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新星  作者: 煌煌
第五話 神託
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呼声

 活きる力を手にした人々には、(うごめ)く暗闇に気付ける者はいない。真珠も同様。自身の光の影に潜むモノを、今はまだ知らぬまま。




 会見が終わり、場を離れた三人。関係者に挨拶を済ませ、ミストと別れ、私室へ戻ったのは日没後。連絡を受け待機していた衣装係にドレスを渡し、ようやく一段落。

 広い室内には護衛の兵もなく、錬一と真珠の二人だけ。緩やかに流れる時間。


「広告塔をやれとは言われたが、あそこまでのサービスは必要ないのではないか? 本来の性格で、十二分(じゅうにぶん)に魅力的だというのに」


 決して不機嫌という訳ではなく、親として彼女に接している故の意見。部下に対してのときとは違い、柔らかい表情。


「何となく、記者の人たちに求められているような気がしたの。けど父さんが心配なら、次からは少し自制するわ」


 親子水入らずの空間に、穏やかさを増しているのは真珠も同じ。年相応の様子を見せ、少女の部分を表に出して笑う。


「あぁ。けれど、真珠のしたいようにすると良いさ。無理さえしなければね」


 錬一は視線を真珠から宙へ向けた。まるで誰かに確認するかのように。


「えぇ。ありがとう。そういえば今日はここに泊まるのかしら?」


 遠くでは使用人らが夕食の用意をしているらしく、ほのかに味噌汁の匂いが届く。普段と変わらぬパンツスタイルで、大きなベッドに飛び込んだ真珠は、顔を上げて深呼吸。




「どうかな。彼女にも確認しなければね」


 窓際へと移動した錬一は、空に浮かぶ月を見上げる。彼の様子に、少女はもう一度鼻を鳴らした。枕に沈めた顔からの発声。


「じゃあすぐに聞きに行きましょうよ。少し飛んで昨日の海岸沿いに出れば、人気のない場所もあるでしょうし、瓦礫でも撤去したら特別なことをしてるなんて思われないわ」


 龍神家の二人には日常の一部でも、民衆にしてみれば神秘としか思えないような光景。対話は時と場所を選ぶと分かっている。


「俺としても、シンセイに乗って空を飛べるのは光栄さ。是非ともお願いしよう」


 身支度の必要もない二人は、扉の外に立つ護衛にだけ言伝(ことづて)を頼み、飛び立った。




 錬一が空の旅を楽しんでいる時。龍神家はちょっとした騒ぎとなっていた。メイドたちが走り回り、少女を探す。朝食の前に行方が分からなくなった弥生。屋敷を隅々まで捜索しても見付からない。当然、先頭に立つ光悦が一番焦っている様子。


「せっかく部屋替えしたのに、弥生がいないんじゃ意味ねぇって」


 極寒の地であることを忘れさせる汗の量。体力自慢の彼が、息を上げている。すると、騒ぎに気付いたゲイルと舞、紫音とショーンが合流。メイドは屋敷を、五人は地下基地の捜索を開始。今日が休みだったことが、彼らにとっては不幸となる。住み込みの兵である沖縄の面々しか、いなかったのだから。




 スタンダードフレームも格納でき、一対一ならば模擬戦さえ可能な広さ。五人だけでは探すのに無理がある。肩で息をする女性陣。


「みんなありがとう。あとは俺だけで」


 申し訳なさそうな表情で佇む光悦。だが、彼の両肩には逞しい手が置かれた。


「もし大佐がいれば、こんなことで諦めたりしないだろう。俺は見つけるまで探すぞ」


 覚悟や興奮からか、息の荒いゲイル。当の真珠とは異なる意味で鳴らされる鼻。

 すると、舞も膝を叩いて立ち上がった。


「そういうことなら私も諦めませんよ」


 握り締めた両手。必死に吊り上げている丸い目。男たちにも見えるかのような気力。

 残る紫音とショーンも帰る訳にいかない。壁に手をついて立ち上がった二人。


「ちゃんと鍛えておくんだったね」


 ショーンの呟きに紫音が頷く。




 格納庫の隅。シンセイが持ち帰ったマルスの腕が置かれており、解析装置に繋がれて、岩肌を剥き出しにした壁面を映している。

 そして紫の景色に入り込む、小さな影。




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