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新星  作者: 煌煌
第十二話 再臨
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タハダ

「必要なモノは二つ。受け入れられる肉体、地球の神を恨む心を持った生け贄。それで私の心が消えるとしても、私だった物が舞を、世界スベテを私の所まで送って来るの」


 生命体に備わった本能か。先に起きる危険を感じ取ったのであろうゲイルは、黒い物体から距離をとった。シンプウのマントは、風の流れを受けてタハダに向かい靡く。

 風だけでなく、地や水・炎。この世を構成する全てと、鉄塊に変わった悪魔たち。遠近に関係はなく、あらゆる力を飲み込む漆黒。外見にはまだ違いは表れず、感じ取るモノにしか頼れはしない。けれど。おそらく。災厄の誕生に、人類は震えを止められない様子。


「君は、本当にそれでいいのか」


 突き刺さるプレッシャー。もはや物理的な力さえ持った黒の存在。左右のレバーを強く握り、音を鳴らす歯を食いしばり。垂れようとする頭を止め、本能に抗ったゲイルの声。




「産まれた時から、このときを待っていた」


 流れ込むイメージ。ゲイルだけではなく、震える全ての者へと向かう心の欠片。タハダの記憶だろうか。狭い居間に低い机。両親と思われる皺だらけの男女。怒りを露にして、見上げる幼子へ言葉をぶつける。


「こんな世界に何の意味があるのか! お前が育ち、役目を果たせば、私たち二人だけは楽園に運んでもらえる。そのためにも、お前を一人前のエサにしないといけないんだ」


 何が気に入らないのか飛んでくる足。少女の体は跳ね上がり、見下ろした男女の歪みを捉えた。守られるべき対象。愛されるために産まれてきたはずの幼子。流れ込む記憶に、痛みに、耐えられぬ大人が倒れゆく。なのに続く地獄の光景。常識が消え、心が染まる。


「タハダちゃんはいつも一人だけど、友達が欲しくない子なんていない、よね?」


 眩しい光。黒い景色の中に差し込む灯り。艶々とした黒いおかっぱの少女が笑う。場面は切り替わり、いくつも机が並んだ場所に。心の主に注がれる黒い断片。自身との違い、親から聞いた常識との不一致。様々な理由を手に、突き刺してくる周囲。


「言葉が分からないのが悪いことなの? 私には、そのみんなの気持ちが全然分からないんだけど。これも悪いことなのかな?」


 大の字に体を開き、言葉の切っ先から守るのは、先ほどのおかっぱ頭。次第になくなる周囲の視線。成長していく幼い二人。小さな光は、黒かった命に熱をもたらした。


「最近、明るくなったわね。友達でもできたのでしょう。あなたがその子をコッチに送るのなら、一緒に楽園に連れて行きましょう」


 母に見透かされていると気づいた瞬間。上から下までを走る水。暑いのか寒いのかも分からなくなるほど混乱する身体。落ち着きを得ることも許されず、背中を打つ鞭。




 幼さを保てず、音を立てる心。光と闇に、憧れと現実に挟まれ、壊れるタハダ。


「舞は私が連れていくね。誰にも渡さない」




 最後まで耐えられたのは真珠たち三人。舞とゲイル。龍神夫婦。他の生命は意識を失いながらも涙を流した。悪人も善人もない。無条件の体感。自分以外への理解。世界中へと注がれた心の欠片は、確かな変革を生んだ。なのに、もうタハダはいない。

 後悔や憤り。立っている者が流す雫は多様な想いによるだろう。産声を上げる絶望の元に集う救世主。マルスの紫は弥生の瞳と同じ清らかさを持っており、ジンセイの茶は搭乗者の名を冠した色へと変わっている。急激な進化は、体験と共鳴の成した業。




「ウーン。なんだか胸の辺りがイタイねぇ。尽きたくないって最期に気付いたのかな?」


 漆黒の中にあって、他よりも深く暗い闇。シンセイや仲間たちとも違う。人の理解を、世界の理を超えた存在。唯一無二の境界を翔んだものにのみゆるされる感覚を放つモノ。




「人の創作物ではなく、神そのものだ」




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