人間を守る者
もうすぐゴールデンウィークが始まります。その間に、少しでも更新を進めていきたいと思います。
でも基本的にのんびりしているので、自信はありませんが・・・
地下室の白衣を1人拉致し、夜光とスノーラが隔離室にいるという情報を掴んだ誠児達。
きな子が即興で作ったドリルで、隔離室まで、地中を掘ることにした・・・
隔離室内・・・
「・・・うっ!!・・・ここは?」
全身にまだ痺れが残ってはいるもののなんとか起き上がる夜光。
辺りを見渡すと、すぐそばにスノーラが倒れていた。
「おいっ。 起きろ」
スノーラを揺さぶり起こす夜光。
「・・・うっ!!・・・夜光・・・さん?」
なんとか起き上がるスノーラもまだ痺れが残っているため、動きがぎごちない。
「・・・確か、海で電流を浴びて・・・そうだ!! ミーナ!!」
スノーラがようやく自分達になにが起こったのかを思い出した。
辺りを見渡すスノーラだが、ミーナの姿はない。
「夜光さん!!ミーナはどこに!? それにここは!?」
パニックを起こすスノーラに、夜光は受け流すように答える。
「こっちが聞きてぇよ。 まあ、あの世ではなさそうだがな」
夜光とスノーラがいるのは窓1つない鉄格子付きの小さな部屋。
2人がいる部屋以外にも、同じ部屋が辺りにたくさんある。
中には、さまざまな異種族が閉じ込められている。
それも、弱っている者やケガをしている者ばかりだ。
鍵は機械式のようなので、映画のように針金で開けることはできなかった。
そもそも針金がないが・・・
そして、壁の材質は不明だが、素手で突破できそうにない。
2人がいる鉄格子の向こうに、鍵付きのドアが見えた。
そのドアなら、2人体当たりで開けることができるかもしれない。
「こんな場所、エモーションすれば・・・!! マインドブレスレットがない!!」
スノーラはいつも左腕に付けてあるマインドブレスレットがないことに気が付いた。
「俺のもないな」
夜光の左腕にも、気絶するまでは付けていたマインドブレスレットがなくなっていた。
「くっ!! 私の銃まで」
スノーラが腰に携帯していた銃も、ホルスターはあるが、銃本体がなくなっていた。
自分達の現状を少しずつ理解し始める2人の前に、突然鉄格子の向こうにあるドアから、複数の男達が入ってきた。
「目が覚めたようですね」
白衣を着た5~60代の白髪の男性が夜光とスノーラに話しかけてきた。
「初めまして。 この施設の責任者をしております。レーツと申します」
深々と頭を下げて、自己紹介するレーツ
「お前らか? 俺達をこんな殺風景なとこに押し込めたのは」
夜光がクレームのように質問すると、レーツは申し訳なさそうに答える。
「無礼をお許しください。 あなた方を捕まえるつもりはなかったのですが、人魚のそばにいたあなた方に間違って我々の砲弾や弾丸が当たってしまってはいけないので、あのような方法を取りました」
その言葉を聞いた瞬間。スノーラは鉄格子越しにレーツに噛みついた。
「貴様!! 妹を、ミーナをどうした!? 答えろ!!」
完全に冷静さを失っているスノーラに、夜光が肩を掴んで落ち着かせる。
「おいおい、落ち着け。 お前が暴走すると俺がなだめるハメになる」
だが、スノーラの耳に夜光の声は届かなかったようだ。
スノーラはレーツを睨んだまま、夜光と視線を合わせようともしない。
そして次の瞬間、レーツは笑顔でとんでもない発言をする。
「あの人魚のことなら、もう諦めた方が賢明だと思いますよ?」
「なんだと!? ミーナに何をする気だ!?」
「あの人魚には、”我々人間のために”死んでいただきます」
その言葉を聞いた瞬間、スノーラの心に強い恐怖が生まれた。
「ふざけるな!! ミーナに指一本でも触れてみろ!! 絶対に貴様を殺す!!」
スノーラの脅しにも、レーツは笑顔を崩さない。
「ずいぶん口が悪くなりましたね・・・スノーラウィーターさん?」
レーツの言葉に、スノーラは一瞬思考が止まった。
「なっなぜ、私の名前を知っている?」
「えぇ、よく知っています。 なにせ、”私達が唯一捕らえることができなかった人魚”ですから」
その言葉の意味をスノーラは、すぐに理解した。
「まっまさか、お前が私のお父さんとお母さんを殺したのか!?」
レーツは笑みを浮かべながらこう言う。
「殺したなど、人聞きの悪い言い方はやめて頂きたい。
私たちは、”大きな魚”を狩っただけです。 そもそも殺すというのは、人間の命が奪われた時にだけ使う言葉です。 人魚ごときが人間と同じ扱いを受けられるとでもお思いか?」
完全に人魚を下に見ているレーツに、スノーラはさらに怒りを露わにする。
「なんだと!?」
「人間として生きているあなたなら、おわかりでしょう?
人間がどれほどすばらしい生き物であるか。
人間は感情が豊かなだけでなく、さまざまな文化を築き上げ、この心界を成り立たせている。
そして今は機械という力を生み出し、人間の生活と安全を守りながら進化し続けている。
まさに、生き物の頂点に立つべき存在だ。
それはあなたはご自分が歩んできた人生で学んだでしょう?」
レーツの言葉は、一見人間のすばらしさを語っているように聞こえるが、少し人間に対しての評価が高すぎるのではないかと夜光は内心思った。
そして、今のスノーラでは話にならないと思った夜光はスノーラを押しのけ、レーツにこんな言葉を繰り出す。
「取り込み中悪いけど、あんたに聞きたいことがあるんだが?」
「・・・なんでしょうか?」
「まず1つ目、俺達を今後どうするつもりだ?」
「ご心配なく、あなた方は明日にでもミュウスアイランドにお返しします。
我々としては、人間にもひれのない人魚にも用はありませんから」
「!!!」
スノーラが再び、怒りをぶつけようとするが、夜光はスノーラの口を手でふさいで止めた。
それまではこの部屋に幽閉することになりますが、ご了承ください」
「それは何より嬉しいニュースだ。 あと、興味本位で聞くんだが、人魚なんか集めて、あんた達は何がやりたいんだ? 人魚を刺身にでもして食うのか? それとも美人の人魚を侍らせてハーレムでも作るのか?」
真面目なのかふざけているのかわからない夜光の質問に、レーツは思わず吹き出す。
「ふっ。 面白い方ですね。この状況でそんな質問をしてくるなんて。 ですが、残念ながらどちらもはずれです」
「それは残念だな。 後者の方なら俺も混ぜて欲しかったんだがな」
「・・・それでは、私達はそろそろ失礼させていただきます。まだやることがあるのでね」
「絶対に俺達をここから出してくれるんだな?」
夜光が念押しでそう尋ねると、レーツは笑顔で「ええ、もちろん」と言い残し、ほかの男達と共に、その場を後にした。
夜光が手を離すと、スノーラは夜光に強い口調で尋ねてきた。
「いったいどういうつもりですか!? こんな時にあんな悪ふざけをするなんて!!」
夜光は悪びれもしない様子でこう返す。
「うるせぇな。 お前がキレようが暴れようが興味はねぇけど、あんまり怒らせると、こっちまでとばっちりくらいそうだからな」
そう言うと、夜光は部屋中をあちこち調べ始めた。
「なっ何をしているのですか?」
「逃げ出す手がかりを探してるに決まってるだろ? あいつらが本当に出してくれる保障はねぇし、俺は基本的に人は信用しないようにしてるからな」
スノーラは夜光の行動力に唖然としていた。
そこへ夜光がスノーラに視線を向けてこう言う。
「お前も手伝え! ここを出て妹の安否を確認したいんだろ?」
「はっはい」
スノーラも夜光と共に部屋の捜索を始める。
そんな中、スノーラは表情を和らげて、ふとこう呟く。
「少しあなたが羨ましくなりました。 こんな状況でも諦めずに行動できるなんて」
しかし、スノーラに評価されたにも関わらず、夜光はなぜか一瞬手を止めた。
「・・・諦めないからできるんじゃねぇ。 ”何もかも諦めているからできてしまうんだ”」
「えっ? それはどういう・・・」
「そんなことより、なんか見つけたか?」
スノーラが聞き返そうとするのを、夜光は強引に止めた。
「いっいえ、特に何も」
その時だった!!
「・・・んっ?」
突然、夜光の足元の床がボコッと膨れ上がったと思ったら・・・
「うわっ!!」
床から突然現れたドリルを紙一重でかわす夜光。
「一体何が!?」
夜光とスノーラが見たのは・・・
「到着ですー!!」
穴から出てきた陽気な女神であった。
「あっ!! 夜光さん、スノーラさん、無事だったんですね!?」
2人の無事に喜ぶ女神に、夜光は胸倉を掴んで怒りをぶつける。
「何が無事だ!! もう少しで串刺しになるところだったぞ!!」
「でででも、こうして助かった訳ですし・・・」
「うるせぇ!!ポンコツ女神!! これなら攫ってきた連中の方がまだ平和的だったぜ!!」
そんな怒りに狂う夜光の肩に、ぴょこんと乗るきな子。
「まあ、許したって。 女神様はあんたらを助けたかっただけなんや。 ちょっと穴開ける位置をずらしてしもたけどな」
「ちょっと待ってください!! ここを掘ろうって言ったのはきなさんじゃないですか!?」
「なんのことや? ウチはウサギやからようわからんわ」
きな子はとぼけることで女神に罪をなすりつけた。
「夜光!!」
穴から誠児を筆頭にマイコミメンバーやマナが出てきた。
「夜光。 無事で良かった・・・」
夜光の無事を心から喜ぶ誠児の顔はようやく明るさを取り戻した。
「なんとかな。 危うく串刺しになるところだったが」
夜光はそう言って女神を睨む。
「うぅぅぅ。 ごめんなさい」
女神は部屋の隅でうずくまっていた。
「スノーラ!! ケガはないか!?」
スノーラの元へ駆け寄るルド。
その表情からかなり心配をかけていたことがうかがえる。
「私は大丈夫だ。 心配をかけてすまなかった」
そんな2人の様子を見てセリア達も安堵した。
「おっお二人共、ご無事で何よりです」
「はぁ。 ケガ1つしていないなんて、つまんないわね」
「よかったぁぁぁ!! 2人が無事でぇぇぇ!!」
「セリナちゃん。 嬉しいのはわかるから泣かないで」
安堵の中、笑騎は穴に詰まっており。
「みんな~。 穴に腹が詰まって動かれへ~ん!」
この時、みんなは心である言葉を思う・・・
『やせろ』・・・と。
無事に合流できた夜光達は互いの情報を交換し、次の行動を決めていた。
「・・・なるほど。 つまり脱出する前にやることは2つ。
ミーナもとい、人魚達の救出。 そして、マインドブレスレットの奪還・・・でいいか?」
夜光のまとめに、みんなが頷く。
そして、誠児が続いてこう言う。
「マインドブレスレットはともかく、ミーナや人魚達の救出は急いだほうがいい」
「それはどういう意味ですか?」
スノーラがそう尋ねると、誠児の口から恐ろしい真実が告げられる。
「さっき、この場所を吐かせた白衣を問い詰めた時に聞いたんだが・・・ここの連中は、攫ってきた人魚達を殺して、その死体から”臓器”を取り出そうとしているようなんだ」
「何っ!!」
スノーラは思わず絶句した。
「臓器? そんなものどうするんだ?」
夜光の質問には、セリアが答えた。
「・・・にっ人間の・・・移植用にに使われるようです」
「移植? 人魚の臓器って人間に移植なんてできるのか?」
その質問に答えたのは、ルドだった。
「できるぜ? とは言っても、人魚や亜人みたいに、ある程度人間に近い種族でないと無理だがな。
人魚の場合は心臓が人間よりも機能が上だから、心臓移植するにはもってこいなんだ」
「それじゃあ、あいつらは根はいいやつなのか?」
その言葉を聞いた瞬間、ライカが呆れたようにため息をつく。
「そんな訳ないでしょ? 異種族の臓器を取り出すのも人間に移植するのも立派な法律違反よ?」
「そうなのか・・・」
夜光がふとスノーラに視線を向ける。
スノーラは血がにじみ出るほどに拳を握り閉めながら、怒りに満ちた表情を浮かべていた。
「そんなことのために、ミーナを殺させはしない!!」
「スノーラ・・・くっ!」
スノーラの怒りと恐怖を感じているルドだが、どんな言葉を掛けたら良いかわからず、ただ見守ることしかできない自分が情けなかった。
「ほんで結局どないする? 処分室に戻って、白衣からミーナちゃんの居場所を吐かせるか?」
「そうだな。 もう一度あいつから・・・」
その時!! セリア達のマインドブレスレットが部屋中に鳴り響いた。
セリア達は急いで、画面を開いた。
『みんな!!』
画面に映ったのはゴウマであった。
「なんや親父かいな。 こんな時にどないしたんや?」
ライカのマインドブレスレットからゴウマの姿を確認した笑騎がそう尋ねる。
ちなみに、マインドブレスレットのコール音は精神力の高い者か、アストにしか聞こえないが通信に関しては、アストを通せば、誰でも通信できる。
「夜光とスノーラは見つかったのか?」
自分達の安否を知らせるため、夜光はセリアの、スノーラはルドのマインドブレスレットから、ゴウマに姿を見せた。
「呼んだか?」
「ご心配をおかけしました」
2人の姿を見たゴウマも、安堵の表情を浮かべ「無事でよかった」と呟くが、すぐに険しい顔になった。
「今君達のいる。地点から、影の反応をキャッチした」
『!!!』
その知らせは夜光達の、状況をより悪化させるものであった・・・
誠児「夜光とスノーラを見つけたと思ったら、また面倒なことに・・・」
マナ「私達、どうなってしまうんでしょうか?」
誠児「きっと大丈夫。 みんなで力を合わせればね」
マナ「そうですよね」
誠児「それはそうと、4話続けて夜光不在ってことにならなくてよかった」
マナ「夜光さん。後書きの後、本当に影の面接に行ってましたからね。 落ちましたけど」
誠児「俺は面接に行った夜光より、面接そのものに驚きを感じるよ」
マナ「ちなみに落ちた理由は、『問題児はレオスで十分です』だそうです」
誠児「普段何をやってるんだ? そいつ」




