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新星  作者: 煌煌
第十一話 堕天
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快晴

 人は平和や今という時が有限であると知るまで、日々無為に過ごす。自身は違うと言い聞かせても、やらねばならないこと、やってみたいことを全て終わらせて眠るのは不可能に近い。一日でも難しいこと。際限なく続くと思えば、いくらでも積もる。

 しかし、三箇月という期限を目の当たりにしたことで、人々の暮らしに変化が起きた。

 家族に感謝を伝える者。想い人への告白。堕落からの脱却。僅かでも己を良くしようという心境の変化。地球上の人類全てが一枚岩とはいかぬものの、大きな革新なのは事実。

 戦争は遠くで起こるものという考えは過去となり、今を懸命に生きる世界。中心にいる真珠たちも切磋琢磨し高め合い、短い期間は終わりを迎えた。




「もしもの備えは用意できた。パイロットの士気も高い。あとは、相手の練度だな」


 茶色い機体の前で呟くのは錬一。六月一日を迎え、いつ敵襲があるか分からない状態。地下基地の隅で自身の集大成とも言える兵器に語り掛ける彼の瞳は、揺れることはない。


「キメラにならずに済んだわね。随分と整えられて。それで、名前は?」


 錬一の肩を掴み、身を反らせた彩愛。だが巨大な機体の頭部は視界に収まらない模様。目を細めてみても同じ。足元からでは胸板に阻まれて全てを見ることは叶わない。


「人を助ける存在だ。見た目だって重要さ。名前は乗り手に任せようと思ってるけどね」


 錬一の返事に、彩愛は軽い溜め息。細めたままの目を彼へと向けた。


「でも考えてるんでしょ?」


 パイロットに任せるという言葉通り。機体名を口にしたことのなかった錬一。しかし、彩愛の勘は正しかったらしい。彼の表情が柔らかいものへと変わったのだから。


「ジンセイ。なんてのはどうかなと思ってるよ。人の手で人を生かせるように。とね」


 救助用のマシンではなく、無数の武装を積んだ兵器。巨影からも判る戦うための力。

 けれど、あくまでも意思を持たぬマシン。使う者、扱い方次第では、人を救う希望。


「彼と妹が、人として生きていけるように。なんて思ってるんでしょう? バレバレよ」


 不満を失くした目で錬一を見つめる彩愛。二人の間を流れる空気は同じもの。


「いつもどこか前向きよね。だからアナタの隣にいたいって思うの」




 ジャーナリズムとは民に寄り添ってこそ。という信条を持つ記者。トーマスの三箇月は戦場となった地での取材に費やされた。人々からの伝えられなかった声を聴くために。

 六月一日。龍神家でのやりとりから数分。トーマスは北海道にいた。すでに復興は完了しており、取材に応じる者の顔も晴れやか。口々に真珠への感謝を告げる。


「緑色のロボットが助けてくれたの! 後ろから風が出てね。カッコよかった」


 偶然にも声を掛けたのは、ゲイルが庇った父娘。時間がなく伝えきれなかった、言葉の全て。異国の男性は小さな体の大きな感謝を聴くため、コンクリートの道に膝を突いた。


「ドンドン遠くに行って。助けてくれたの」


 嬉しげに話す少女。後ろの父は今にも泣き出しそう。二人を見上げるトーマスは取材用のマイクを握る手に力を込めた。北海道の空は青く澄み渡り、光を遮るものはない。




 時刻は十五時三十分。


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