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新星  作者: 煌煌
第八話 本命
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本命

 ディアナによって水浸しとなったコスモス周辺の街。二人の英雄が空の悪魔を見上げていた頃。北海道の龍神家にも動きアリ。


「真珠大佐がブラトン中佐と合流。ブルーと睨み合っています」


 現地からの映像が届く直前。衛星の情報を錬一に伝えた舞。主役の到着によって、地下に集まっている人々には安堵が訪れた様子。

 少し前まではこの世の終わりかという顔色をしていたが、今は舞の表情は緩い。戦況を伝達するため、モニターで真珠の位置情報を確認し続けていた彼女。きっと本人より正確に、救世主の成長を把握しているのだろう。




 歓声の上がる地下から少し離れた屋敷内。最低限に身なりを整えた弥生が、仲間のもとへと人気(ひとけ)のない廊下を急いでいた。すると、彼女の背後から一つの影。


「ねっねぇ。弥生ちゃんも今から集合するのかな。良かったら一緒に行こ?」


 自分を呼ぶ若い女性の声に、弥生は溌剌(はつらつ)とした顔で応えた。透き通る紫の瞳は、相手の髪色によって赤みを強くしている。


「うんっ。でもお姉ちゃんもねぼ、うっ?」


 弥生の小さな腹部で鈍い音が鳴り、少女の瞳から消え行くハイライト。事態を飲み込む暇もなく、幼い体は地に伏した。柔らかな肌は近くの部屋に運ばれ、間者(かんじゃ)は地下に潜る。


「ごめん。もう時間がないの」




 基地のエレベーターが動いたのに、最初に気付いたのは舞。ライトクリームの制服は、彼女と同じオペレーターであることを示す。揺れる艶々とした赤髪は、親友の特徴。


「ごっゴメンね。遅れちゃった。あっあの。龍神少将、もう一機は出せないんですか?」


 舞と合った目を途中で錬一に向け直すと、彼女は漆黒の足下へ歩む。三本目の矢へと。


「パイロットがいないからね。本部には精鋭を回すよう伝えてある。明日には出れるさ」


 彼の言葉を聞くと、明らかに赤髪の間から覗く白い顔の様子が変わった。今まで見せたことのない、生気のない笑み。整えられた形に、新たな一面を浮かび上がらせている。


「じゃあ、動くんですよね!」


 席から舞が立ち上がり、親友の元へと駆け寄った。けれど、彼女が腕を掴むより、相手が機体に乗り込む方が早い。コックピットは閉じ、壁となって叫びを阻む。

 ハンガーに上がり、硬い装甲を叩く舞。手は赤くなり、目からは大粒の(しずく)が伝う。




 胸元で(わめ)く美女には構わず、漆黒の騎士は立ち上がる。勢い余って背面の岩壁に後頭部をぶつけたのは、パイロットの不慣れ(ゆえ)か。


「新城上等兵。通信機を使え! 翔は真珠に連絡を入れろ。敵の本命はこっちだ」


 錬一の指示に従い、博士は着席。舞のいるハンガーは、騎士の動作に合わせ揺れ続けており、容易には下りられない様子。

 しかし、いくら涙が流れようとも、揺れに身体を弄ばれても、舞は黒の機体を睨む。




 右手での掌底。ハンガーは二つに割れて、舞の体を岩壁に打ち付けた。けれども彼女は短い悲鳴を上げただけ。未だ揺れの収まらぬ階段を駆け下りると、錬一の指示に従う。


「何やってんのよタハダ! そんなとっから早く降りて、目ぇ見て話させなよ!」


 インカムに怒鳴り声をぶつけた彼女。狭いコックピットでは反響し、タハダは白い顔を(しか)めた。なのに応答はナシ。スラスターに火を入れると、天井に向け飛翔。

 両腕を顔の前に持ってくると、防御の姿勢を保ったまま激突。基地には岩が降り注ぐ。


「アンタの姉御気質なトコ気に入らなかったのよ。役目の邪魔ばっかしてさ」


 基地の崩れる音に紛れ、(かす)かにしか聞こえない声。だけど、舞への確かな答え。




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