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夢の才能

 ホームの見習いスタッフとなった夜光の最初の仕事は、国王ゴウマの娘セリナの護衛だった。

セリナはラジオパーソナリティーになるためにラジオ局{スマイル}で1週間実習を行っていた。

そして、今日が実習最終日。夜光はそのセリナと案内役として来たセリナの妹セリアとセリナの友人マナと昼食を食べることにした。



 スマイル局を出て4人は繁華街へと向かった。

まるで祭りでもあるような賑わいを見せ、昼時なこともあるせいか、特にレストランからは、客引き用のスタッフまで出払っている。


 その道中夜光がセリナに「何食うか決めてんのか?」と行き先を尋ねた。


「ラーメンなんてどうかなって思ってるんだけど」


「ほう。悪くはねぇ」


鉱物であるラーメンが上がると、夜光は年甲斐もなく、嬉しそうに口元を緩ませた。


「2人はどう?」


 ラーメンとは言ったが、マナとセリアの要望も聞こうと、セリナは2人に声を掛ける。


「私はラーメンでいいよ」


「わっ私も」


 食べ物にこだわりがない2人は、セリナの上げたラーメンに賛同した。


「じゃあ決まりだね」


 空腹によって高まる食欲が夜光達の足を速める。


 ラーメンと決まってからしばらく歩くと、少し古めかしい店に到着した。

開店時間が過ぎてから数分した経っていないというのに、店内はほぼ満員で、外にも4人ほどの列ができている。


「ここだよ。この国で一番人気のラーメン店{天下統一}だよ」


 店の前にはすでに列ができていたので夜光たちも並ぶことにした。

セリナによるとまだすいている方らしいが、待つことが不得意な夜光にとってはドロップアウトしたいほどおn行列であった。


それからさらに30分後・・・

ようやく店に入れた夜光たち。


「「「「らっしゃい!!」」」」



店員たちの元気な歓迎と店内を漂うラーメンの匂いが、4人の口と鼻に活気を与える。


 ボックス席に案内され、夜光がメニューを見たとき、彼は重大な問題に出くわしてしまった。


「・・・なんて書いてんだ?」


 メニューに何か文字が並んでいることはわかるが、それが何を意味しているのかがわからない。



「あっ。そっか。お兄さん異世界の人なんだね」


「まあな・・・そういえば、俺なんで言葉はわかるんだ?」

 

「言葉には人間の気持ちが含まれているので、心界では読み書きができなくても心があれば言葉は通じるんです」


 その疑問に答えてくれたのは、意外にもセリアだった。

一目を気にしているのか、しきりに周囲を見渡しながら、夜光に耳打ちで教えてくれた。


「へぇ~。(とりあえず、言葉は通じるとだけ覚えておくか・・・)」




 仕方なくセリアにメニューを読んでもらい、夜光は店長おすすめの天下ラーメンとチャーハンを頼んだ。

ほかの3人は天下ラーメンにしたがセリナはみんなで食べるために餃子を追加した。


 料理が来るまで、セリナが世間話程度に夜光のことを聞いてきた。


「お兄さんってどうしてホームで働くことにしたの?」


「金のために決まってんだろ?」


 夜光はダルそうにテーブルにひじを立て、食事前だと言うのにタバコをふかした。

周囲にタバコを吸っている者はいないので、禁煙の可能性もあるが、禁煙席だと言う壁紙や注意する店員もいないので、夜光は遠慮なくタバコを味わう。



夜光の答えに思わず苦笑いするセリナ。


「じゃあ、セリアちゃんはお兄さんとどこで知り合ったの?」


いきなり話を振られたセリアは戸惑いながらも絞り出すような声で返す。


「ほっホームで知り合いました。・・・それで・・・あの」


 あの日の夜光との記憶を思い出しているのか、かなり顔を赤らめているセリア。

今にも羞恥心で気を失いそうなセリアを気遣ってか、単純に気になったのか、今度は夜光が質問を出す。


「そういう姉ちゃんはそこの黒髪姉ちゃんとどう知り合ったんだ?」


「私とマナちゃん? えっとね。実習初日の日にペアを組んでトーク練習をしたんだけど、その相手がマナちゃんでね。2人で練習する内に仲良くなったの。マナちゃんにはいっつも迷惑かけちゃっているんだけど」


”てへっ”と舌を出すセリナにマナが照れながらも笑顔でこう返す。

「セリナちゃんがいてくれたおかげで私は実習を続けられたんだからお互い様だよ」


「ありがとう。マナちゃん」


 2人の仲むずましい姿を目の当たりにした直後、夜光達のテーブルに食事がラーメンが届いた。

待ちかねたラーメンが目の前に運ばれ、夜光達は話を忘れて備え付けてある箸に手を伸ばす。


「やっと飯だ」

夜光が麺に箸を伸ばそうとすると、セリナが強い口調で「お兄さん!まずは”いただきます”が先だよ!」と小学生を叱る教師の如く注意を促す。


長い間”いただきます”など言ったことがない夜光にとっては面倒事でしかないが、無視して箸を進めたら何をするかわからない勢いであったので、ぐっとこらえた・


「ちっ!わかったよ」


「じゃあ、みんな!せ~の! いただきます!」


「「いっいただきます」」


「いただきます・・・(ダルッ)」


 学校の給食のようなスタートを切るが、夜光はようやく箸を進めることができた。




「ジュルジュル・・・へぇ~結構うまいじゃん」

スープはコクがあり、麺はモチモチしていて、チャーシューは肉厚が薄いがしっかりと味がしみ込んでいた。


「ジュルジュル・・・うーん、何度来てもここのラーメンは最高だね!!」

行儀よく静かに食べるセリアとマナとは違い、セリナはマナーなどお構いなしに、音を立てて、子供のように味を楽しんでいた。

一国の姫とは思えないその光景に夜光は「(ガキだなこいつ)」と彼女が子供っぽいことを頭の隅に入れつつ、箸を進めるのであった。


「ごちそうさまでした!」


「「ごっごちそうさまでした」」


「はいはい。ごちそうさん」


 食べ終えた4人はまだ並んでいる人たちに配慮してすぐさま会計をすませて店を後にした。



 スマイル局に戻った4人は、再びさっきの休憩スペースに向かった。

昼休みなのにもかかわらず、休憩スペースには誰もいなかった。

セリナによると、この休憩スペースはソファ以外何もなく、ほとんどの人は自販機や食堂も兼ね備えているもっと設備の整った休憩スペースにいるらしい。

とはいっても、静かな方がいい夜光とセリアにとっては心地よい空間であることには違いない。


4人はソファに座ると午後のことについて話をした。


「それで、午後はどうするんだ?」


そう切り出した夜光にセリナは「午後は自由放送って言うのをやるんだ」とウサギの絵が描かれているメモ帳を見て予定を発表する。



あまり聞きなれない単語に夜光が「自由放送?」聞き返す。


「そのままの意味だよ?ラジオ放送で自分の好きなことを話すの。自分の趣味とか好きな食べ物とか」


「それが終わったら実習は終わりか?」


「そうだよ。だからごめん。2人はもう少しだけ待ってて」


手を合わせて申し訳なさそうな顔のセリナに「わかった、それが終わったら帰る」とやる気のない仕事が早く終わることを祈りつつ、セリナを待つことにした。




 セリナと自由放送の内容を考えるために一足早く実習生の控え室に向かった。

マナは1度トイレに行ってから行くと言って一旦別れた。

夜光はタバコが切れたのでセリアを連れて、近くに売ってないか探しに行った。



「いそがなきゃ・・・?」



 セリナが控え室に着くと、控え室から騒がしい声が聞こえてきた。

声を聞くとほかの実習生のようだ。なにやら男女が笑いながら話している。

セリナは控え室のドアノブを回そうとしたとき、セリナの耳に心をえぐられるような言葉が入ってきた。


「それにしても、あの放送はひどかったよな~」


「ホントホント。あれでよくラジオパーソナリティーになろうなんて思ったわよね~」


「同じ質問を繰り返すわ、ゲストの曲を忘れるわ、そんな素人レベルのミスなんてやらかしたら、俺なら恥ずかしくて、この局の屋上から飛び降りちまうよ!」


「あたし、あの放送のあとに収録室入るのホント恥ずかしかった! ほかの実習生も絶対恥ずかしかったよ」


「だいたい、初日からひどかったよな?トークなんて完全に素人だし、何度も収録の仕方を間違えるし」


「マイクのON/OFFが分からなくて、パニクってたのは笑えたわ。 お前今まで何してたんだよって思うわ」


「まあ、どうせお姫様とってはお遊戯みたいものなんだろうけど。ああいうのに限っていざパーソナリティーになれない現実に直面したら、権力と金でどうにかしようとするんだよ」


「トーンさんだって絶対あきれてるわよ。あんな無様な放送」


「お姫様じゃなかったら、あんな世間知らずのバカ女なんぞ体を売るくらいしか能がねぇぜ。きっと」


「まぁ、どの道終わりねあの女は。お姫様はお姫様らしくお城で白馬の王子様でも待ってなさいっての」


「ハハハ!!!今時、白馬の王子様はねぇだろ!?」


「わからないわよ?ああ言う脳内お花畑の女って、現実と空想の区別がつかないから。キャハハ!!」


 まさか他人を罵倒する話を本人がすぐそこで聞いているなんて夢にも思わないだろう。

セリナの目から大粒の涙があふれ出した。

もちろん自分が失敗続きで周囲に迷惑を掛けていることは自覚している。

マナのようにそれを笑って許してくれる者もいれば、彼らのように疎ましく思う者もいるだろう。

頭ではそう理解しているが、実際に自分を蔑む言葉を耳にすれば、冷静さを失って悲しみがこみ上げてくるのも人の常。

何より、自分の夢を否定されたのがセリナには、身を切られるようにつらい言葉だった。

セリナはそのままどこかへと走って行った。



 セリナたちと別れて、数時間が経った。

夜光とセリアは、スマイル局から離れた所にあるタバコ屋でタバコを3箱買い、スマイル局に戻ってきた。

セリアはなぜか顔を赤らめてぼそぼそと独り言をつぶやいていた。

実はタバコを買いに行った際、タバコ屋の親父が姫君であるセリアが男とタバコを買いに来たことに驚き、誘拐を疑っていたので、「俺達、親公認で付き合ってるから、余計なこと言わないでくれよ?おっさん」とわざとらしくセリアの肩に手を置き、タバコやの親父に軽く口止めしておいた。

セリアが顔を赤らめて明らかに動揺していたので、親父はその言葉を信じた。

それ以降、セリアはしばらく顔を赤らめたままになってしまったという訳である。



 そんなこんなで局に戻ると、周囲は騒然としていた。複数のスタッフが慌てた様子で何かを探しているようにあちこちに移動していた。


「なんだ?この騒ぎ」


2人が状況を把握できないでいると、2人の元にマナが走ってきた。


「黒髪の姉ちゃんじゃねえか。どうしたんだ?」


マナはだいぶ息が乱れていたが、息を整えることもせず、夜光とセリアに言った。


「あの!セリナちゃんを見ませんでした!?」


「お姉様ですか?見ていませんが」


「セリナちゃんがいなくなってしまったんです!!」


「!!」


「・・・」


 セリナがいないことを聞き、さすがにセリアの赤くなっていた顔は急速に元に戻った。


「自由放送の順番になっても全然収録室に来ないからスタッフさんたちが探し回っているんです」


 普通なら実習生がいない場合、スタッフが数人で捜索するが、一国の姫であるセリナであれば話は別だ。

このまま行方を眩ませるようなことになれば、国の問題になってしまうため、スタッフ達は慌てふためいているのだ。


「あの、私もう少し探してきます。」


そういうとマナは再びセリナを探しに行った。


そして、セリアも心配になったのか夜光に一礼し「あの、私も探してきます」

とセリナを探しに行った。


「・・・」


 夜光は買ったばかりのタバコの箱から1本取り出し、ポケットから出したライターで火を着け一服し、とぼとぼと歩きだした。



スマイル局、屋上……。

普段から立ち入り禁止になっており、人がほとんど立ち入らない場所。


 そこに設置されている古びたベンチにセリナは、両足抱えるように座っていた。

目からはまだ涙が溢れていて、少し赤く腫れていた。

控え室での実習生の言葉にショックを受けているのだが、実は理由はそれだけではない。


 屋上で泣いている時にふと思い出したのだが、さきほどセリナをバカにしていたのは、実習初日からいろいろ親切にしたくれた人達の声だった。

マイクのON/OFFを教えてくれたり、流行がわからないセリナにいろいろ情報を教えてくれたりと、セリナの中でマナほどではないが信頼していた2人だった。

優しく接しているように演じ、心の中では自分のことを見下していた。

純粋な心の持ち主であるセリナにとって、人の醜い言葉は、普通の人間以上に心に突き刺さる。


「やっぱり、私なんかがラジオパーソナリティーになるなんて無理だったのかな・・・」


 初めて口にした後ろめいた言葉。

今まで心の中で浮かび上がったことはあったものの、決して口にしなかった言葉。

実習最後の放送でのミスと人の醜い心が、彼女の口からこの言葉を引き出させてしまったのだ。



「なんで無理だとわかるんだ?」


 後ろから声を掛けられたセリナが振り返ると、そこに立っていたのは夜光であった。

セリナは無意識に涙を拭うことはできるも、先ほどまで見せていた笑顔までは出すことができなかった。


「お兄さん・・・どうして」


「タバコを吸いに来ただけだ。。局の中は、姉ちゃんを探していて騒がしいからな。落ち着いてタバコも吸えねぇ」


 夜光は咥えていたタバコの煙を軽く吐き、「隣、座るぜ?」とセリナの隣に腰を下ろす。


「そうなんだ・・・みんなに悪いことしちゃったな」


 最初に会った時とは別人のように暗く、悲しみに満ちていた彼女の顔。

夜光は「自由放送とやらに行かねぇのか?」と尋ねると、セリナはうつ向いて首を横に振った。


「私なんかが行っても邪魔なだけだよ」


「邪魔?」


「・・・私には才能がないんだもん。そんな私が行ったって邪魔なだけだよ」


 夜光は咥えていたタバコをポケットから取り出した携帯灰皿にしまい、口の中に残っていた煙をフゥーと吐き出した。


「初耳だな。夢を追うのに才能がいるなんて」


「実際に才能のない私は、いつも失敗ばかりで、マナちゃんやほかの人にもいっぱい迷惑かけて・・・」


 セリナの目にこらえきれなくなった涙が再び溢れてきた。


「こんな思いをするくらいなら、夢なんて追わなければよかった!」



 セリナにとって夢を追うことは楽しくて仕方ないことだと思っていたからだ。

そのためには、努力は惜しまないと決めていた。

明るく元気に生きていくと決めていた。

しかし、現実は違う。

どれだけ、頑張っても努力は実らず、挙句の果てに信頼していた人たちに自分自身と夢を否定され、バカにされた。

もうセリナの心はもう限界だった

そんなセリナに夜光は少し強い口調で言った。


「お前、才能の意味わかってんのか?」


「・・・えっ」


「才能ってのは確かに夢を叶えるのに有利なものさ。 だが、それだけだ」


「どういう意味?」


「才能があっても夢を追えずに挫折した人間もいる。その才能を生かさず別の道を進む人間もいる。だから才能が夢を左右する訳じゃねぇ」


「じゃあ、何が大事なの?」


 夜行は空を見上げながらゆっくりと口を開く、


「お前のようにバカ正直に夢を追っている奴がよく言ってるよ。 夢を追うことで1番大事なのは、【自分を否定しないこと】だって」


「・・・自分を否定しないこと?」


「自分にはダメだとか、無理だとか、自分自身を否定してしまったら、才能があろうが努力しようが、夢は永遠に叶わない」


「・・・」


 夜光がふとセリナに尋ねた。


「お前はなんでラジオパーソナリティーになりたいんだ? 目立ちたいからか?金がほしいからか?」


「違うよ!」


 セリナは強い口調で否定し、思わず感情的になって立ち上がった。

セリナはそのまま静かに口を開いた。

セリナがまだ10歳の時に、ゴウマの仕事の関係でラジオ局に行ったセリナ。

ゴウマが局のスタッフと打ち合わせしている間、セリナは護衛の人と待っていたが、退屈になって、こっそり護衛の目を盗んでラジオ局を探検に行っってしまった。だが、あちこち探検しているうちに迷ってしまった。

誰かに聞こうにも周りのスタッフは国王であるゴウマが来ているためか、かなり忙しそうに走り回り、セリナには全く気付かず、本人も気を使って声を掛けることができなかった。

どうすれば良いかわからず泣きそうになった時、泣きじゃくるセリナに声を掛けてくれた人がいた。

当時、大人気だった女性ラジオパーソナリティーの【リサータ ルーチー】だ。 

リサータに迷子になったことを言うと、彼女はスタッフにセリナのことを伝え、せっかくだからと自分の番組にセリナをゲスト出演させたのだ。ほんの少しだけの出演であったが、セリナにとっては、宝物のような時間だった。

その時、セリナは決意したのだ。

リサータのようなラジオパーソナリティーになりたいと。


「でも、やっぱり私みたいな世間知らずの女の子じゃ無理なんだよ。

トークも下手だし、マナちゃんにもいっぱい迷惑掛けたし・・・」


 またも自分を責めてしまうセリナに夜光は立ち上がって優しく頭を撫でた。

セリナは驚きはしたものの、苦しむ心を癒す拠り所を求めるかのように彼女は夜光の胸に顔をうずめた。


「よく聞け。夢を描く人間は山のようにいる。だけど、その夢に向かって努力する奴はそんなにいない」


「・・・どうして?」


「人間は自分のためか家族のために働かなくちゃならねぇ。そうしないと人間として生きていけねぇからだ。だけど、ほとんどの人間がそこで終わる」


「どういうこと?」


「夢に向かって努力する余裕がねぇってことだ。毎日毎日、働かないと生きていけねぇ。

そんな中で、さらに努力するなんて誰もやりたくねぇんだ」


「でも、夢を叶えた人だっているんじゃ・・・」


「そりゃいるだろうけど、それは夢を追う意志がとんでもなく強い人間か自分を支えてくれる人間がいる人間くらいだと思うぜ?」


「そうなんだ・・・」


「現にお前には家族がいるから、夢を追えるんだ」


「・・・」


「だから、お前は何も考えず夢を追うことができる。だけど、いつまでも親がいてくれるわけじゃねぇし、どれだけ追いかけても、夢を叶えることができないかもしれない。それでも良いって奴だけに夢を叶えられる可能性が与えられるんだ」


「夢を叶えられる可能性?」


「お前がその可能性をもう信じられないのなら、諦めた方がいい。もう1度信じてみるのなら、夢を追い続けろ。誰になにを言われようがお前の選択を変えることはできねぇんだからな」



「(私・・・このまま諦めていいのかな? お兄さんの言う通り、私はまだ恵まれた方だよね?私にはお父さんがいる。セリアちゃんがいる。マナちゃんがいる。いろんな人が私を支えてくれている!なにより、私はやっぱりラジオパーソナリティーになりたい!)」


セリナはゆっくりと顔を上げ、「ありがとう、お兄さん」と声も 表情も元の明るい顔に戻った。


「礼はいいけど、行かねぇのか? 放送」


 セリナは再び顔をうずめてこう返す。


「もう無理だよ。自由放送の時間はもう過ぎちゃったし。残念だけど、今回は諦めるよ」


 自由放送を諦めようとするセリナに対し夜光が尋ねた。


「おい、自由放送ってのは自由に放送するってことなんだろ?」


「えっ? そっそうだけど」


「・・・ちょっと付き合え」


「どっどこに?」


「今日は、暇すぎた。 これ以上暇をもて余すと死んじまう」


「・・・?」


 セリナはこの時まだ知らなかった。夜光のとんでもなくはた迷惑な考えを……。

夜光「結構うまいラーメンだったぜ」

誠児「お前が女と酒以外のことに関心を持つなんて珍しいな」

夜光「ラーメンにはずいぶんと世話になっているからな。 特にカップラーメン」

誠児「そういえばよく食ってたな」

夜光「カップラーメンやコンビニ弁当で2年くらい食いつないだこともあるからな」

誠児「お前、栄養が偏るぞ?」

夜光「そうか? 俺、健康診断では常に健康そのものだって言われてるぜ?」

誠児「酒を毎日浴びるように飲んで、食生活まで偏っているヘビースモーカーが健康そのものってのは、未だに信じられないな」

夜光「ある意味チートだな、俺」

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