなら、さらに位階を上げなければならない。
僕の場合だと、三人の師匠。頼れる仲間。そして自分より強い敵たちと鍛え上げ。最愛の存在との絆によってようやく至った境地。なのに、視界に映る真珠は。
ただ再会できただけではなく、立派に成長して、僕を超えるかもしれない彼女。
もしかしたら、嫉妬と呼べる感情が浮かぶかもしれないとも思っていた。だが、今の僕にあるのは、誇らしさのみ。誰にだって自慢できる最高の宝。掛け替えのないもう一人。
「レンと真珠は掛け替えのない、特別な存在なんだ。忘れないでくれよ」
ふと思い出したパールの言葉。きっと彼女が真珠を見ても、僕と同じ顔をするだろう。
時間にすれば数秒。真珠から溢れる空気の変化に、周囲の仲間が彼女を見やる。神覚もいらないほど、確かな温もり。僕にだけ向けられていた陽射しを、人類も認めた。
必ず守ってみせる。真珠も、彼女の大切なものたちも、今度こそ全てを。




