〜プロローグ〜
「じゃ、改めまして…。あき、就職、おめでとぉー、カンパーイ!」
そう声がかかるとグラスの音が小さく響いた。
「どうもありがとう。これから全身全霊頑張るよ。」
「うん、応援してる!」
「うん、よろしく。」
俺の目の前には小学生時代からの幼馴染が笑っていた。
こんな歳になってもちっとも変わらないその笑顔は俺に元気を与えてくれる。
「ねぇ、あき。」
「なに?」
「まずはどこ勤務になるの?」
「そうだなー、とりあえず今のところ道◯の◯◯かな。」
「そうなんだ。割と近いね。」
「まあね。けど、大体二、三年で転勤になるだろうから多分、三年後には違うとこに移動してるんじゃないかな。」
「そゃーそうだよね。なんてったって市民を守るのがお仕事だもんね。」
「そうそう。それが俺の仕事だからね。」
そう俺の仕事は市民を護るための仕事、それは◯◯◯警察だ。
「ほんとさー、すごいよね。昔からの夢をきっちりと叶えちゃうんだもん。一浪はしたけど。」
「そうだね。流石に、一浪するとは思ったなかったけど、無事夢も叶ったからよかった。ずっと応援してくれれてありがとう。」
「そんな、お礼を言われることじゃないよ。昔から、警察官なりたいって聞いてたから自分のことのように嬉しいしよ。」
彼女は本当に嬉しそうな顔をしている。
「ねえ。あき…。」
「うん?どうした、急に真剣な顔して。」
ふと彼女はさっきとは別人かと、聞きたくなるような表情をした。
「…絶対、殉職なんてしないでね…?」
「…蛍。」
彼女はとても真剣な顔で言ってきた。
「…大丈夫!俺は絶対、殉職なんてしない。だから、そんな顔しないでよ。」
「…うん。ごめん…。なんか、昔のこと思いだしちゃって…。」
「昔?あっ…もしかして、おじさんのことか?」
「うん、もう10年前の話だけどさすがに忘れられないよね、お父さんが殉職したなんてさ…。」
「…当たり前だよ。俺だって忘れない。」
「…だめだね!こんな話ししてちゃ。お父さんに怒られそう。」
「確かにな!大丈夫、心配しないで。俺はずっと蛍の幼馴染だ。いなくなったりなんてしない。」
「ふっふっ…。ありがとう、あき!よし、飲み直そう!」
「あぁ、多分年に2回くらいは帰って来れると思うからその時も、またこうして飲もう。」
「うん、もちろん。いつでも帰ってきて!ここが、あきの故郷なんだから。私はまってるよー!」
「ありがとう…。蛍…。」
蛍はいつもの笑顔に戻っていた。
彼女にはいつまでもその笑顔でいてほしい…。
…1週間後、俺はここを離れなければいけない。今度、彼女に会えるのはいつになるか、今のところはっきりわからない。
半年後、1年後…。もしかしら、もっと先になるかもしれない…。
これから先、もし彼女のその笑顔を壊す奴がいたら俺はその相手を許せないだろう…。