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新星  作者: 煌煌
第六話 強風
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強風

 頭部からは緑色で紐状の物が垂れ、機体の動きに合わせて靡く。渦巻く風を模した装飾はあるものの、他より一回りは小さいうえに丸みを帯びた外観。腰にはミニスカートまで履いており、恐ろしい巨大兵器であることを忘れさせるよう。両手首から突き出した短刀に、シンプウの腕さえ刺さっていなければ。


「さすがに簡単にはいかんか」


 ゲイルの呟きなど相手は知らない。悠然と短刀を手首へ収納。火花を散らすことを思い出した左腕は、血飛沫(ちしぶき)のように光を溢す。




 悲鳴を上げる左腕が地面に落ちた瞬間。緑の竜巻がゲイルの視界から消え、シンプウの左側頭部に衝撃。蹴り飛ばされ地を這う。


「武器を使えば終わっていた。そう言いたいのか、貴様は!」


 ゲイルは振り返りつつ右手を開いた。掌のビームを刃に見立てて斬る。加速した一撃が見舞われたが、既に奴はいない。

 元から仕留められるとは思っていなかったらしく、右手が地に着くと、反動を活かして立ち上がった。すると、敵は遥か前方。緑の悪魔は姿勢を低くし、武器を出す。


「相手の方が上なのだ。同じことをすれば、ただ負けて終わるだけ」


 ゲイルはコックピットのある胸部を右腕で庇うようにして覆った。開かれた手のひらは機体の左側を向く。圧倒的な性能差に怯え、防御の構えを採ったのだろうか。だが、彼の目は決して諦めてはいない。




 アンテナが光り、今までより明確に敵の姿を映し出す。直後、地面を勢いよく蹴ると、奴はシンプウへ急接近。初動から人の目では追い切れない速度。ゲイルにとっても同じ。

 鋭い一撃がシンプウの右腕を貫こうとした刹那。ゲイルは緑の軌跡を描きながら右方向にスライド。ビームの反動を活かして回避。そしてなおも照射。


「一つ覚えだとしてもな!」


 相手の速度では急には止まれず、方向転換の余裕もない。ゲイルの選択は正解のはず。けれど突風が吹き、弾け飛んだのはシンプウ。

 ビームと接触する寸前。敵は手のひらを地に向けると、強風を放った。慣性を無視し、大空へと身を(ひるがえ)したのである。


「それで全力でもないのだろうな」


 ゲイルを見下ろす緑の機体。パイロットの顔色など窺い知ることはできないのに、感じ取れる余裕。ヤツの実力はまだ未知数。




 浮かび上がった悪魔は、地に降りることもなく、ただ空から地面を抉る。吹き荒れる嵐にシンプウは防戦一方。いや、戦いの土俵にさえも立ててはいない。右腕を落とされ姿勢を崩す。次の強風は両足を押し潰した。

 トドメと言わんばかりに両手を(かざ)す悪魔。空気が意思を持つように集まり、希望までも吸い込む。だが、圧力は高まり続ける。

 ゲイルは為す術もなく見上げるのみ。周囲の建物まで巻き込み巨大化するエネルギーの渦。シンプウを引き入れないのは、向かう先が彼だからだろう。襲撃開始から十分。完成した最後の一撃。大地を切り裂く風の球。

 放たれたエネルギーは、他には目もくれずシンプウへ一直線。睨み付けているゲイルの命の灯火を吹き消そうかという時。


「さすがはエースよね」


 舞い込む一陣の風。




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