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新星  作者: 煌煌
第九話 遊離
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遊離

 いくらシンセイが速度を取り戻したとしても、弥生とタハダが海面にぶつかるまでには間に合いはしない。底を走る敵機とて同様。

 着水とともに大きな飛沫が舞い、中の二人は鉄の壁に打ち付けられる。しかし、弥生が衝突する寸前、タハダが体を滑り込ませた。少女の身に届いたのは、短い呻きのみ。

 二人を助けたのは彼女らが叩きつけられた硬い装甲。錬一の策により体の自由を失ってなお、搭乗者を守った黒騎士。




「スラスターと各駆動部分のみ停止。これで二人は無事なはず。後は任せたよ、真珠」


 コックピット上部に取り付けた重力緩和用の装置。二人が無事だった理由だ。機能停止していれば。考えたくもない光景が広がっていたであろう。タハダが意識を失っただけで済んだのは、奇跡にも近い必然なのである。

 すでに通信は切られた後。錬一の声は真珠には聞こえない。けれど、彼女は加速した。




 海面に浮かぶ黒い機体。二人の下方から、護衛の悪魔が顔を見せる。太陽を思わせる、黄色い装甲。顔を取り囲むたてがみが獅子を思わせるが、胴体はしなやかで狼に近い。


「あー、あー。大丈夫、ですか?」


 おそらくタハダだけでなく、弥生にも無事か確認したいのだろう。たどたどしい日本語が少女の背中から響く。続く沈黙に、黄色い悪魔は焦りの色を浮かばせた。


「えっと、タハダのお姉ちゃんは気を失ってます。私は無事ですケド」


 目を細め、緊張した面持ちで答えた弥生。仰向けで浮かぶ黒騎士の中。コックピット内も通常とは方向感覚が異なる。胸部が上で、タハダのいる側が背中。

 起き上がった弥生も、瞬間的によろめく。


「それは良かったです」


 安堵の声を出した男。中国語で続ける。


「そういや翻訳機能積んでたな。これか?」


 聞き慣れぬ男の言葉に、弥生はタハダから距離をとった。直後、機体に響く聞き慣れた声。通信の主は、もうすぐ近く。


「弥生ちゃん。すぐ助けるからね」


 真珠の声に振り向く少女。反対に、黒の下にある狼は慌てた様子。浮上とともに機体を持ち上げた。中は再び揺れ、衝撃にタハダが目を覚ます。弥生の手を引く彼女。


「危ないから座っててください。揺れます」


 弥生をシートへ連れ戻した瞬間。二人を横揺れが見舞う。黄色が方向転換したのだ。

 一人乗りのSFは、パイロットシート上にいる搭乗者は振り回されにくい設計。だが、別の場所に何者かがいた場合、守られるとは限らない。中心にないタハダが舞う。




 シンセイが黒騎士のレーダーに表示され、加速する二機。白と黄により、次世代のカーチェイスが始まるかと思われた時。


「うっし。バリアを展開しな」


 タハダの胸から聞こえた声。バリアに物体が触れれば、存在が消える。弾道ミサイルも人間も、おそらくは、巨大機動兵器だって。


「真珠お姉ちゃん、来ちゃダメ!」


 少女の叫びに反応して、シンセイは反転。慣性を断ち切る再加速中、救世主の背を擦る境界線。振り向いた真珠の前には、無の壁。




「弥生ちゃん? 大丈夫?」


 隔てられた別世界に、届くことのない声。


「ねぇ。もっと沢山。話しましょうよ」


 彼女の想いも、涙も。




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