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新星  作者: 煌煌
第三話 顕現
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顕現

 シンセイの。いや、イメージフレーム同士の戦闘で必要な才能を、真珠は持っている。空間を切り裂いて彼女へと向かう矢は、意志の塊。探知ならばお手の物。

 構えた白い指先は目標を変更。振り向き様の背を、飛来した敵意が掠めるように通過。けれどシンセイは動きを止めもせず、紫の影を視認すると発砲。裂けた空間を縫いながら突き進む金の軌跡。相手に直撃するや否や、凄まじい破裂音を伴って暗闇を吹き飛ばす。

 大爆発はもう一箇所。シンセイの後方で、黒い機体に命中した矢が海に穴を空けた。


「マズい! 生存者は?」


 自身の攻撃の始終を見守っていた真珠は、冷たい熱が作り出した光景を瞳に映す。鉄塊の一つもない。ただ大地が広がるだけの場。


「味方ごとだなんて」


 地球の肌が水の中へと隠された時。暗闇を覆っていた光の渦も、勢いを失った。爆発の衝撃で舞い上がった塵の中から現れたのは、日の光に照らされた悪魔の実体。




 太く逞しい四肢は男性的な印象。シンセイ同様に鎧姿だが、紫に彩られた装甲。兜には立派な装飾が施され、見る者の畏怖を誘う。真珠の機体の対とも思える威容。




「やっぱりボスなだけあるわね」


 自己修復機能があるのか単純に硬いのかは不明だが、紫の表面には傷一つない。反射で映し出されるシンセイは、もう一撃の構え。


「別に今ので倒れるとも思ってないもの」


 日本からの継続飛行時よりも速く動き回るシンセイは、光線や打撃を見舞う。しかし、敵は身動きもせずただ突っ立っているのみ。




 激突から一分。紫の機体に動き。シンセイの回し蹴りを掴み取り、地面に叩き付けた。コンクリートでのダメージはないが、彼女の足は捕らえられたまま。硬い拳での殴打や、至近距離で先程の矢を受ければ、無事で済む保証はない。一瞬の静止により映し出される窮地。基地の面々にできるのは、画面越しに祈ることだけ。真珠の敗北は、連合の死だ。

 なのに、彼女は高らかに笑う。




 振り下ろされる鉄拳。人類が見守る中で、救世主は光を放つ。世界全てに聴こえるかと思えるほどの、高音の衝撃。

 皆が見たのは、跨がる紫を貫く(しろがね)。拳から肩を通り、天を刺す鋼の剣であった。


「私には帰ってすることがあるから。こんなところで負けたりしないわ」


 遠く海を越え、確かに届く自信。ゲイルは微笑み、光悦は叫ぶ。喜びに沸く一同。




(見付けた)


 ヒトには聞こえることのない、宇宙の片隅から響くような深くて暗い女の声。けれど、一人の少女が怯えた目で辺りを見回した。




「今回の作戦は完了。マルス様、後退を」


 中国の戦艦から発せられた老人の言葉。開かれたカタパルトデッキには、四つの機影。すると紫の戦神は彼に従うように飛び立つ。火花を散らす右腕をシンセイの元に残して。


「五体で囲めば勝てたかもしれないのに」


 カメラに収まることのなかった四機。連合側の誰もが、英雄の顕現に歓声を上げる中。たった二人だけは、勝利感に浸れずにいた。




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