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新星  作者: 煌煌
第十話 シンジュ
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シンジュ

 彩愛自身が言っていた一瞬は、真珠と錬一の提案によって夜まで続いた。ささやかではあるが、仲間たちとの顔合わせも兼ねた立食パーティー。シャンパングラスを手に、若者らに囲まれ言葉を交わす彼女。年齢差を感じさせぬ笑顔は、会場の華。


「しかし、彩愛さんが龍神家の方とは」


 龍神の姓を隠してはいたが、裏方であった錬一と違い、人前に出ることを避けられない彩愛。整備士としての腕もさることながら、初期からテストパイロットとして磨いた操縦技術の高さ。そして何より、周囲を圧倒する美貌。ゲイルの記憶に残るのも当然。


「旧姓を使ってるから。でも一度会っただけなのに、ちゃんと覚えてくれてて嬉しいわ」


 彩愛の返事に、ゲイルは目を丸くした。


「実は今日で三度目ですよ」




 会場の中央で話す仲間たちから離れ、広い部屋の壁にもたれ掛かる光悦。真珠との訓練中に彩愛への挨拶を済ませた彼。浮かない顔で遠くの華を見つめる。


「眠くなるには早いんじゃない?」


 自信と清らかさに彩られた声。主は、もう一人の会場の華。クリーム色のドレスを着た姿は名前を連想させ、宝石も色褪せて見える輝きを放つ。光悦は紅く色づく。


「別に眠いから一人でいた訳じゃねぇよ」


 視線を逸らした彼だが、相手の運動能力は常人のモノとは違う。汗一つ流さず回り込むと、母譲りの笑顔を振りまく。短く上がった少年の音は、驚きと喜びを合わせたようだ。


「確かに明日もあるし、寝ないとよね」


 光悦に向けていた顔を、彩愛へと動かした彼女。名残惜しいといった表情を浮かべてはいるが、自身のすべきことを忘れてはいない様子。誰もが時の中に紛らかすことを。


「いや、まぁいいか。お母さんに挨拶して、部屋に戻ろうぜ。明日もあるもんな」


 彼女の光を受ける、光悦も同じ。




「もうすぐ日も変わるものね。二人とも今日はありがとう。お開きにしましょう」


 光悦たちの挨拶を受けて、時計を確認した彩愛。今までと違い、少し慌てた声色。


「じゃあ行きましょうか。お母様また明日」


 母とは正反対に元気な声での挨拶。全員に同じ言葉を掛けると、彼女は部屋を出た。


「では自分もこれで。行こうか、舞くん」


 薄水色のドレスに身を包んだ舞へと、手を差し出したゲイル。緩やかに置かれた返答。優しく包む彼。微笑ましく映るが、繋がれた直後から二人の顔には緊張が残る。




「結構、無理矢理出てきたよな。もしかしてお前も眠いのか?」


 メイドを含め、ほとんどがパーティー会場にいる龍神家。廊下に他の人影はない。光悦の声は、何にも遮られることなく、隣を歩く人物へと届く。不満げな美少女へと。


「お子ちゃまじゃないってば。何だか悩みがありそうな顔してたから、気になっただけ」


 真っ直ぐな言葉。ゲイルが聞けば喜ぶかは分からないが、他意がないと伝わる。


「何だよそれ。でも、いくら俺でも聞いちゃダメだって分かることだし」


 光悦が肩を落としたのは、心にある疑問、もしくは彼女の気持ちによるものか。


「何でも話すわ。だって今はもう、秘密じゃないんだもの。だから聞いてみてよ」


 背負って歩くモノの重さを知る彼女。友と話すときにも気を付けていたのだろう。反動から来るのか、晴れやかな顔を見せている。


「いや、でも」


 (かげ)る光。何も言わずとも、温度差によって少年にも伝わるほど。


「分かったよ。その、お前と。いや、真珠と親御さんが似てないなって思ってさ」


 光悦の着地点を変えた瞳は丸くなり、疑問が意外なものであったと告げる。彼が言葉を続けようとした瞬間。


「大丈夫。産みの親が今の二人とは違うだけだから。それだけのことよ」


 表情は明るく変わり先ほどと同じ力強さを持つ言葉。真珠の心に揺らぎは見られない。むしろ光悦の方こそ対応に困っている模様。


「でも、いつも遠くから見守ってるんだって聞いたわ。だから真珠なんだって」


 晴れ渡る空に小さな雲。よく見なければ、気付くことがないほどの。


「今は俺もいるから。だから寂しがるなよ」


 妹のことを思い出したのか。自分自身をも励ますかのように、真っ直ぐな想い。


「私は。いいえ、ちゃんと取り戻しましょ」


 重なるのは互いを思いやる心だけ。だが、明日を走り抜けるだけの力を与える、確かなもの。他の誰でもなく、目の前の相手だからこそ届く神聖な光。




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