チーム分け
測定はすぐに終わり、ノエラ先生が本番の課題について説明を開始した。
「今からみなさんには三人一組のチームを組んでもらいます。チーム分けは先ほどの測定結果を見てこちらで組ませていただきました」
そうやってバランスの取れたチームを組み立てたのだろう。
「各チームには順番に試練の館に入っていただきます。試練の館というのは学校内にある三階建ての建物です。そこへ入り、3階一番奥の部屋からこれを取ってきてもらいます」
先生がみんなに見せたのは真鍮でできた大きな鍵だった。
「この『合格の鍵』を取ってこられたチームが特待生クラスの合格者となります。いいですね? それでは名前を読み上げますので、それぞれのチームごとに集まってください。ロウリー・アスターさん」
いきなり名前を呼ばれたぞ。
「アネット・ライアットさん、タオ・リングイムさん、前に出て」
今呼ばれた三人が同じチームになるんだな。
タオ・リングイムと言えば、ずっとノエラ先生にエッチな視線を向けていたやつだ。
それからアネット・ライアットは――。
立ち上がって前にでる少女を見て、思わず頭が真っ白になった。
美少女だ……。
いや、ただの美少女じゃない。
絶世の美少女と言っても言い過ぎじゃないくらいに美人で可憐だ。
すらりとした手足、引き締まった腰、大きな胸と、スタイルも抜群である。
髪は金髪で肩甲骨のあたりまでの長さだった。
「アネット・ライアットよ、よろしく」
向こうから先にあいさつしてきた。
事務的だったけど礼儀に欠けるところはない。
「ロウリー・アスターだ。こちらこそよろしく」
あいさつは何とかクリアしたぞ。
他に何をしゃべっていいのかさっぱりわからないけど……。
「俺はタオ・リングイム。よろしくな」
タオはそっけないあいさつだけで、視線はすぐにノエラ先生に固定されていた。
わかりやすいやつだ。
チーム分けが終わると1枚の書類が配られた。
「よく読んでサインしてくださいね。あとで回収しまーす」
見ればそれは誓約書だった。
『私は本試験において、死亡・怪我などをしても、カンタベル中央学院に損害を訴えないことを誓います。』
これまでは余裕だったけど、いよいよ本気を出さないとまずいかな?
チーム分けが終わると、僕らは試験会場である試練の館へ移動した。
学院の西の端っこにある、かなり巨大な建物だ。
入り口は何か所もあり、全チームが同時に入れるようになっていた。
「各チームは自分たちのチーム番号と同じ扉の前で待機していてください。10分後に試験開始の合図を鳴らします。フライングしたら試験失格ですから気をつけていてくださいよぉ。みなさんの行動は眼で監視していますからねー」
先生の肩の上で翼のついた眼がパタパタと飛んでいる。
索敵監視用の使い魔である眼か。
作るには高度な技術のいる魔法生命体だとラッセルが言っていた。
チーム番号は1番だったので、1の数字のついた扉の前で僕らは待機した。
僕はあらかじめ配られていた館の見取り図に目を通しておく。
おそらくは要所要所にトラップや課題が待っているのだろう。
課題を解決しながら3階の奥まで進み、鍵を取ってきたら合格というわけだ。
なかなか面白そうな試験である。
そんなことを考えていたら突然アネットに話しかけられてしまった。
試験よりも話しかけられる方が緊張する。
「改めてよろしく。私の得意魔法は火炎系で武器は剣を使うわ。みんなは何が得意なのかしら? 一緒に試験に挑むにあたって、貴方たちの得意分野を教えてくれない? その方が上手く協力できると思うの」
な、なるほど。
それなら緊張することないな。
自分の得意魔法を発表すればいいだけだ。
でも、スムーズに言えるように頭の中で練習してから……。
僕が練習をしている間、タオが先に自己紹介した。
「俺は魔法薬学が得意で、錬金術師になるのが夢だ。攻撃系、補助系、回復系など、いろいろな薬品を持っている」
ただのエロガキじゃないんだ。
しかも魔法薬が得意だなんて、少し親近感を感じる。
「僕の両親は薬師だったんだ。だから僕も薬草に関しては少し詳しいんだよ」
そう言うと、タオは僕に興味を持ったような視線を向けてきた。
「君は貴族じゃないの?」
「そんな風に見える? この服装をみればゴリゴリの庶民だってわかるだろう?」
「そっかぁ……、特待生候補だからてっきり貴族かと思ってたよ」
どうやらタオ・リングイムは僕を貴族と勘違いして敬遠していたようだ。
庶民をバカにする貴族は多いから、それも仕方のないことだと思う。
「君は?」
「父は神官だよ。カンタベルの小さな神殿で助祭を務めている」
「おお、都会っ子なんだね」
山奥から出てきたからタオがカッコよく見えてしまった。
「君はどこから?」
「ロメア地方」
「ロメア地方だって!? ふくよかな褐色美人が多い地域じゃないか!」
そう言うタオはさっきのスケベ面に戻っていた。
「そ、そういう話らしいね……。僕は山の中に住んでいたから、よく知らないんだ」
村長の娘さんがまさにそんな感じの人だった。
「おいおい、大損の人生を送っているな。見るだけなら犯罪には問われないぞ。俺なら毎日鑑賞に出かけるけどな」
やっぱりこいつはエロガキだ。
「コホン!」
アネットに睨まれてタオは口を閉じた。
アネットって少し勝気なところもあるんだな。
「じゃあ、貴方の得意魔法も教えて」
僕は頭の中で練習していた言葉を口に出す。
「僕の得意なのは土魔法。それから防御系のスペシャリストだ」
「スペシャリストって?」
アネットに見つめられてクラっとしてしまった。
そんなに見つめられると、またうまく喋れなくなる。
「と、とにかく僕が前衛を務めたいけど、いいかな?」
そうすれば他の二人がけがをすることはないはずだ。
「本当に大丈夫? かなり緊張しているみたいだけど」
アネットもタオも心配そうに僕を見ている。
だけど、ぎこちないのは会話に困っているからであって、試験がこわいわけじゃない。
「うん、とりあえず君たちに防御魔法をかけておくよ」
細かい手のフリックに多重構造の魔法陣が次々と空中に浮かび上がった。
「え、なにこれ!?」
「立体魔法陣だと!?」
魔法展開の速さには自信がある。
僕は一気にアネットとタオに防御魔法を重ね掛けした。
「すごい……、防御魔法の五重掛けだなんて」
「正確には六重だよ……」
これだけ重ね掛けしておけば、魔物の不意打ちを食らっても耐えられるはずだ。
「パパ以外にこんなことができる人がいるなんて驚きだわ」
「パパ? 君のお父さんかい?」
興味が湧いて質問したんだけど、アネットは横を向いて話を逸らしてしまった。
そして大音量のホイッスルが鳴り響く。
ついに試験が始まったのだ。




