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新星  作者: 煌煌
第八話 本命
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飛雨

 オーストラリア近海では、防衛のため出撃した連合の部隊が、敵の回収作業にあたっていた。中国から離れている地域だとシンライどころかシンイの配備も少なく、百を超えるコックピットを集めるには時間も掛かる。


「本当に真珠大佐がやったんだよな? 信号が付近で確認されて、一秒後に全滅ってさ」


 手を動かしながらも、無駄話に花が咲く。単純な作業なのだから、当然かもしれない。


「他に誰ができるんだよ。神様か? そんな訳ないし、機体越しでも実物見たかったな」


 顔を出した太陽を背に彼らは西を見やる。意識は遥か彼方の救世主のもとへ。




 噂の人物は、ちょうどマダガスカル近海で接敵したところ。オーストラリアへ向かった部隊が全滅したと聞いたかは分からないが、悪鬼たちは既に散開した後。なのに、彼女は速度を落とさず通過。白騎士が纏っていた風だけが、黒い機体たちを取り囲む。

 昨日よりも勢いを増した風圧。全ての敵を東へと押しやると、縛り上げるように動きを封じた。そして、彼女は飛行を続けたまま、右手の人差し指だけを後方に向ける。


「バァン」


 合図とともに放たれた無数の光線が、全ての悪鬼を行動不能へと陥れた。けれど地上の人々が感知できるのは、竜巻のような風の音と、夜空を彩るコックピットの流星群。




 一方。バージニア州ではシンプウと蒼い月の睨み合いが続いていた。自機よりも倍近く大きい敵。武器を失った今、迂闊に攻め込む訳にもいかず、距離を作ったまま相手の装甲を抜く術を考えているらしい。

 すると、先にディアナが動いた。コスモスの中庭へと振り返り、右手を上げる。


「やらせん!」


 咄嗟に機体を前進させ、ゲイルは敵の腕を蹴り上げた。広げられた手が天に向き、水刃は雨へと変化。晴れ渡る空から降る(しずく)


「地下基地からの増援を防ごうとしたか」


 本来ならば既に部隊が展開している時間。だが、ようやく外にも鳴り始めたサイレンが告げるのは、出撃の合図ではない。




 避難警報によって、付近の一般人らも意識を取り戻した様子。ディアナから離れようと直線的に逃げ出した。しかし、シェルターへ誘導する声に耳を貸す者は少数。




 シアトルと同じように、ディアナは市民に手を出す様子はない。空中のゲイルを睨んだままだ。状況は変わらないが、一つだけ彼にとって好転したことがある。特殊合金製の小太刀が無惨な姿になったのに対し、シンプウの足は損傷なし。攻撃にも使えるだろう。


「元から一対一のつもり。やってみせるさ」


 普段通りのクールな笑顔とはいかないが、キザなセリフを吐く余裕は取り戻した模様。

 ゲイルの言葉など知るはずもないが、敵は右手を上空のシンプウへ向ける。放たれた水の刃が幾度も天へ飛ぶ。


「確かに水流は凄まじい。昨日までの俺ならやられてただろうな。だが!」


 敵の攻撃は勢いを衰えさせてなどいない。空に穴をあけるのではと思うほどの力。

 だが、まるで未来を見透すかのように躱し続けるゲイル。原理は昨日までと同じ。ただ機体が彼の戦法に追いついているだけ。




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