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新星  作者: 煌煌
第八話 本命
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 前回の戦闘同様に、ゲイルは攻撃の出所にのみ集中。モニター正面に両手が映るよう、多少強引な軌道になろうとも、メインカメラを彼女から(そむ)けることはしない。地上からは絶え間なく水の刃が襲い掛かるも、上下左右に機体を振り回避。加速し続けるシンプウ。

 通常ならば速度が増すと視野は狭くなり、反応するまでに掛かる時間も長くなる。例えアドレナリンが出て集中力が上がっていたとしても、人という種族の限界を超えて回避を続けるなど不可能。いくらエースパイロットでも同様。なら何故ゲイルは一撃も受けずにいられるのか。秘密は(しろがね)に輝くアンテナ。

 機体各所に仕込まれたシンセイの剣は共鳴を起こし、引き上げているらしい。シンプウと人を、次のステージへ。

 真珠との違いは、あくまでも人の為し得る動きであること。白い光を(まと)って、顔を敵機に向けたまま華麗に舞う様は、まるで客席に笑みを注ぎ続けるバレエダンサーのよう。

 逃げ惑う市民らには知る余裕のない芸術。戦況を見守る連合兵と、彼を踊らせている敵しか観客のいない舞台で飛び続けるゲイル。だが未だ、反撃の糸口さえも掴めないまま。




 戦闘開始から五分。いくら身体能力が真珠に近付いたとはいえ、ゲイルも限界間近。

 動きは精彩を欠き、慣れない上下の回避時には視点がブレ始めている。


「マダガスカルで一万四千。オーストラリアからでは一万六千キロ。まだまだ掛かるな」


 刹那的(せつなてき)な弱気。ヘルメットの奥にある蒼い瞳が(かげ)る。顔を伝う汗を拭う間もなく、ただ目の前の悪魔を睨む。直後、コックピットを狙った一撃。ゲイルは下降して回避し、反動を利用して自身の頭を振った。

 瞳の前を無色の汗が飛ぶ。


「否! 大佐だけに負担を掛けていて、連合の軍人に何の意味があるというのかっ!」


 下降したことで、モニターに映るディアナの巨大さが強調される。十五階建てのビルを超す全高。威圧感も増す。しかし、ゲイルに(ひる)む様子はない。疲労が吹き飛んだかのように、瞳には闘志が(たぎ)っている。

 もう一度、コックピットへの直撃コース。シンプウは右に飛び退いた。脚部への水刃。上昇して回避。二回とも視点にブレはない。




 誰に励まされるでもなく、自力で復調した連合のエース。すると今度はディアナに先程までとは異なる動き。両手に握り拳を作り、腰を落として肘を引いた。

 音が生じる前に沈むコンクリートの地面。蒼い悪魔は姿を消し、次の瞬間にはシンプウの眼前に現れた足裏。コックピットを射抜くような蹴りを、ゲイルは身を反らせて回避。だが、直撃を免れたとは思えないほどの風が彼を襲い、薄緑の騎士は落下。

 地面に叩きつけられたゲイルが見たのは、空に浮かぶ蒼い悪魔。太陽を背にし、指先を彼へと向けるディアナの顔は、金に輝く目を細め、(いびつ)な笑みを形作っていた。




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