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新星  作者: 煌煌
第七話 蒼月
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奇襲

 真珠とゲイルによる戦闘での勝利。町を丸ごと消し去られはしたものの、死者なしとの報道に、民衆は喜んでいた。だが、世間には知らされないもう一つの功績の方が、今後の戦いにおいて重要な意味を持つはず。

 昼過ぎのコスモス内部。外からの光は遮断され、隔絶された空間に中将の姿はあった。変質者として現行犯逮捕したのだが、内通者である証拠が彼の部屋から見つかり、取調室にて絞られている最中。


「わたしはね。強い者が世界を導けば良いと考えているだけなんですよ。だから、情報は渡しましたとも。でも向こうさんのことは何一つとして聞けてはいません。残念ながら」


 後ろ手に縛られながら、男はにやけるのを止めない。豊かな脂肪は一つ一つの動作に震えて、憎たらしさを倍増させるよう。

 目の前に座る尋問官と話しているはずが、彼の視線は隠されたカメラを捉え続ける。


「わたしは死にたくなかっただけですよ」




 壁一枚を隔て、カメラを通して様子を窺うのはミスト元帥。真珠たちの労力を無にせぬために、自ら進んで足を運んだのだ。


「もう少し早く気付けていれば、色々と犠牲を出さずに済んだかもしれんな」


 髭を触る癖もやめ、両手を握り締めた彼。程度は不明としても、信頼していた部下なのだろう。裏切られた悔しさは計り知れない。


「時間ならいくらかけても構わん。徹底的に調べて、なんでもいいから吐かせるのだ」


 彼が決意を口にした時のこと。




 またしても開かれる中国の壁。今までとは違い、黒い集団はいくつにも別れる。数百の機体がなす群れは、世界へ向かって飛ぶ。




 衛星が予想外の危険を告げ、各国の基地が迎撃準備を整える。当然、龍神家も。


「出撃可能にはなったか。ショーン君も今回はここまでだ。ありがとう」


 二人が見上げる先には薄緑の守護者。戦闘の傷跡もなく、新品同様の仕上がり。なにを不満がる必要があるのかは分からないが、彼の思い描く姿には至らなかったらしい。


「シンライで出なければならないかと思っておりましたが、お二人が直してくださったのですね。期待に応えてお礼いたします」


 白と青のパイロットスーツはシンライ含めSF(スタンダードフレーム)乗りの証。だが専用色を許されたゲイルが変わらずに着続けるのは拘りによるもの。


「出撃は少し待ってほしい。今はまだ、戦場まで真珠に運んでもらった方が速いからな」


 噂をすれば影とはならず。真珠は現れないまま。今回の襲撃は先の三度とは違い、彼女にとって想定外。起きる時間ではないのだ。




 警報音で先に目覚めたのは弥生。幸せそうに寝息を立てる救世主の頬をつつく。


「多分みんなお姉ちゃんを待ってるよ。って柔らかーい。モチモチだぁ」


 つついて弾いて、引っ張って遊ぶ。非常時だと告げる音の中。彼女らの周囲だけ、空気が緩やかに進むよう。しかし、二つの刺激に眠り姫も薄く目を開いた。


「今日の目覚ましは豪華ねぇ。こんな可愛いんだもの。でも何か聞き覚えがあるような」


 深紅に映る紫の瞳。真珠の意識は弥生だけに合わせた焦点をボカし、彼女にしかあり得ない使命を脳に思い出させた様子。


「警報じゃない!」


 飛び起きると薄手のパジャマのままで部屋から出ようとした真珠。


「ダメ! ちゃんと着替えて!」


 弥生は起こしてから渡そうと用意していたパイロットスーツを投げつけた。真珠は視線だけ動かして受け取り、少女にウインク。


「ありがとう。行ってきます」




 弾けるように部屋から出た救世主を追い、弥生も扉を開いた。なのに、ただ長い廊下が広がるだけ。真珠に負けぬ柔肌が膨らむ。


「行ってらっしゃいってまだ言ってナイよ」




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