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魔女と世界と魔導回路 作者:ミーシャ

序章  ~それは目覚め~

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~魔王・ラーリン~

 マクスウェルは、アンリ達が逃げたことを確認するとラーリンに向き直る。
 ラーリンは笑みを浮かべてマクスウェルを見つめている。

「さて、お待たせしてしまったかな?」
「いいえ。問題ないわ」
「まずは質問をしたいのだがいいかね?」
「ええ、もちろんよ。何が聞きたいの?」

「ではまず確認だが、今回の首謀者は君かね?」
「ええ、正解よ」
「なぜこんなことをしたのかね?一歩間違えば死者が出ていた。それどころか出場者である君にさえ危害が及んだかもしれないのに」

 ラーリンは手で口を押さえて、おかしそうにクスクスと笑う。
「そうじゃなきゃつまらないわ。戦いとは傷つけあいよ?違う?」
 ラーリンはその赤い獣目でマクスウェルを見つめる。

「・・・では目的はなにかね?」
「優秀な人間を発見すること。そしてネアを殺すことよ」
「なるほど。素直に答えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
 ラーリンはにっこり微笑む。

「それで、どうするかね?このまま投降してくれるというなら無駄な戦いは避けられるのだが?」

「あら?それはダメよ。戦ってもらえなかったら何のためにここまで話をしたのかわからないわ」
 ラーリンは「何を言ってるの」とでも言いたげな顔でマクスウェルを見つめる。

「そうか。それは残念だ」
 マクスウェルはフッと笑うと魔導回路が光を帯びていく。
 ラーリンはその様子を不敵な笑顔を浮かべて見ていた。

 マクスウェルは手を前に出すと魔法を唱えた。
龍の炎(ドラゴンフレイム)
 マクスウェルの手から龍の形をした凄まじい熱量をもった炎が生み出され、ラーリンを飲み込んでいく。

 マクスウェルは黙ってその炎をじっと見つめた。
 炎の勢いが弱まってくると中から黒い糸が集まってできた球体が姿を現す。

 糸がほどけていき中からラーリンが現れる。
 そして今度はラーリンが手を前に出す。
 そしてゆっくりと手をひっくり返すとにやりと笑い、ぎゅっと手を握る。

 マクスウェルが後ろに飛んだ瞬間、その場に見えない刃が振り下ろされたのか、いきなりバツ印の斬れたような跡がつく。

「ふむ。見たことがない魔法だな。なんという魔法かね?」
「ウフフ・・・糸魔法よ」
 ラーリンは不敵に笑うと指を鳴らした。

 マクスウェルの周囲に糸が集まり、黒い槍が作られていきマクスウェルに向かって飛んでいく。
 マクスウェルは槍を避けながら炎弾フレイムバレットを形成し槍の1つにぶつけてみるが、槍は無傷でマクスウェルに向かって突っ込んでくる。

(なかなかの硬度のようだね)
 マクスウェルは炎弾フレイムバレットの形を槍に変えると飛んでくる黒い槍にぶつける。
 黒い槍は粉々になって消えていった。

「あら? もう対処されちゃった? じゃあ次のはどうかしら? 」
 ラーリンは両手を広げ、手を前に出し振り上げると一気に振り下ろした。
 マクスウェルは少し身体を横に跳ぶ、その間を大きな斬れたような跡ができた。

 マクスウェルは片手を小銃のように構えラーリンに向ける。
龍炎砲ドラゴンキャノン
 その瞬間ものすごい勢いで龍の顔をした炎弾がラーリンに襲いかかる。

 ラーリンはガードせず、そのまま吹き飛ばされ倒れ伏せる。
 マクスウェルはラーリンを見下ろしながら、ゆっくりと近づいていく。

 ラーリンは髪で顔が隠れ見えなかったが、倒れ伏したままニヤリと口元が歪む。
 マクスウェルは、それを見て立ち止まる。
 ラーリンは右腕をマクスウェルの方に向けるとつぶやいた。

「捕まえた・・・」
 ラーリンが中指を折り曲げた瞬間、心臓が跳ね上がった感覚に襲われる。
「なんだ・・・? 」
心臓操作ハートコントロール破壊ブレイク
 ラーリンが手をぎゅっと力強く握った。

 少しの間マクスウェルは呆然としていたが、いきなり大量の血を吐き出す。
 手で口を押さえるが血はとめどなく噴き出し、やがてその状態のまま膝から崩れ落ちた。

 ラーリンは立ち上がると服に付いた誇りを払う。
 そして、上を向くと空を見上げてつぶやく。
「今日はいい天気ね。あなたもそう思わない?」

 ラーリンはマクスウェルに尋ねるが返事はなかった。
 ラーリンはクスッと笑う。
「もう少し時間がいるなら、待つけど? 」

 その瞬間、マクスウェルの体が緑の炎に包まれる。
 炎は心臓付近に集まっていった。
「やれやれ。直接心臓をつぶされる感覚とはあまりよいものではないな」
 マクスウェルは口元の血を拭うと立ち上がる。

 マクスウェルの体は先ほどと違い、全身に熱に包まれているかのように白い煙が上がっていた。
「その魔法は知らないわね。なんていうの?」
「これは私のオリジナルでね。名前は考えていない。だがあえて言うならそうだな・・・不死炎フェニックスだな」

 ラーリンは楽しそうに笑うと無邪気に話した。
「あなた面白いわ。じゃあここから本気でやりましょう。出し惜しみはなしよ? 」
「そうだな。いいだろう」

 そういうとラーリンの周りにまるで触手のような黒い糸が伸びあがる。
 それはラーリン達の頭上でゆっくり旋回し、剣や槍、銃などの様々なものに変化していく。

 マクスウェルはその様子を見るとポケットから通信機を取り出し、一言だけつぶやく。
「ドアルディに伝えろ。会場に結界を作れとな、じゃなければ国が亡びるかもしれんぞ? 」

 ラーリンはいまだに再現なく触手のような黒い糸を生み出し、周りを埋め尽くしていく。

 ラーリンは無邪気な笑顔を見せながら、楽しそうにその場でクルクル回る。
「さぁ、お客様!存分に楽しんでいってくださいませ!これがわたしの2大魔法劇の1つ【黒の狂宴(ブラックメイデン)】でございます!」

 頭上には無数の黒い糸でできた武器と辺り一面に黒い糸が漂い、視界が悪くなる。

 そして攻撃はいきなり始まった。
 マクスウェルは右腕を握りこむと魔力を溜め始める。
 漂っていた無数の黒い剣と槍のいくつかがマクスウェルの方に向くと、マクスウェルに向かって勢いよく飛んでいく。

 マクスウェルは左腕を横に突き出すと何重にも自分の周りに炎の結界を形成する。
 無数の剣と槍は機関銃の斉射のごとく凄まじい勢いで結界に当たっていく。
 結界は少しずつ割れていき一枚また一枚とはがされていった。

「ぐぅ・・・これでも一枚一枚、Sランク魔物の攻撃でも防ぐ強度はあるのだがね」
 ラーリンが左手の中指と人差し指を立てるとマクスウェルの結界の上に巨大な鎖で繋がれた巨大な鎌が現れる。
死神の大鎌(アダマス)
 ラーリンが手を下に下ろすと死神の大鎌(アダマス)は巨大なうねりをあげて、結界に当たる。
 結界は一気に複数枚貫いた。
 さらにあまりの衝撃にマクスウェルは結界ごと壁まで吹き飛ばされる。

「ぐぅ! 」
 マクスウェルは結界を維持したまま耐える。
 そこに間髪入れずに剣と槍の斉射が始まり、さらに少しずつ削れていく。

「うふふ。どうしたの?これで終わりかしら?」
 そう呟いた瞬間、爆発が起き剣と槍が吹き飛ぶとそれと、同時に熱線のような光が上空に漂っていた糸を一閃し焼き尽くしていった。

 ラーリンは驚いたように頭上を見上げていると、マクスウェルは魔法により作り出した赤く燃えている剣を軽く振る。
「久しぶりにこいつを出したが、やはり使い勝手が難しいな」
「その剣はなんなの?」
「【神炎の剣(レーヴァルーン)】。扱い一つ間違えると街が消し飛んでしまう可能性があるから、あんまり使いたくはないが仕方があるまい」

 ラーリンはしばらくマクスウェルを見ずに消えていく自分の黒い糸を見ていたが、やがてマクスウェルを見ると笑顔を見せる。

「すごいわ、すごいわ!私の【黒の狂宴(ブラックメイデン)】が一瞬で消えちゃった!」
 自分の魔法が消し飛ばされたにも関わらず、ラーリンは無邪気に騒ぎ立てる。

「じゃあ、これが最後の魔法劇。これはお母様の魔法の模造品。あなたに特別見せてあげるね」
 そういうとラーリンは祈るようなポーズで魔力を溜め始める。

「それをさせると思うかね?」
 そういうとマクスウェルは、神炎の剣(レーヴァルーン)をラーリンに向かって振ると、先ほどと同じ炎の一閃が走るがラーリンの前に巨大な黒い糸が集まった触手みたいなものが現れ身代わりとなる。

「ウフフ。無粋ね? こういう時は待ってくださるのが紳士じゃないの?」
「普段なら良いが、今は余裕がない物でね。許してくれたまえ」
「仕方ないなぁ。じゃあ少しだけ遊んであげるね」

 そういうとマクスウェルの後ろから先ほどと同じ触手が生えてきてマクスウェルに襲いかかる。
 マクスウェルは華麗に避けるとすぐさま斬りつけ、一本また一本と燃やし尽くしていきラーリンに攻撃を仕掛けるが、すかさず触手はその間に割り込みその攻撃を防ぐ。

「集え、集え、集え、黒き糸達よ。その尊き大樹を模倣せよ。我が生み出すは命であらず、我が生み出すは魂無き人形達なり。されど人形達は踊るだろう。生者への渇望を糧にして、黒き楽園の大樹をここに呼び起こせ。【育て、黒き世界樹(Black Tree)よ】」

 詠唱を終えると地面が小さく揺れはじめラーリンとマクスウェルの辺りに激しい黒い渦が生み出されていく。
 その渦はやがて上へ上へと延びていき、ついには天に届くほどの高さになる。

 やがて渦は収束していき、大きな一本の黒い大樹の幹をかたどっていく。
 その大樹の幹が出来上がると、次は大樹のいたるところから枝らしきものが生えていき、やがてヴァレリア王国の上空全てを飲み込んでいった。

 ーーまるで()()()()()()だ。

 その姿は枯れ木そのものだった。
 その大樹には葉は一枚もついておらず、枝のみが幹のあらゆるところから生えていた。

「どう?どう!?すごいでしょう!?綺麗でしょう!?」
 ラーリンは黒き世界樹(Black Tree)を見ながらマクスウェルに尋ねる。

 マクスウェルは驚きで声が出なかった。
(これは神話の木か?馬鹿な・・・こんなもの人間が作れるはずがない)
 マクスウェルは思わずつぶやいた。

 それはこの世界にいるはずもない、おとぎ話の住人達。
 人間にはできないことを平然と行う彼らに人々は畏敬の念をこう呼んでいた。
「魔王・・・」
+注意+
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