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新星  作者: 煌煌
第十話 シンジュ
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シンライ

 急に上がったシンセイ周辺の気温。そして錬一の驚喜による短い叫び。眼前の女性も、彼の反応に嬉しげな顔を見せている。腰まで伸ばした桃色の髪を揺らしながら。

 龍神(りゅうじん)彩愛(あやめ)。四十七歳ではあるが、夫と並び立っても同年代に見える。龍神家への加護が及んだのかは定かではないが、彼女は日々の努力を怠ってはいない模様。

 全ては錬一からの愛に彩られるため。生来の美貌は研磨され、人類が到達できる一つの極致とも言えよう。系統は違えども、真珠の母親であると解らせる魅力を放つ。




「こんな状況でもサプライズとはね。でも、どうして急に。向こうの仕事もあるだろ?」


 抱擁を忘れられぬ錬一の言葉。周囲の熱量は高まるばかり。今にも火が点きそう。


「こんな状況だからでしょ。家が大変な時にまで優先させる仕事なんてナイわ」


 夫の背中へと回した手を絡め耳元で囁く。付近に誰もいないからこその時間。

 彩愛の仕事は日本から離れた場所でのSFの調整。場合によっては自身でテストも行うので、パイロットとしての適性も持つ。


「で、私たちの女神様はなんて?」


 今までと打って変わって、力を持つ言葉。浮かび上がりそうな体を地に戻し、錬一にも自身の成すべきことを思い出させたようだ。地下基地の風が本来の冷静さを運ぶ。




「弥生くんを取り戻すのは、兄の光悦くんを含む三人に任せると。他にはシンライなども戦える程度にはしなければってさ」


 ようやく彩愛を放した錬一。二人で一つの画面を見つめる。冷たい風は、彼らの周囲を避けて通っていく。隙間などなく、入り込む余地もないのだから。


「機動性も運動性も、飛躍的に上がるわね。だけど、性能的にはまだ足りないでしょ」


 彩愛は視線を左隣へと移すと、大きな目を細くした。小さな口からは溜め息を漏らし、パイロットもこなすとは思えぬほどに華奢な体を揺らす。


「実戦でも撃ち抜けないと、守れないもの」


 彩愛が映したのは武器の項目。銃身部分を指先で叩き、左目を瞑る。

実弾を扱うからこそ通用する改良。いや、技術の応用。銃身を加速装置に変えるのだ。




「本当に、神の雷と呼べる性能になるな」


 安堵の言葉とともに、切ない表情の錬一。すると、彼の肩に細い指が置かれた。


「アラ。私は信じて頼れるモノって好きよ」


 人の手で人を守る。錬一の想いを込めた、連合量産機。名は体を表すとも言う。いくつもの意味が込められたシンライ。世界を救う新たな風として来たり得るのか。




「あ、実験用には私が乗って来たシンライが使えると思うわ。中身はノーマルだから」


 彩愛が端末を操作すると、基地の外を映す監視カメラへと切り替わる。海中では一機のシンライが膝を突いており、群青色の世界で異彩を放つ。彼女の髪を思わせるピンク。


「実物はもっと鮮やかなんだろうね。いや、それよりも。わざわざ海に潜って来たのか」


 友軍の信号で警報は鳴らない。離れた位置から泳いで近づいても、家人であれば入り口は開く。自身を驚かせるためにした妻の努力は、錬一のものより遥かに上。


「まだまだ考えてるわよ。喜びは一瞬でも、思い出になれば永遠だもの」


 穏やかに流れる時の中。重なる二人の影。


「それじゃあ、私たちのもう一人の女神にも驚きと喜びを届けに行きましょうか」


 物言わぬ英雄の前で二人は顔を離し、基地の出入り口へと歩む。和やかな歓喜の時間。




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