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新星  作者: 煌煌
第八話 本命
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月蝕

 ゲイルが落ちたのは、ディアナが空けた穴の中。二度目の衝撃によって広がり、深さも増している。スラスターを吹かせたとして、壁となった地面に阻まれるため回避は不能。一度起き上がる必要があるのだが、いつ水刃が降り注ぐとも分からない。


「たった一度だけでも防げれば、立ち上がるだけの時間を稼ぐこともできるか」


 シンプウが小太刀を投げた瞬間。ディアナの指先からも高圧水流が放たれた。空中にて衝突すると、特殊合金製の武器は消滅。

 しかし、一瞬だけ遅れた水刃の到達時間。シンプウが動くには十分であった。


「ここから巻き返す」


 立ち上がったと同時に、彼のコックピットがあった場所に水刃が着弾。地面の硬さなどお構いなしに深い穴を空けた。




 見上げたゲイルの瞳に映ったのは、雲一つない昼の空に輝く三日月。水の矢をつがえ、緩やかに弧を描く銀の弓。引かれた弦が音を立てると、加速した悪意がシンプウを射る。

 当然、ゲイルは回避を行った。射線から身を引き、次の攻撃へ備えて視点を保つ。水刃なら何の問題もなかった行動。けれど着弾の寸前、三本に分裂。薄緑の両肩を貫いた。




 矢は地面まで突き刺さり、シンプウが動くことを許さない。天のディアナは弦を引き、もう一撃の構え。何もない空間に水が現れ、身を射る意志を形作る。

 勝利を確信したのか、ディアナはたっぷりと時間を掛けて弦を引く。もう一方の小太刀を投げようにもシンプウの腕は上がらず、彼は為す術もなく天を睨むのみ。


「やはり大佐の手を煩わせることになるな」


 眉間にシワを寄せ、蒼い瞳が微かに潤む。だが、最後の時まで、彼は目を逸らすことはしない。自身の終わりを見届ける。


「だけど中佐がいるから間に合ったのよ」




 高らかな弦音にも混ざることのない自信。蒼と薄緑に割り入ると、水の矢が弾けた。

 雨の中から現れたのは純白の騎士。傷一つ負わず、ゲイルに代わり悪魔を見上げる。


「シンセイの装甲とは、それほどまでに?」


 下にいるゲイルには逆光となって見えないらしいが、白い機体の手には(しろがね)の丸い盾。

 インパクトの瞬間に弾くことで、重い一撃であってもかき消すことが可能なのだ。


「流石に直撃してたら痛いでしょうね。でも咄嗟(とっさ)に考えたけど、使い勝手はよさそうよ」


 真珠が正面から左方向に盾を動かしたことで、ゲイルの目にも丸い影がはっきり映る。




 防御を解いた白騎士に水の矢が降り注ぐ。彼女の視線はゲイルに向いたまま。けれど、意志の塊である攻撃は当たりはしない。

 次は一気に三本の矢をつがえるディアナ。放たれると水の魔法は拡散。やはり敵は周辺の被害など気にしない様子。すると真珠は、間合いも遠いのに回し蹴り。空振りした後、無防備に背中をさらす。

 拡散した攻撃の一つ一つは小さく、秘めた威力もさほどではなさそう。とはいえ、人や建物を壊すには十分なモノであり、何もせず見過ごしてもよい訳はない。


「なぜ迎撃しないのです。大佐ならまだ」


 強化されたメインカメラ、研ぎ澄まされた反応速度であっても、ゲイルにはシンセイの回し蹴りが見えなかった模様。今やマッハ百に迫る救世主の動作は、一段階上がったとて人に感知できる代物ではないらしい。

 巻き起こるのは嵐。吹き上げる風が水の魔を叩き、無数の針を潰す。全てが消え去った後、青い空にあるのは二色の光のみ。


「ほら、ここから巻き返すんでしょ? 早く上がって来なさいよ」


 振り向いた純白は何よりも目映(まばゆ)い。




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