新しい仲間
よく自分で考えた設定やキャラ名を忘れることがあり、そのたびに自分の小説を読み返したりしています。
そんな感じで間違いのないように注意して書いていきます。
ミュウアイランドから戻った夜光達。
スノーラは家族との絆を深め、新たな一歩を踏み出す。
誠児のエモーションの謎は残りつつ、夜光はいつもの日常に戻った。
夏の日差しがますます強くなる日が続いていたある日の朝・・・
夜光は珍しくメンバーより早く、マイコミルームに来ていた。
本来デイケアでは、スタッフがメンバーより早くデイケアルームの鍵を開けて、メンバーを待っているのが基本なのだが、マイコミのスタッフである夜光は、いつも寝坊するため遅刻が多い。
そのため、マイコミルームの鍵はほとんどスノーラが開けている。
もちろんゴウマから何度も注意を受けるが、夜光は反省しないどころか、「人間が寝て、なにが悪い!?」などと言って開き直っている。
「これでなんでクビにならないんだろう?」と、ホーム内では七不思議のように噂されている。
そんな問題児の夜光が、メンバーより早くマイコミルームに来たのは、別に仕事に目覚めた訳ではない。
「さてと・・・」
ウキウキした表情を浮かべる夜光がそう言って手にしたのは、マイコミルームに設置されている業務用電話の受話器であった。
「えっと、番号は・・・」
夜光はポケットから、折りたたまれたチラシを取り出す。
チラシには【夢と快楽へと誘う店パープル】と書かれている。
ピンクの目立つそのチラシから、どんな店なのかは察することができる。
そのチラシは、以前ライカが夜光に演劇プログラムの件でお礼を言おうとした時に、夜光の部屋から出てきた女が務めている店のチラシであった(わからない方は、【第19話:エクスティブモード】を読んでください)。
女は夜光と共に過ごした夜が忘れられなかったため、このチラシをこっそり夜光に渡しておいたのだ。
「・・・」
夜光はチラシに記載されている番号を押す。
『・・・お電話ありがとうございます!! 夢と快楽へ誘う店【パープル】でございます!!』
電話に出たのは、なんとも元気の良い男であった。
声からして、20代くらいの男だと思われる。
「今晩予約を入れたいんだが、空いている女はいるか?」
夜光がそう尋ねると、男は元気よく『もちろんでございます!!』と返してきたので、夜光はさらにこう尋ねる。
「店のチラシにある、この【複数コース】ってのを頼みたいんだ」
『【複数コース】でございますか?」』
「そうだ。 このコースを選ぶと、2人以上の女を相手にできるんだろ?」
『はい。 ちなみに何名ほど、ご希望されますか?』
「そうだな・・・まあ、4人くらいか」
『よっ4名でございますか!?』
その数字に男は驚愕する。
「なんだ? 用意できねぇのか?」
『いっいえ、そのようなことはありません。 しかしお客様、4名も相手にできるのですか?』
これまで複数コースを予約した男はいたが、4人も相手にすると言ってきたのは、夜光が初めてであった。
男は思わずそう聞き返すが、夜光は平然とこう返す。
「おい、兄ちゃん。世の中にはな? 女1人では受け止めきれないほどの性欲を持つ男がいるんだ。
覚えときな」
その意味不明な言葉に、男は圧倒され、それ以上聞くことをやめた。
『はっはい!! 大変失礼致しました!! では4名でご予約を取られますね?』
「おう。 頼んだ・・・ぜ・・・」
夜光は背筋が凍った。
なぜなら目の前に、鬼のような形相で夜光を睨みつけるスノーラの姿があったからだ。
「・・・」
スノーラは無言で、拳銃を取り出し、夜光に突き付けながら尋ねる。
「今すぐ電話を切るか、頭を撃ち抜けれるか。 どちらが良いですか?」
さすがに拳銃には屈するしかない夜光だが、簡単に予約を諦めたくもない。
「・・・くっ、ここまできて諦めて・・・」
その諦めたくない思いを見事に打ち砕く光景を目の当たりにした夜光。
「「「「・・・」」」」
それは、ドアから鬼のような形相で夜光を睨むマイコミメンバー達であった。
「・・・きっ切ります」
これ以上の抵抗は死を意味すると悟った夜光は、涙を呑んで、受話器を置いた・・・
そして、それぞれは席に付いたところで、スノーラの説教が始まった。
「全く、あなたと言う人は。 業務用の電話を私用で使ってはいけないと、何度も注意されたでしょう?」
夜光が業務用の電話を私用で使ったのは、実は今回が初めてではない。
夜光は電話代をケチるために、よく業務用の電話を使って、先ほどのような予約などをする。
そのたびに、ゴウマや誠児などに注意されている。
「別に電話1本くらい良いだろうが!!」
椅子にもたれながら開き直る夜光に、スノーラは少し赤面しながらも、強い口調でさらにこう言う。
「良い訳がないでしょう!? しかも、あのような破廉恥な店の予約に使うなんて!! 何を考えているのですか!?」
ここまで言われてもなお、反省の色を全く見せない夜光はこう返す。
「仕方ねぇだろ!? ミュウスアイランドでセリア達に邪魔されたせいで、欲求不満が溜まってんだよ!!」
夜光が言っているのは、ミュウスアイランドで宿泊した受付のサーマとの情事のことである。
ベッドで互いに裸で抱き合うまでは良かったのだが、その後嫉妬に狂ったセリア達の奇襲によって台無しになった。
「胸を張って言うことかよ・・・」
性欲に正直な夜光にドン引きするルド。
そして、スノーラがとどめの言葉を投げかける。
「とにかく、またこのようなことをしでかしたら、ゴウマ国王に報告して、減給していただきます!!」
「・・・またそれか」
夜光はこの脅し文句に対し、最近、恐怖や焦りよりも飽きを感じているのであった・・・
気を取り直し、マインドコミュニケーションを始めることになった。
今回は特にイベント企画などはないので、今日何をするかを話し合うことになった。
・・・しかし、ここで緊急事態が発生した。
「・・・あれ? つかない」
セリナは室温調整のために、壁に設置してある冷房機を起動させるボタンを押し続けているのだが、冷房機は反応しない。
「あっあの、お姉様。 どうかされましたか?」
心配になったセリアがそう尋ねると、セリナは起動ボタンを指しながらこう言う。
「さっきから、冷房を付けようと何回も押してるんだけど、全然動かないんだ」
その言葉を聞き、ほかのメンバーもセリナの元へと集まる。
「セリナ様。 冷房が動かないのですか?」
スノーラがそう尋ねると、セリナは「うん」と答え、起動ボタンを再び押す。
しかし、やはり冷房機は動かない。
その現状に、辺りは焦りの空気に包まれる。
「・・・とりあえず、専門家に見てもらうしかないわね」
ライカが諦めたような口調でそう言うと、スノーラも「そうだな」と賛同する。
そこへルドがスノーラにある不安をぶつける。
「おい、スノーラ。その専門家が来るまでは、どれくらいかかるんだ?」
「それはわからん。 まあ早くても3日ほどは掛かると思うが」
その現実に、スノーラとライカ以外のメンバーが絶望した。
そんな中、ヤケを起こした夜光が、物置室にあったハンマーを持ち出す。
「冗談じゃねぇ!! こんな灼熱地獄の中で冷房なしなんて死ねと言っているようなもんだろうが!!」
ハンマーを構えながら乱心する夜光を、急いで止めるルドとセリア。
「おい、兄貴! 何をする気だよ!」
「決まってんだろ!? これで冷房をぶっ叩いて、力づくで直す!!」
「あっあっあの、余計に壊れてしまうとおお思うのですが」
「うるせぇ!! 俺の部屋の電気を止められている今、こいつが唯一の救いなんだよ!!」
さらっと、本音を口にする夜光であった・・・
そんな騒ぎの中で、マイコミルームのドアが開いた。
「・・・何をしているんだ? お前たち」
入ってきたのはゴウマであった。暑いので薄手の青空のようなシャツと、白い短パン姿といったラフな格好である。
スノーラはゴウマの元へと歩み寄り、事情を説明する。
「冷房が壊れてしまったようで、夜光さんがヤケを起こしているんです」
ゴウマは頭を抱えながらも、「みんな! ちょっと集まってれんか?」と招集をかける。
夜光達がゴウマの周りに集まると、ゴウマは一度咳払いし、みんなにこう伝える。
「突然すまないな。 実は、このマインドコミュニケーションに”新しいメンバー”が入ることになったんだ」
『新しいメンバー!?』
夜光達は驚きのあまり、声をそろえてしまった。
「そうだ。 今朝、みんなに伝えるように夜光に言っておいたのだが・・・」
ゴウマとメンバーの視線が夜光に集中する。
「(・・・そういえば、今朝親父とすれ違った時に、そんなことを言われたような・・・)」
しかし、予約で頭がいっぱいの夜光にそんな記憶など残るはずはない。
「・・・まあ、過ぎたことはもういい。とりあえず、紹介しよう」
ゴウマは、ドアから顔を出し、通路にいる新メンバーに、「入ってきなさい」と伝える。
そして、新メンバーはゆっくりとマイコミルームに入ってきた・・・
入ってきたのは、褐色の肌と艶やかな黒髪をなびかせている、どこか大人気な雰囲気を漂わせている少女であった。
服装は夏なので薄着だが、少々肌の露出が激しい。
「では自己紹介を頼む」
ゴウマにそう言われると、少女はゆっくりと口を開く。
「”キルカ グラース”だ。種族はダークエルフ・・・」
なんともさっぱりとした自己紹介であったが、一応夜光達も順番に自己紹介をする。
「私はスノーラ ウィーターと言います。 どうぞよろしくお願いします」
「ルド ロイズだ。 まあ、仲良くよろうぜ?」
「私は、セリナ ウィルテット! セリナで良いからね? これからよろしく!!」
「せっセリア うぃうぃウィルテットです。 どっどうぞよよよろしくお願い致します」
「時橋 夜光だ。 一応ここでスタッフをしてる」
一通り自己紹介を済ませた後、スノーラはゴウマに尋ねる。
「ゴウマ陛下。 このプログラムに参加するということは彼女もアストの装着者なのですか?」
このプログラムは、表向きは人との交流を目的としたプログラムだが、実は、アスト同士が交流を深めるためのプログラムである。
なので、マイコミに参加できるのは、アストのみとなっている。
「そうだ。 ただキルカのアーマーはまだ調整中でな? その話は後々話すとしよう」
ゴウマがそう返した後、キルカがゴウマに声を掛ける。
「ゴウマ国王。 1つ良いか?」
「なんだね?」
「アストの中で唯一の男である闇鬼の装着者とは、その男のことか?」
キルカの視線が夜光に向けられると、ゴウマは「そうだ」と返す。
するとキルカはまじまじと夜光を見たあと、なぜかため息をついた。
「おい。 なんだよ」
夜光が気になってそう尋ねると、キルカの口から驚きの言葉が出た。
「いや、あまりにも不細工な男なのでな。 少し気分も優れなくなった」
その言葉を聞いた途端、夜光は持っていたハンマーを持ち上げながらこう言う。
「それはいけねぇな。 俺がすっきりさせてやるよ」
言葉は普段通りだが、顔は明らかに怒っている。
そして、夜光を慌てて止めるマイコミメンバー達。
「やめろよ!兄貴! 大人げない!」
「おお落ち着いてください」
「喧嘩はダメだよ!!」
「というか、まだそのハンマーを持っていたのですか!?」
「だいたい顔が不細工なのは事実でしょうが!!」
再び荒れる夜光達を見て、ゴウマは止める気も起きず、ただただ深いため息をつく。
そんな中、誰も気づかなかったが、キルカは舌なめずりをしながら思う。
「(・・・思ったより楽しそうなプログラムのようだ)」
その瞳にはセリア達の姿が映っていた・・・
笑騎「ま~た、ハーレム要員か・・・クソッ!! なんであいつばっかり良い思いすんねん!!」
ゴウマ「偶然そうなっているだけではないのか?」
笑騎「親父甘いわ!! ハーレム主人公って言うのは、黙っとっても美少女が次々と寄って来るもんやねん!! 言わば、宿命や!!」
ゴウマ「宿命ならば、羨んでもしかたないだろう?」
笑騎「ほんで最終的に、ヒロイン全員と結婚するハーレムエンドっちゅう人生最高のゴールを迎えるねん!!」
ゴウマ「いや、重婚は認められておらんのだが」
笑騎「どうせ親父が許可するわ!! 国王やねんからできるやろ!!」
ゴウマ「ワシにそんな無茶を期待せんでくれ・・・」




