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新星  作者: 煌煌
第五話 神託
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神託

 海の匂いを打ち消し観衆の鼻を満たすは、雑味の取り払われた澄み切った空気。人間の本能によるものだろうか。張り詰めた透明の中では、誰とはなしに言葉を失う。彼らの耳に入るのは、彼女の魔法の音色のみ。

 天へ向かう砂に導かれ、黄金は(そび)え立つ。人々の目に映るのは、彼女の作り上げた神聖なる柱のみ。なのに、視線を逸らせる者などは、一人たりともいなかった。

 注目を避けるために選んだ手段。しかし、真珠の起こした奇跡とも呼べる光景は、人の意識を(かえ)って集めた様子。とはいえ、砂の壁に阻まれたことで、中で何が行われているかまで窺うことはできない。




 外から注がれる期待の眼差しに、真珠の額には一筋の雫。シンセイの足元にいる錬一が気付くことのない疲労の色。だが、彼だって遊んでいる訳ではない。機体を通して伝わる心の声。他者を思う気持ち。




(人々の希望として彼女が立てたのは、私も嬉しいのです。ですが、これが正しい方法と言えるのでしょうか?)


 冷静さが判断の良し悪しを左右すると、彼は知っている。けれども、今はあまり余裕がない様子。想定外の事態が続いているのだ。錬一の心配は当然のこと。


「そうだな。良い面と悪い面があったように見える。余計な仕事が増えるかもしれないというのが悪い面だ」


 良い面も見方によっては悪く思える内容。一瞬の静寂。彼らの顔色が変わった。


「そして、裏切り者が少なくとも二人いる。一方は、あの子を責めていた連合軍の中将。もう一方は、龍神家に合流した七人の中に」


 やはりもう少し明瞭な好事(こうじ)を予想していたのだろう。錬一には曇り模様。


「さらに、明日の夜には家に敵襲があるぞ。裏をかけるようにしておくと良い」


 自信に満ちた声。心地よい響き。錬一なら名案を閃くと思っているのだろう。実際、彼の瞳には輝きが戻った。


(承知しました。情報を得られたということは、確かに良い面だと言えるのでしょうね)


 言葉とは裏腹に、少し寂しげに映る。彼がシンセイから手を離そうとした時。


「それと、あの子が可愛かったからな」


 聞こえていたのかは分からない。しかし、顔を上げた錬一には、自信が移ったようだ。




 対話の終了と同時に解除された砂の竜巻。中から現れたのは、純白を取り戻した騎士。静寂は破られ、歓声に包まれる一帯。




 手を振った後、飛び立ったシンセイ。二人の目的地は日本ではなく、コスモス。メイドたちに出迎えられ、待ってくれていた温かい食事を頂く。戦闘でなくとも、魔法を使えば体力を消耗する。空腹は最高のスパイスだと言わんばかりに、真珠は満面の笑みで食らうのであった。そして夕食後。


「日本は今、コチラの明日だ。夜になるまでには帰らねばならないな」


 なぜか迷彩柄の飛行服に身を包んだ錬一。眠い目を(こす)る真珠の、頭を撫でた。




 白い機体が空を飛ぶ。シンセイとは比較にさえならない速度で雲を裂く、最新鋭の戦闘機。頼りない軌跡を描き日本へと羽ばたく。

 だが、姫は月明かりのコスモスで夢の中。




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