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新星  作者: 煌煌
第三話 顕現
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紫煙

 基地へ帰還した真珠。大きなモニターには各国のメディアが流す自身の戦闘。見当違いなことを話し得意気な専門家。シアトル市民歓喜の声。世界中が彼女の話題で持ち切り。

 もちろん、基地内も同様。ヒーローの凱旋に、ショーンとタハダが飛びつく。メイドらも加わり、揉みくちゃにされながら進む。


「良くやった。世界に希望を見せられたな」


 落ち着いた男性の声と同時に、真珠の視界が開ける。左右の温もりは離れていないままだが、錬一の称賛でやっと任務終了といった様相。彼女の顔に笑みが溢れた。




「神様が世界中の美を一つに集めたみたい」


 テレビの中では沖縄基地からの生還者が、謎に包まれた白騎士の搭乗者について語る。助け出した民間人の嬉しげな様子を、空腹を満たしつつ見守る真珠。横には大量の食べ物に困惑の色を隠せない弥生の姿。昨日の三人に彼女を加えての晩餐会だ。


「大袈裟よねー。嬉しいけどさ?」


 真珠がわざとらしく出した茶目っ気満載の声は、真っ直ぐ隣の席に座る少女へ向かう。自分に注がれる賛辞の中。一人だけ浮かない顔をしていた弥生。真珠には、彼女の様子が気になっているらしい。しかし、英雄の一撃にも標的は愛想笑いを返すのみ。




 年不相応のリアクションは、真珠以外にも弥生の不調を告げる。直ぐ様に兄が動く。


「弥生。具合でも悪いのか? ショーンさんから薬でも貰って来ようか?」


 ショーンは軍医として沖縄基地に所属していた。龍神家にも専門の人物はいるのだが、光悦にとっては知らぬこと。真っ先に浮かぶのは白衣姿に着替えた褐色美女な模様。

 兄の心配に妹は首を横に振る。物憂げな顔は青白く、朝までと同一人物とは思えない。ゲイルは慌てて少女の額に手を当てた。


「熱はない。脈拍は、少し早いが正常か」


 手首に置かれた逞しい指を、優しく少女は包む。小さな掌に挟まれ、彼が見上げると。


「違うの。ドコか痛いとかじゃないの」


 不安に潰されそうな少女の瞳。異常事態と気付いたところで、ゲイルにできることなど何もなかった。彼の肩に置かれる白い肌。

 次に少女に目線を合わせたのは真珠。輸送機で再会した時のように、膝を突いて話す。


「心配なことでもあるの? 私にも話せないようなことなのかしら?」


 朝は敵を射抜いた心の光。今は温かさだけを向けた。少女は安心からか、昨日は真珠にのみ見せた表情へと変わる。




 穏やかな時の中で、紅潮していた顔を元に戻した弥生。目から伝う雫も止まり、普段の落ち着きを見せる。彼女の瞳は眼前の救世主を捉えなおし、紫の揺れも収まった様子。


「お姉ちゃんが戦ってるの見てたら。凄い音なのに、女の人の怖い声がしたの」


 真珠の手の中にある小さな柔肌が震える。温かさを込めて握りしめると、もう一度少女に訪れる平穏。弥生の目にはゲイルと光悦の姿も映り、緩やかに流れる時間。


「信じてもらえないかもって、怖かったの」


 三人は弥生を抱きしめて、優しく微笑む。誰も否定などせず、彼女の話を聞くだけ。




「もう大丈夫! みんなありがとう!」


 朝までと同じ顔色を甦らせた弥生。四人は食事を終え、テレビに流れるシアトルの戦闘を眺める。シンセイの到着前。泣き叫ぶ市民の様子と、暴れまわる黒い鬼。シンセイ登場後。次々に撃ち落とされる敵と、喜ぶ人ら。そして、真珠とマルスの激突。

 映像を見ていた弥生から、不思議な言葉。


「紫のロボット。ずっと苦しそうだよね」




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