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プロローグ
前日から降り続く雨は、ざあざあと音を立てて止む気配が無い。
僕はひとり、だだっ広く感じる部屋の中で白い封筒を手に持っている。真っ白だっただろうそれは、少し黄ばんでいて、ユコおばさんが書いてから誰にも開けられることのないまま、時間だけ経過したことが見て取れる。
僕はゆっくりと、しっかりと糊付けされた封筒にペーパーナイフを差し入れた。
出てきた便箋は何枚も重ねられていて、見慣れたユコおばさんの綺麗な字がびっしりと、流れるように書かれていた。
『ーーずっと打ち明けられずにいて、ごめんなさい』
生前のユコおばさんの顔が、僕の脳裏に浮かぶ。
『リトと、レン』
僕は、その便箋を上着の内ポケットに突っ込むと、広いだけのその部屋を飛び出した。
『あなたたちは、血が繋がっていない』
玄関で靴を履く足が、もたつく。なんとか履き終えた僕は、傘も差さないまま濡れるのもお構い無しに、走り出した。
『兄妹なんかじゃ、ないの』