最強のエルフ
遅くなってごめんなさい。
最近風邪ぎみで、小説を書くスピードがいつも以上に遅くなっています。
これからもあまり無理せずに、更新していきます。
ビスケット病院で偶然出会ったレイランは、傷を負い、心を閉ざしていた。
昼食を食べる中で、笑騎が新しいアストメンバーがビスケット病院に入院していたことを思い出した。
昼食後に会いに行くことになった夜光達に相席を求める男、レオスが現れた。
「レオス! ここで何をしている!?」
スノーラは大声で叫び、レオスの銃を向ける。
夜光とキルカ以外の者は、突然現れたレオスを前にして、身を構える。
「まあ、落ち着けよ姉ちゃん。 ここは病院だ。 暴れたりすれば、患者や医者に迷惑が掛かるんじゃねぇか?」
レオスの言葉を聞き、スノーラはふと周囲を見渡す。
食堂で昼食を取っていたナースや患者達が、銃を持つスノーラを怯えた目で見ている。
「スノーラ。 こいつの言う通りだ。 今は騒がない方が・・・」
「わかった。 みなまで言うな」
ルドにまでなだめられたスノーラは、銃をしまい、「お騒がせして申し訳ありませんでした」と周囲の者達に謝罪した。
「レオス・・・あぁ、俺が玉をたたき割っってやったあいつか」
ここで夜光がレオスのことをようやく思い出した。
「・・・お前、嫌なことを思い出させるなよ」
嫌そうに頬を吊り上げたレオスは自らの股間を見て、当時の痛みを思い出してしまう。
レオスは以前の戦闘で、アストを全滅寸前まで追い詰めたことがある。
その時、夜光がセリアとセリナの協力により、レオスの股間を攻撃するという、男にとって最も恐ろしい方法で逆転した。
「何をしてんだ? こんなところで」
夜光が隣で食事をしているレオスに尋ねる。
「この病院にちょっと用があってな? ついでに飯を食いに来ただけだ」
「用? なんだそれ」
「悪いが、それは教えられない」
レオスはそういうと、それ以上答える気はないと言わんばかりに、箸を進める。
「まさか、病院の誰かを殺そうとしているのか?」
ルドがそう聞くと、レオスは口に含んだ食べ物を一度水で流し込んでからこう返す。
「それもノーコメントだ」
それだけ言うと、レオスは再び箸を進める。
『・・・』
全く話にならないため、沈黙が辺りを包み込む。
そんな中、レオスの隣に座っている夜光も食事を再開し始めた。
「あんた、この状況でよく食べられるわね」
敵が隣にいるにも関わらず、何事もなかったかのように食べ始める夜光に、ライカは呆れた。
「腹が減っているからな。 それにこれ以上むさくるしい男と会話なんぞしたくない」
それ以降、昼食が終わるまで、夜光がしゃべることはなかった。
「・・・みんな、とりあえず飯でも食うて落ち着こうや。 こんなこと言うのもなんやけど、仮に今レオスと戦っても、みんな多分負けると思うで?」
『・・・』
笑騎の言っていることは、キルカとマナを除くメンバー達全員が理解していた。
レオスと初めて戦った時も、レオスはかなり疲労していたにも関わらず、夜光達の攻撃を真正面から受けたり、一撃で夜光達をほぼ戦闘不能状態まで追い詰めるほどの実力差を見せつけた。
笑騎の言う通り、全く疲労していないレオスに真正面から全員で挑んでも、勝ち目はないだろう。
「・・・」
悔しそうにレオスを睨むルドに、冷静さを取り戻したスノーラが耳も語でささやく。
「ルド、騎の言うことは最もだ。 今は抑えておこう。 それに、この病院にアストメンバーがいるのなら、我々の戦力アップにつながるかもしれない」
「・・・そうだな」
悔しさを押し殺し、食事を再開するメンバー達であった。
昼食を終えた夜光達は、さっそく新メンバーのいる病室へと向かうことにした。
「え~と・・・メンバーがいるのは112号室やから、この案内板からすると・・ここやな」
笑騎が自身のメモと壁にある病院の案内板を照らし合わせ、新メンバーのいる病室を確認する。
「その病室に、”ニク ブルドック”さんがいるんだね」
「”ミヤ スペルビア”だよ。 セリナちゃん」
「あっ! そうだったそうだった。 ありがとう、マナちゃん」
セリナとマナのコントのような会話を流し、夜光達は病室に向かって歩き出す。
「・・・ねえ、キルカ」
その道中、ライカはふとキルカに声を掛ける。
「なんだ?」
「あんた、新メンバーの名前を聞いた辺りから、ずっと黙ったままのように見えるんだけど?」
「・・・そうか?」
普段余裕のある表情ばかり浮かべているキルカであるが、この時の表情には、少し不安や恐怖といった感情が混じっていた。
「もしかして、新メンバーのこと知ってんの?」
「・・・まあな」
キルカのこの返答を聞き、周りのメンバー達も聴き耳を立てた。
その空気からみんなが「そのことを話せ」という思いが、伝わってくる。
「・・・キクの森のエルフ達が、ほかのエルフや異種族にも恐れられてるほどの戦闘能力があることは言ったな?」
「言ってたわね」
「ミヤ スペルビアは、その中でも最強と讃えられていたエルフだ。
戦闘能力はもちろん、その美貌も知識も歴代エルフの中でも間違いなくナンバー1だ。
特に弓に関しては、狙った敵を一撃で即死させるほどの腕だったと聞く」
「へえ~。 そんな人が仲間になってくれたら、とっても心強いね」
能天気なセリナに対し、セリアは不安げにこう呟く。
「でっでも、そそそんな方が、仲間になってくれるのでしょうか?」
「・・・そうですね。 実力があったとしても、本人が拒否すればそれまでですし、性格に難があれば、返って危険な存在になりかねます」
セリアの心配事に賛同するスノーラ。
「そこのところ、どうなの?」
ライカがキルカにミヤについてのさらなる情報を求めるが・・・
「それ以上のことは知らん。 我とて直接面識がある訳ではないからな。
今話したことも、エルフならばみんな知っていることだ」
『・・・』
食堂にいた時よりも、さらなる不安が、夜光達の心を支配した。
そして、とうとうミヤ スペルビアのいる病室の前にやってきた。
「・・・で? なんで俺が最初に入ることになるんだ?」
不満そうに病室のドアの前に立つ夜光。
そのほかの者は、少し離れた所でその様子を見守る。
「いや、あんな話を聞いたら、怖い人かもしれんやろ?」
笑騎の言葉に対し、メンバー達が同意するように頷く。
「ナンバー1の美貌なんだろ? だったらお前行けよ!」
夜光は笑騎を指しながら、先陣を代わるように要求するが・・・
「アホたれ! 美貌言うたかて、美少女なのか美少年なのかわからんやろ!?
確実に美少女やって言うなら喜んで飛び込むで?
でも最強の美少年やったら、見たくもないわい!!」
性別が確定するまでは、先陣を受け持つことを拒否する笑騎。
「・・・ったく」
仕方なく、病室のドアをノックする夜光。
「失礼しま~す」
「・・・」
病室内は、ベッドと机と椅子以外何もないシンプルな構造になっていた。
そんな中、病室に入った夜光の目に止まったのは、窓際の椅子に腰を掛け、窓からぼんやりと空を見上げている”金髪の美少女”であった。
「・・・こんにちは」
とりあえずあいさつする夜光。
しかし、少女は空を見上げたまま、返事もしない。
「・・・」
とりあえず大丈夫そうだと思った夜光は、ドアから右腕を出し、外にいる笑騎達に「入っても大丈夫だ」と手で合図する。
『・・・』
夜光の合図で病室に入った笑騎達は驚いた。
その病室にいるのは、とても最強だと恐れられていたエルフとは思えないほどの美しい少女であった。
「なんか思っていたのと違うな」
ルドの呟きに、全員頷く。
「でもこいつ、さっきからずっとこのままなんだけど?」
夜光がそう言うと、セリナが少女に近づき、「こんにちは!」とあいさつをする。
「・・・」
しかし、少女は無言で空を見上げたままだ。
「こ!ん!に!ち!は!」
「・・・」
さらに大きな声であいさつするセリナだは、結果は同じ。
「むむむ・・・」
応答しない少女に対し、維持になったセリナは、突然病室から飛び出し、1分もしない内に戻ってきた。
その手には、なぜかメガホンがある。
『こんにちはぁぁぁ!!』
メガホン(しかも最大ボリューム)に自分の出せる最大の声で、あいさつの言葉を言い放つ。
『ぎゃあぁぁぁ!!』
近くにいた夜光達は、鼓膜が破れそうなほどの騒音に、思わず耳を塞いだ。
「うぅぅぅ・・・ごめんなさい」
メガホンを取り上げられ、夜光・ルド・ライカ・スノーラのげんこつを頭に受けたセリナは、部屋の隅で反省させられた。
「うるさい以前に、こんなメガホンなんてどっから持ってきたのよ!?」
セリナから取り上げたメガホンを片手に、入手ルートを聞き出すライカ。
「さっき隠れていた場所のそばにあった物置から借りてきました・・・」
「さっさと返してきなさい」
「・・・は~い」
ライカからメガホンを受け取り、とぼとぼと病室を後にするセリナ。
「・・・それにしても、あんなデカイ音にも反応しないとは」
ルドの視線の先にいるのは、セリナの騒音の直撃を受けたはずなのに、微動だにしない少女。
「・・・よっと」
「いたたた!!」
突然スノーラの顔を左右に引っ張る夜光。
「いきなり何をするんですか!?」
すばやく夜光の手を逃れ、怒るスノーラ。
「変顔で反応するか確かめただけだ」
「だったら、自分の顔でしてください!」
「あぁ、次からそうするよ・・・覚えてたらな」
「ぐぬぬぬ・・・」
全く反省の色を見せない夜光に対し、無意識に銃に手が伸びるスノーラ。
そんな2人の間から、巨大な人影が割り込む。
「視覚も聴覚もダメなら、触覚や!」
そう声を上げた笑騎は、いやらしく手を動かしながら、少女へと近づく。
「ちょっと待て!!」
すぐさま笑騎の襟元を掴み、捕獲するルド。
「何をする気だ?」
「何って、俺らに気づかせるために、ちょっとボディタッチを・・・」
そのいやらしく動く手を見て、どこに触ろうとしているのかは、一目瞭然であった。
「失せろ!エロダヌキ!」
ルドは渾身の怒りを込めて、捕獲した笑騎を病室の外へと放り出した。
「びふっ!」
向かいの病室のドアにぶつかり、そのまま気絶した笑騎。
「全く・・・飽きもせずによくやるわね・・・って、ちょちょちょっと、あんた何してんの!?」
放り出された笑騎を冷ややかな目で見ていたライカが少女に視線を戻すと、そこには、少女の服の中に手を突っ込み、豊満な少女の胸を揉みしだいている夜光の姿であった。
「何をしているですか!!」
「何をしてんだよ!!」
ライカの言葉で夜光のことに気づいたスノーラとルドが、すぐに夜光を少女から引き離す。
「さすがに揉んだら怒るだろうと思ったんだが・・・全然反応しないな」
胸を揉まれたにも関わらず、無反応を貫く少女に、さすがの夜光も興味が湧いてくる。
「だからといって、なぜ白昼堂々、初対面の女性の胸を揉むことができるのですか!?」
「そりゃ、あんなデカイ乳が目の前にあったら、男なら触るだろ?」
少女はマイコミメンバー達と同様に胸が大きく、その上ルド並の爆乳である。
「触らねぇよ!!」
「ルド、性欲にまみれてこそ、真の男だぜ?」
「そんな男なら願い下げだ!」
心が男であるルドであっても、性欲に関しては夜光とは意見が合わないようだ。
「夜光さん。 触ったにはこの手ですか?」
夜光の右腕を持ち上げて、そう尋ねるセリア。
手には包丁が握られている。
「おいコラ! 切り落とそうとするな!!」」
セリアの手を振りほどくと、ライカが軽蔑の目を夜光に向けて、セリアに言う。
「セリア。 切り落とすなら腕より良い所があるわよ?」
ライカの視線は夜光の股間辺りまで下がる。
「・・・そうですね。 そんなものがあるから夜光さんは反省しないのですね」
包丁を構えるセリアに対し、夜光はこう言い放つ。
「冗談じゃねぇ! こいつを女に使うのが、男の生きがいなんだ!
切り落とされてたまるか!!」
夜光はそう言うと、病室を出ようとその場から走り出す。
・・・その時だった。
「きゃ!」
「いてっ!」
病室から出ようとした夜光が、ドア付近にいた人物とぶつかる。
「いててて・・・」
ぶつかった拍子に倒れた夜光が頭を抑えながらゆっくりと目を開ける。
「あっ! お前は!」
そこにいたのは、レイランであった。
セリア「あの方が、ミヤ スペルビアさんなのですね」
ライカ「そうみたいね・・・それはそうと、まさかルドクラスがもう1人いるとは・・・」
セリア「それって、胸のことですか?」
ライカ「あたしも胸にはそれなりに自信はあるけど、ルドなんかを見てると、なんだか小さく見えるのよね」
セリア「夜光さんも、やはり胸の大きな方が良いのでしょうか?」
ライカ「さあ、あいつの場合は、女ならなんでも良いって感じだし」
セリア「でも、胸の大きい女性は好かれやすいと、この前読んだ本にありましたが・・・」
ライカ「あんたも意外とくだらない本を読むのね」




