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新星  作者: 煌煌
第六話 強風
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不意

 シンプウのコックピット内に響く、自信に満ちた声。けれども主の姿は戦場にはなく、未だゲイルは生と死の瀬戸際。眉間のシワが薄れたのは、先を予測してのことだろう。

 エネルギーを制御するためか、緑の竜巻は攻撃を放った後も球体を見つめたまま。突き出した両手に神経を集めているように映る。すると、東から急接近する機影。

 純白の騎士は隙だらけの背後からすれ違いざまに一太刀。シアトルで見せた銀の剣は、いとも容易く二本の腕を斬り落とした。真珠は勢いを止めることなく球体へと近寄ると、速度を活かした回転蹴りを披露。小さな星にさえも見える巨大なエネルギーの塊は、風船のように軽々と上昇。出現地点を越えて宇宙まで到達すると爆発を起こし、一瞬ではあるが、空気の波が暗黒の静寂を切り裂いた。




 遠くで見守る人々が、自身が救われたのだと気付いたのは、全てが終わった後。希望という名の光を、シンセイの中に見たから。

 戻ってきた救世主は、まだ悪鬼たちが残る状況なのに動かない。シンプウの前に立ち、上空にいる緑の竜巻だけを視界に捉える。


「お疲れさま。選手交代よ。多分もう終わりだとは思うけれど」


 真珠の言葉とは裏腹に、空は黒い機体らに埋め尽くされたまま。千や二千では利かない(おびただ)しい数。戦闘終了を告げるにはまだ早い。


「大佐。お言葉ですが、まだ」


 ゲイルの言葉を止めたのは、シンセイの後を追ってきた風。意思を持つように敵だけを襲い、密集している互いを打ちつけさせる。そして、制御不能に陥った機体が落下。続々と空に穴があき、地上に残骸の山ができた。


「前にも言ったでしょ。数を揃えて来ても、ザコばかりじゃあね?」


 乗るたびに練度を上げる真珠。既に悪鬼らとでは戦闘の必要さえない様子。




 少しのあいだ睨み合っていたシンセイと緑の竜巻だが、距離を詰めることもなく撤退。両腕を落とされれば当然の結果と言える。


「戦闘になれば自分が枷になったでしょう。貴女の邪魔にならずに済んで良かったです」


 コスモスでは中将が捕まり、襲撃も死傷者を出すことなく乗り切った。エースとしても十分な活躍。なのに少しばかり弱気なのは、憧れの女性を見上げる現状のせいか。


「中佐がいたから勝てたのよ」


 シンセイが膝を突き、シンプウの肩に手を置いた。音声のみであった通信が、映像付きへと切り替わる。ゲイルの見つめるモニターには、桜色のパイロットスーツに身を包んだ真珠の姿。ヘルメットの奥にある深紅の瞳。二つの輝きが一つに変わった。


「胸を張っていてほしいわね」


 彼女の仕草にゲイルの時は静止。世界中を魅了する真珠の光。ドレスを脱いだとしても一人に向ければ死人が出かねない。


「不意打ちは卑怯ですよ」


 彼の呟きにも、真珠はただ笑うだけ。




 基地に帰還するため、シンプウを持ち上げようとした時。先程の父娘が姿を見せた。


「軍人さんありがとう!」


 大きく両手を振る娘。頭を下げ続ける父。返せる腕を失くしたシンプウに代わり、真珠が小さく応答。三人の激励で膨らませた胸を張ったゲイル。誰に見られている訳でもないのに、今日一番の笑顔を浮かべた。


「こちらこそありがとう」




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