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新星  作者: 煌煌
第十一話 堕天
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流転

「ただ地面を隆起させた物ではないな」


 もう一機へと視線を移す。獅子も山の中にあり、今までが嘘のように静かな戦場。攻撃の手を止め距離を作ったゲイル。目を左右に動かしながら、打開策を考えている様子。


「衝突で武器が壊れていないなら、攻撃力を上げたら済むんじゃないですか?」


 届いたのは甘く落ち着いた舞の声。簡単に言っているが、成すのは難しいこと。武器のアップグレードもなく、たった今、弾かれたばかりの岩山を砕く術。


「速度って攻撃力に直結してるんですよね」


 舞の助言は、オペレーターとしての役割を超えている。相手に動きがない戦況。ゲイルの力量。様々な要素を把握したうえ、想い人を立てて彼自身に気づかせたのだから。


「ああ、やってみようか。助かったよ」


 時間を掛ければ思い出せたであろう答え。けれど、直接聞いてはないのに本人より早い気付きは、舞の頭にはゲイルへの想いが深く刻まれているのだという証拠。

 何より、蒼い瞳へ落ち着きが戻った。感謝の言葉を述べた声も、普段と変わりがない。


「お礼なら直接ください」


 おっとりとした口調にゲイルは頷く。騎士は反転し、トーマスらを抱えて戦域を離脱。




 火山から立ち上るが如き噴煙。現れた白き騎士の鎧は煤に塗れていた。彼女の周囲には氷の機雷。二つの標的は、また遠くにある。先程より縮んだような、二色の悪魔。


「中佐の報告でも、再出現すると縮んでいたと言ってたわね。なら、限界はあるのかも」


 機雷はシンセイと敵機の間に降り注がれ、壁のような役割を果たす。容易に近付くことはできないが、真珠ならば不可能ではない。寄り添う太陽と月に剣を割り込ませた。

 直後、閃光とともに衝撃が駆ける。大気を揺らし、地を抉る爆発。


「音より私の方が速い。なのに爆発が捉えてくるってことは」


 ゲイルが直面した岩山と同様に、シンセイを襲う攻撃も魔法の類い。自然の摂理に反し道理を歪ませる所業。だとすれば。


「避けた分だけ再出現時に縮むはず。機体を構成するのにも、力を使うもの」


 真珠の予想は的中。現れた二機は始めから比べ、半分ほどの大きさ。シンセイを囲う氷の礫も減っている。繰り返される攻撃動作。再出現する二色の悪魔。




「あと何回かしらね」


 数度の攻防の後。敵の顔色は窺えないが、真珠の頬には汗が伝う。修復に使うのは彼女の体力。前回と変化の見られない相手に、白の中に漏れる溜め息。


「予想は外れてるのかも。考え直さなきゃ。集中を切らしたらダメ。考えるのよ」


 ゲイル同様に辺りを探る真珠。取り囲む氷にも何一つ変わりなし。繰り返される攻防。


「相手にもパイロットは乗ってるんだよな。なら、機体の中の人も再生してんのか?」


 真珠のヘルメットに届いたのは、真剣さを全面に出した少年の声。


「人は転移してるのかもね。でも分からないわ。そっちは、探ってない。ああ!」


 桜色のパイロットスーツの中。基地にある新たな騎士の内で、真珠の気付きが響いた。


「俺にはできなくても、俺の師匠ならできるだろ? なんたって最強なんだから」


 皮肉ではなく熱意。言葉を包む温かな心が真珠の周囲に渦巻く。直後、シンセイは太陽と月を斬り裂き、輝きを放つ。自身の修復を行う中に、黄色と蒼の光。




 民間人を地に下ろし、ゲイルは遠くで待つ岩山へと振り向いた。風はない。だが、青竹色の背にあるマントが揺れる。宙に浮くシンプウ。そして、加速。

 シンプウの背ではためくマントは、魔法を人の手で超えるための術。舞が伝え、ゲイルが成そうとすることを支える、錬一の想い。一直線に並んだ心が、二つの岩山を砕く。




 逃がすはずもなく、真珠は意識を向けた。機体と操者の隔絶。再び現れた太陽と月に、気配はない。疲労もしくは安堵からか。片膝を地に突く白の騎士。

 離れた戦場。けれど、繋がった仲間たちの心は、二つの結末を同時に迎えさせた。


「じゃあ次は、私と遊ぼうよ。お姉ちゃん」




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