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新星  作者: 煌煌
第五話 神託
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黄昏

 弥生は怯えたように光悦の後ろに隠れた。妹の様子に、光悦の視線も紫の中へと移る。けれど、彼の目には特に変化が映らなかったのか、首を捻った後に足元の少女を一撫で。

 二人を見守っていたタハダは温かい表情を弥生に向ける。そしてもう一度抱きしめた。


「今はみんながいるから、大丈夫」


 タハダの一言が、弥生に安堵の表情を呼び戻す。全員が少女を囲むと、ためらいを孕む幼い目は紫を睨みつけた。


「みんなありがとう。真珠お姉ちゃんたちのテレビが終わって、おトイレに行こうとしてたの。そうしたら、急に眠くなってこの前の女の人の声が聞こえて。気づいたらココに」


 会見を観るため、四時前には起きた面々。まだ子供である弥生は特に(こた)えたのだろう。


「その。迷惑かけて、ごめんなさい」


 小さな頭が下がる。さらに、光悦も続く。兄妹揃っての謝罪に、大人たちは困惑の色を見せた。だがすぐにゲイルから一言。


「民間人を守るのが我々の務めだ。それが、友人だとすれば尚更だろう?」


 初対面からまだ数日。とはいえ、死地から共に生き延びた彼ら。目に見えない絆も出来上がっているらしい。ゲイルだけが一方的に兄妹を友と思っている訳ではないのだから。




 とりあえずの一段落で緊張が解けたのか、少女の腹の中で虫が鳴いた。


「今からだとブランチに近いな」


 歩き回ったゲイルたちも、相当な空腹感に襲われているのか。食卓への道を飛ぶようにして進む。彼らを見送る紫の残骸は、男二人の間に揺れる、小さな影を映し出していた。




 コスモスから離れた真珠と錬一。夕暮れ時のシアトルへと降り立つと、予定通りに瓦礫を取り払う。重機での撤去作業では数日を要すると思われていたが、シンセイは瞬く間に終わらせた。魔法のような光景に、野次馬やマスコミは熱狂。簡単には人目を避けられはしない様子。彼らが落ち着いたのは日没後。


「また予言者様(せんせい)の気が済むまで飛ぶのもね。せっかくの料理が冷めちゃうし」


 遠ざかる気配のない注目に、不満を漏らす英雄。タイミングが違えば、ファンサービスでもしていたのかもしれないが。


「メイドさんたち。待ってくれてるかしら」


 今度は申し訳なさそうに沈んだ顔。機体内の真珠は、表情を次々に変える。


「うん。力を使うしかないわね」


 実際、空を飛ぶのも膝を突くのも、真珠の力による作用。だけど既に彼女は、イメージを固めずとも動ける。つまり、真珠の言う力とは一種の魔法。奇跡の部類。


「けどその前に、見てくれる人にも少しだけサービスしておかないとね」


 集まっている人たちへブイサイン。直後にカメラの光に包まれたシンセイであったが、掲げた右手を真下の砂浜に叩きつけた。

 海岸に舞い上がる砂。人々の視界から、白騎士が消える。機体の周囲にのみ壁ができ、シンセイは膝を突いた。黄昏時。暗くなり、人の見分けもつきにくくなる頃。錬一の手は硬い鎧に触れ、自身が何者であるか明かす。

 黄金の光に包まれて、清風が吹き渡る。




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