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新星  作者: 煌煌
第七話 蒼月
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二陣

「カザンツェフ中将はどこか」


 コスモスを見下ろす巨体からの音声。落ち着いた雰囲気ではあるが、滲み出る黒い意志を隠しきれてはいない。蒼い悪魔の搭乗者はおそらく、中将と通信を行っていた女性。

 聞き覚えのある声に、今まで大人しくしていた中将は飛び上がり、嬉しげに窓を叩く。まるで、ご主人を迎える忠犬のような表情。


「私はここです。お助けを、ディアナ様」


 軍神マルスと月の女神ディアナ。だとするならば、他の三機も名前が絞れるのだが。

 ただ、パイロットか機体の名称かも不明。


「壁から離れていろ。巻き込むことになる」


 先程より温度の下がった声。威圧感で凍死するのではないかと思うほど。

 蒼い機体が身を屈め、中将のいた壁を指先で小突いた。隕石の破片や、ダイヤモンドの変種であるカルボナードなど、硬く衝撃にも強い物質を何層にも重ねてある要塞のような取調室。バズーカの直撃にも耐える外壁が、軽く押しただけで容易く破れた。


「見たか? ミストよ。これが中国の技術力なのだ。お前たちは全員、蹂躙(じゅうりん)されるのみ」


 隣室のミストへ、醜悪な笑みを見せつける中将。勝利を確信した様子の彼へと、巨大な指先が迫る。逃げられるのも時間の問題。


「そう。全員が消し去られる運命サ。だから先にいなくなれヨ。元カラ嫌いだったしナ」


 コスモスを有するアーリントン郡の人口は二十万を超える。男女問わず、全住人が謎の寒気を覚え、出所を探った。




「えっ、ディアー」


 コンマ一秒にも満たない出来事。指先から放たれたマッハ三十の水流が、直線上にあるモノを消し去った。机・椅子・壁・命。中庭まで続く、キレイな穴が空いている。


「黙れ無能。死に際マデ役に立たナイ奴め」


 引き抜かれた指には汚れ一つない。元から何もなかったかのように、一人の存在が水で断ち切られただけ。ディアナは立ち上がると振り向き、飛び立とうとしている。


「状況を確認せよ。怪我人がいるなら手当てを。物的被害は後回しでいい」


 ミスト元帥による指示は的確。部下は確認のため中庭へと急行。すると部屋の中には、連合の総大将が一人。彼の声に気付いたか、または偶然か。右手の人差し指を天に向け、蒼い月の女神が振り返った。

 巨体の立てる足音に、ミストが振り向く。もしも彼が消されたなら、連合の指揮系統は総崩れとなるだろう。なのに、破滅の矛先が空からコスモスの一室へ向かうのに気付いているのは、標的だけの模様。




 矛先がミストのいる部屋へと重なる瞬間。舞い込む一陣の風。交差させた小太刀は蒼い悪魔の脇腹へと命中。自身を弾丸に見立てた突撃は、巨体の位置をズラすことに成功。

 標的から外れたことで高圧水流は放たれず済む。だが、逆を言えばズラしただけ。少しの傷をつけることもできてはいない。


「これが悪魔の装甲なのか」


 敵から離れた位置で停止した、北海道基地より放たれた二本目の矢。両手に持つ小太刀は衝撃に耐えられず、使い物にならないほど刃毀(はこぼ)れしている。初手で仕留められなかったディアナは、余裕を表すかのようにゆっくりと空中のゲイルを見上げた。

 金色の瞳に映る、薄緑の騎士。感情を持つはずのない機体に焦りが見えるのは、搭乗者の心を写しているのだろうか。




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